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一年遅れの精霊術士  作者: 因幡 縁
第三部
135/135

3 選考試験受験希望者




 新入生を迎えた、春の学院。

 あたりを見回せば、まだ勝手がわからない新入生たちが校内を右往左往している。

 校内を巡回していたヨウたちは、そんな後輩たちの中でも特に困っていそうな者には声をかけ、手助けをしていた。お礼を言う新入生にさりげなく生徒会の宣伝をすることも忘れない。

 フィルが感慨深げにつぶやく。

「あー、去年はオレたちもこんな風に先輩方のお世話になってたよなあ。立場が入れ替わると、何か不思議な感じがするぜ」

「確かに、あなたは新入生に交じっていた方がしっくりくるわね」

「うっせ。そういうお前は貫録ありすぎてとても二年生に見えねえぞ。どう見ても卒業生が無理して制服着てるようにしか見えねえよ」

「何ですってぇ!」

 目を吊り上げて怒りを露わにするチアキに、フィルはへっぴり腰になりながらも、やるか、と両拳を胸の高さまで上げて闘志をむき出しにする。

「ほら、二人とも、そろそろ生徒会室に戻るよ。だいたいこんなところで生徒会のメンバーがケンカしちゃだめでしょう」

「わかってるわよ。誰も本気でこんなのを相手になんかしないわ」

「よく言うぜ。事実を告げただけですぐに沸点超えるヤカン女がよ」

 毒づくフィルを思い切り睨みつけたチアキだったが、ぐっとこらえて視線をそらす。

 ヨウも一つ胸をなで下ろすと、生徒会室へとその足を向けた。



 ヨウたちが見回りから戻ると、生徒会室はわいわいと賑わっていた。

 何ごとかとあたりを見回していると、ノリコが声をかけてきた。

「あ、みんなおかえり! こっちに来なよ!」

 うなずくと、ヨウは部屋の中央に置かれた机へと歩み寄る。

 机の上にはいくつかの書類があり、ノリコたちはその周りに集まってあれこれと会話をしていた。

 ノリコが両手を万歳するように開きながら叫ぶ。

「今年も我が生徒会を希望する新入生たちの希望が出そろいました! 今年は何と二十六名! ここ十年で最多となる応募数です!」

 ヨウは思わず口を開いた。

「それはすごいね。僕らの時は確か十三人だったよね? 今年はその倍なんだ」

「当然と言えば当然ね。何せ今年の新入生は会長のありがたいスピーチを聞いているのだから。生徒会に入りたくなって当然よ」

 チアキが誇らしげに胸をそらす。だから何でお前が偉そうにしてんだよ、とつぶやくフィルには目もくれない。

「でも、二十六人も受験者がいるとなると、試験を実施する僕たちも大変だね」

「そうだね、だから今回は生徒会役員総動員になると思うよ。もちろんヨウちゃんにもじゃんじゃん働いてもらうから覚悟してね!」

「う、うん」

 ノリコの瞳が妖しく光る。思わずたじろぎ一歩後ずさりしたヨウは、近くにいたアキホに声をかける。

「それで、皆さんはどうしてこんなに盛り上がってるんですか?」

「そりゃ希望者が有望株ばかりだからだよ。ほら見てよ、今年の入試トップ10は全員希望してるし、その他にも見どころのある子が希望を出してるよ」

「本当だ、すごいですね」

 資料を手に取りながら、ヨウは軽くため息をつく。

 見れば見るほど、どの生徒も素晴らしい成績の者たちばかりだ。入試では何とかぎりぎりで入学を認められた自分とは大違いである。

 と、ノリコが一枚の書類を手にすると頭上に高く掲げた。

「今年の首席、ユウリ・アキヤマさんも生徒会に入会希望を出してくれてるよ! いったいどんな子なんだろうね、ユウリちゃん」

「そりゃやっぱりすごく強いんじゃない? あのクジョウ君に匹敵する成績なんでしょ?」

「そうだね、さすが名門出身なだけあって、あらゆる方面に強いね」

「会長、やっぱそのユウリちゃんを狙ってるんすか?」

「もちろん! 彼女はあたしたちがいただくよ!」

 フィルの問いに、ノリコが鼻息荒く胸をどんと叩く。

「というわけで、今年の選考試験は忙しくなるよ。みんながんばってね!」

 そう言って、ノリコは会長席へと戻っていく。

 それを合図に、他のメンバーも解散して自分の持ち場へと戻っていく。


 今年はいったいどんな後輩たちがやってくるのだろう。期待と不安を胸に、ヨウも自分の席へと戻っていった。





ずいぶん間が開いてしまいましたが、投稿を再開します。


どうぞよろしくお願いします。

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