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スパイをやっていた侍女は…

作者: 森崎優嘉

「おはようございます、陛下」

「ん…おはよう、エリシア」


私の仕事は陛下を起こすことから始まる。


アルトス・メイジア・カストール、それがこの方の名前。カストールの国王にして国民からの支持は最高、顔もよし、中身もよしな国内どころか国外の貴族、王族にとっては超優良物件なのだ。そんな陛下に縁談話はもちろんたくさんある、毎日というほどにね…。もちろんこの国の大臣たちも他国の王女たちに縁談の話をかけまくっている、多くの国は了承を得ているのにとある一国だけ保留にした国が居た。カストール王国は周辺の国よりも遥かに大きく、その歴史も古い…そのため力の小さい国は関係を持つべく了承するのだけど…カストール王国と同じくらいの歴史と力を持つ国がもう一つだけある。

ソルージュ王国。カストール王国よりも数年歴史は古く、その力はカストールよりも大きいとも言われている…そんなソルージュ王国は私の祖国である。


あ、申し遅れました。カストール王国国王専属侍女をしております、エリシア・サファクリスと申します。そして、真実を言いますと私、この国でスパイをやっております。主に陛下を監視し、祖国に情報を送るのが役目でございます。え、本当の主?もちろんソルージュ王国第一王女様でございますよ。サーシャ・フェル・ソルージュというお名前であの方と私は恐れ多くも幼馴染でものすごく良くしてくださっております、カストール王国からの縁談が来た時はサーシャ様はとても困っていらっしゃいました。お父君であり私の叔父にあたるソルージュ王国国王陛下は王妃様とは恋愛結婚でございますからサーシャ様も恋愛結婚をお望みなのです。そこで私が提案したのです…私がカストール王国に潜入して、サーシャ様に合う方なのかを見極める!そう言ってこの国に来てから早3年。長期休暇を取って祖国には帰ってはいますが…時の流れは早いですね。


そして今日、遠いソルージュ王国からサーシャ様がやってくるのです!この日をずっと待ち望んできました…陛下を監視続けて3年、この方ならサーシャ様を任せられると思うのです。


「今日はソルージュ王国の第一王女が来るのだったな」

「そうでございます」

「…いったいどんな方なのだろうか」

「噂に聞いたところによりますと、国民からの人気も高く顔もよし、中身もよしな方だそうです」


こんなのでは足りないくらい素敵な方です。




   *   *   *




時と場所は代わり私の目の前にはサーシャ様が!公式な謁見は終わり、別室で陛下とのお茶の時間を楽しんでおられます。


「ありがとう」


お茶を差し出す私に声をかけてくれるサーシャ様の声は最後にお会いした日とは変わらず聖女様のような声です。


「まぁおいしい、このお茶は何と言うのですか?」

「これはベール茶と言ってカストールの北にある茶畑にしか存在しない茶葉で作られた紅茶だ、この茶葉は少ない数しか収穫されないため輸出も難しく、カストールでも滅多に飲めない紅茶でもある」


こんな話をしながらお二人はお茶を楽しんでいます…いい雰囲気ですね。早くくっついてしまわれないかしら!!


「茶葉もいいのだけど、お茶を入れる彼女の腕もよろしいのね」

「あぁ、そこに控えている彼女は専属侍女の中でも腕は一流だ、サーシャ姫の滞在中は彼女についてもらう」


誠にございますか!!!ありがとうございます陛下!


「そう、こちらの国を知るものがそばに居てくれると一緒に来た侍女共々いろんなことが聞けてうれしいわ、よろしくおねがいしますわね」

「こちらこそ、何なりとお申し付けくださいませ」


ニヤけてないわよね私…大丈夫、嬉しさが出ようともサーシャ様だもの!


