45 新年度へ向けて
卒業式も終わり、いよいよ新たな年度が近づいてきた。
学院も短期休暇に入り、各組織とも新入生を迎え入れる準備に入っている。
それは生徒会も例外ではなかった。
「今年はどんな子が入ってくるだろうね、ヨウちゃん」
隣に座るノリコが話しかけてくる。
「きっとまた凄い人たちが来るんじゃないかな」
「だといいね。生徒会にも入ってくれるかな?」
「それは僕らのがんばり次第だよ。生徒会を選んでもらえるようにがんばろう?」
「うん、そうだね!」
力強くうなずいたところに、チアキがやってくる。
「心配ありませんよ会長。入学式で会長の演説を聞けば、もうさばききれないくらいの入会希望者が集まってきますから」
「そうかな? じゃああたし、責任重大だね!」
「もちろんです! 会長のお力なら、確実に優秀な生徒を確保できるはずです!」
「あーあ、また始まったよ病気が」
ヨウの近くで作業をしていたフィルがぼやく。
「何よあなた、まさか会長に不満でもあるわけ?」
「何でそうなるんだよ」
「でもフィル君の言うことももっともだね、あたしだけが生徒会じゃないんだし」
「そ、それはそうかもしれませんけど」
少し考えこんだノリコが、顔を上げて叫んだ。
「そうだ! じゃあ今年は生徒会ももっと生徒にアピールしてみよう! 他の部活みたいに、チラシも作ってみよっか! うん、それで行こう!」
「はい! 私もぜひ手伝わせていただきます!」
チアキが即座に同調する。
「ああ、そりゃいいかもしれないな。お前んとこの『チアキ様を崇める会』を使えば、チラシなんてすぐにはけるぜ?」
「ば、馬鹿言わないでよ! あんな連中使ったら、生徒会が誤解されちゃうじゃない!」
「なになに? 『チアキ様を崇める会』? それってチアキちゃんのファンクラブか何かなの?」
「そうなんすよ会長、こいつがいいっていう頭のおかしい連中が勝手に集まってるらしくて……」
「ち、違います! 誤解です! 私とは一切何の関係もありませんから!」
必死に否定するチアキを尻目に、ノリコはヨウに話しかけた。
「ファンクラブと言えば、ヨウちゃんの人気も今凄いよね。有名どころだけで今いくつあるんだっけ?」
「し、知らないよそんなの」
「大手が二つ、ちょっとしたのも合わせればオレが知ってるだけでも十はあるっすね」
「凄いねヨウちゃん、あたしの組にもヨウちゃんのファンがいるんだよ。新入生の子もいっぱいファンになるかもね!」
「ファンクラブと言えば、何と言っても会長のファンクラブですよ! いえ、ファンクラブなんて関係なく、生徒は全員会長をお慕いしてますから!」
「相変わらずだね~、チアキちゃんは」
後ろからアキホが声をかけてくる。
「これから新入生の入試結果も入ってくるし、私らも試験の準備しなきゃいけないし。忙しくなるね~」
「あー、今年は俺たちがやらなきゃいけないのかよ、あの試験。ヨウみたいな奴が来なきゃいいんだけどな」
会計のイッペイ・キノシタがぼやく。おそらく例の箱を破壊する試験のことを言っているのであろう。
「そうか、今年は僕らも選考試験をやるんですよね」
「そうだよ、ちゃんと厳しく見てあげてよね?」
「わかってるよ。ノリコは新入生にけがさせないようにな?」
「失礼だね、イッペイちゃん。あたしは去年もちゃんと仕事してましたよーだ」
べえっ、とノリコが可愛らしい舌を見せる。
「面接とか大変だぞ。あれ、やってる方も面接されてる気分になってくるからな。箱も嫌だけど、面接も勘弁だな」
「でも、三年生はそのどちらも担当するんですよね?」
「そうなんだよな。なあヨウ、俺の分もやってくれないか?」
「だめだよイッペイちゃん、自分のことは自分でやってよね」
「ちぇっ、会長様は厳しいな」
二人のやり取りに、ヨウたちがくすくす笑う。
「でも、本当にいよいよ新学年なんだね。僕も上級生としてがんばらないと」
「う、うん! 私も生徒会の名に恥じないようがんばる!」
フィルの隣に座るシズカが小さな握り拳を作る。彼女もこの数日でずいぶんとこの生徒会になじんだ感がある。
「そうだね。新年度、みんなでがんばろう!」
「おお、ヨウちゃん、まるで会長みたい! そうだね、あたしたちもがんばろー!」
そう叫びながら、ノリコが拳を天へと突き上げる。
頼もしい先輩たちが去り、もうすぐ新しい仲間たちが学院へとやってくる。自分もこれからは先輩として皆を引っぱっていかないと。
新年度の新たな出会いに、ヨウは期待に胸をふくらませていた。
第三部 完
第三部、無事に終えることができました。ここまでご覧いただきありがとうございます。
第四部は学年も一つ上がり、新たな仲間も増えると思います。今後もご愛読いただけると嬉しいです。
次回は閑話を挟みたいと思っています。