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100★和也の衣装が物語るモノ5 暗躍する者達・世代交代?



 教皇アレクサンダーの叔父に当たる、眉目秀麗なアルフレッド卿も、その呟きに頷き、華やかに笑う。


 「はい…これも、《魔力》が有り

 若く麗しい猊下げいかを教団の主とせよとの

 予言に従った、お陰でございましょう」


 教団の歴史が始まって以来、最年少の教皇であり、最強の《魔力》を持つといわれたアレクサンダーに心酔する美丈夫のミカエル卿は、年寄りの枢機卿に流し目を送りながら、静かに言う。


 これで、邪魔に、耄碌もうろくジジイどもを排除できる

 こちらには、巫女姫の予言という大義名分があるからな…………

 シジイどもがいなければ、もっと早く動ける


 「ここまでは、予言通りですが…………」


 教皇派のミカエル卿の言葉をさえぎったのは、中立派のオスカー卿だった。


 性急な世代交代は、教団の亀裂を生む

 多神教徒との争いも待っているのに、不穏分子なぞ抱える余裕は無い

 さもなければ、邪魔なシジイどもを側近もろとも、毒殺する気概をみせろ。


 内心で、かなり過激なコトを考えてはいるが、表面上は眼鏡をかけた細面に穏やかな微笑みを浮かべて言う。


 「残りの予言部分が、意味不明で…………


 『皇子を見つけるには、麗しい獣人と獣を捕らえよ』


 というのは? どういう意味なのでしょうか?」


 日和見を堂々と明言しているある意味豪のモノのチャールズ卿は、派閥争いより必要なモノを集めましょうと…………。

 前向きな発言をする。


 「ふむ……謎な予言でございますなぁ……

 それでも…珍しい獣や獣人を集める手はずは

 整い始めておりますよ」


 枢機卿で最長老のグルジア卿は、深い溜め息を吐き出し、怒り理性で押さえ込みながら言う。


 経験の無い若者に…………

 駆け引きなんぞ知らない若者に…………


 なぜ、年がいっているからと、譲らねばならぬのだ

 かの王国の皇子を捕らえる為にと………


 御印みしるしとして、私の孫より若い教皇を戴いたのに……

 まだ足りぬというのか…………


 神は、なぜ、忠実なるしもべたる私に……

 更なる試練を与えたもうのか?


 「それよりも、我等、年寄りの枢機卿は、裏にまわり

 見目麗しい若者を枢機卿にせよという予言に従うのは

 ……対外的には…あなどられるのでは?」


 グルジア卿派のイグナス卿も、こくこくと頷きながら言う。


 確かに、棺桶に片足ところか両足を突っ込んでいる

 グルジア卿ならば、引退も当然と私も思います

 しかし、私は、まだまだ働き盛りです


 アルフレッド卿より、ちょっと上なだけです

 ここは、穏便に、ご老体に、引退していただいて

 私が、最長老になりましょう


 たとえ、グルジア卿に裏切り者といわれても…………

 グルジア卿には、寿命は無いも同然ですから…………


 「私は、彼の皇子は、成人前の少年だったと…………

 記された書物を読んだことがございます


 と、いうことは、年の近い者を好むと…………

 あの年頃は、同世代以外を好みませぬゆえ…………


 あながち意味が無いと斬り捨てるのはいかがなものと………」


 グルジア派に、世代交代の嵐が吹き始めると…………。

 グルジア卿と同じく重鎮のチャーチル卿も、苦虫を噛み潰したような顔で発言する。


 「私は、グルジア卿の発言を支持いたします

  確かに、彼の皇子はお若い……


  同世代の友人を求めていましょう…………

  なれど、他国の王も宰相も我等と同じような年頃です


  さればこそ……長年のよしみもございます……

  性急な世代交代は、いかがなものかと…………」


 日和見でも、中立でも無く、皇子を探すべきだと叫んでいたジョナサン卿は、苦笑しながら言う。


 「グルジア卿もチャーチル卿も、他国が世代交代を

  なぜ、しないと思われるのか?


  我が、教団でも、巫女姫の予言がありました


  他国でも、同じような予言が…まさか…無いと思うのですか?

  そのようなアホウでは……引退は当然と思いますが?……」


 ジョナサン卿の歯に衣着せぬ発言に、顔を怒りで紅く染めたグルジア卿とチャーチル卿は、言葉も無く震えていた。

 そんな2人を哀れむように、視線を流し、エカテリーナ卿は、微笑みながら言う。


 「皆様は、既にお忘れのようですが…………

 教団では、定年退職というモノが存在いたします


 確かに、慣例かんれいとしては……

 枢機卿は年齢制限をしておりませんが………


 それに、照らし合わせてみれば…………

 猊下げいか…………公平な判断を」


 定年退職という言葉に、グルジア卿もチャーチル卿も目を白黒させて……口を……パクパクと動かすだけだった。


 同じような年齢の枢機卿も蒼褪めたり、顔を赤らめたりと反応は色々とあった。

 が、何も発言出来ず(思いつかない)に黙っていただけだった。

 それは、歳をとると……とっさの判断能力を失ってしまうを地で行くの図だった。


 発言が止んで、教皇の間に、微妙な沈黙が訪れる。

 すると、教皇アレクサンダー10世が、華の様に笑って言う。


 「ふむ…………では、教団の規則に従い

 定年退職をしてもらいましょうか………」


 それは、教皇に枢機卿を罷免されるか?

 ……自ら…引退するか?

 今、ここで、選べという教皇からの引導だった。


 口惜しくてたまらないという表情ながら、グルジア卿は立ち上がり言う。


 「こたび、教団の皇子獲得の為に

 私は、後進に道を譲ります

 御前、失礼」

 

 グルジア卿は、教皇に目礼すると緋色の衣を翻し、教皇の間より退出した。

 それに追随してチャーチル卿達が、次々に教皇に目礼して、教皇の間より退出して行く。


 それを、若い教皇と若い枢機卿が微笑みながら見送った。

 残った彼らは、新たな枢機卿を選出し、ラ・アルカディアンの皇子捕獲の作戦会議の準備をするのだった。









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