「エリシア、サーシャ姫のことをよろしく頼む」

「おまかせくださいませ」

「陛下の信頼を受けるとは…さすがエミリアね」

「いえいえサーシャ様、努力の賜物です」

「…サーシャ姫、エリシアをご存知だったのか」


サーシャ様、ついにばらしてしまうのですね。私はもう覚悟はできております!


「知るも何も、エリシアは我が国の者でもあり、わたくしの幼馴染ですもの」

「…彼女はカストールの者のはず」

「えぇ、わたくしのお願いでそちらに潜入させていただきました」


驚き顔の陛下も素敵です。


「わたくし、父と母のように恋愛結婚を望んでおりますの。そのためにはアストル様がどのような方なのかを知りたくてエリシアに潜り込ませました…申し訳ありませんでしたわ」

「そ、う…だったのかそれはすまぬことをした。それで、エリシアからの報告では私はどうなのだ?」

「ふふ、素晴らしい方だとの報告でしたわ。人を愛せる、とても温かい方だと」


なんか恥ずかしいです!恥ずかしすぎます!陛下への褒め言葉が暴露されてる!!


「サーシャ姫の幼馴染からのお褒めの言葉とは…嬉しい限りだ」

「ありがとうございます」

「さすがエリシア、我が国国王の側近にして最強と謳われているサファクリス公爵の長女にしてわたくしの従妹であり大切な幼馴染」


きゃぁぁぁ!サーシャ様からのお褒めの言葉!!生きていてよかったです!


「ありがとうございますサーシャ様、私もサーシャ様のような方の幼馴染で入られて胸がいっぱいです!」

「仲が良いのだな」

「勿論ですわ陛下。エリシアとわたくしは生まれてからずっとそばに寄り添っていたのですから、わたくしたちの絆は切れることはございません」

「サーシャ様…!」


はう!人生最大のお褒めの言葉です!!生きていて良かったのです!!!


「陛下、サーシャ様のことよろしくお願いいたします!!!」

「あぁ、大切にする」

「エリシアも陛下も、早すぎですわ」


何を言いますか!私はすぐに気づきましたよ、お二方がお互い一目惚れしていることを!!もう両思いなのですよ!!!これはもう発表も時間の問題です、見ているこっちが幸せですよ!


「そうだったな、お互い今日が初対面。サーシャ姫とはじっくりと距離を縮めていこうか」


あらあら、陛下ったら…サーシャ様のお顔が真っ赤ですよ。


こうしてサーシャ様がカストール王国に来てから一週間後、無事陛下はサーシャ様を王妃とし盛大な結婚式が行われた。私もサーシャ様のお側で華やかしいお姿を拝見いたしておりました。花嫁姿のサーシャ様はそれはもうお美しすぎて…カストールの国民にも大人気となっております。

サーシャ様が王妃となっても私はサーシャ様と陛下専属侍女として働いております。え?貴方は結婚しないか?そんなことよりサーシャ様と陛下との子が見たいに決まっているではありませんか!人と遅れる?そんなの知った事ではありませんわ。

でも最近、陛下の側近であるジーク様がよく私を構ってきますね…何故でしょう?


「本当に不思議ですね?」

「それはエリシアのことが…はぁ、なぜこの子は自分のことになるとこう鈍いのかしら」

「私からもジークにもっと行けと言っておこう」

「?」


全く話が見えません。まぁ私はまだ結婚なんて考えていませんから、祖国の両親も何も言ってこないですしね。別に婚約者もいない身なので、楽に生きていますよ。




   *   *   *




何故私はジーク様に壁ドンさせられているのでしょうか。


「あの、ジーク様…」

「陛下からも王妃からももっと責めないと駄目だと言われてね、エリシア…もう遠慮しないから」

「え、いや、あのっ」


何!?何なのですか!?ちょっと!顔近いです!あっちょっ!誰か助けてーーーーーーーーーーー!!!


「ごちそうさまでした」

「はうっ」


一年後、エリシア・サファクリスとジーク・アレドリアとの結婚式が開かれるのでした。





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