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一年遅れの精霊術士  作者: 因幡 縁
第三部
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40 生徒会




 対抗戦の翌日、ヨウはフィル、チアキと共に生徒会室へと足を運んだ。

 扉を開けた途端、会長席から大声を浴びせられる。

「みんな! 優勝おめでとー!」

 声の主が、ひらりと会長席を飛び越えてこちらへと向かってくる。

 そして、矢のようにしゃべり始めた。

「ヨウちゃん、昨日は楽しかったね! そうそう、決勝戦、凄かったよ! さっすがヨウちゃん、あんな作戦を立ててただなんて! まさかあの子が本命だなんて、あたしもすっかりだまされてたよ!」

「あ、ありがと……中に入ってもいい?」

 両肩をつかんでまくし立ててくるノリコに、ヨウは苦笑を返す。

「あ、どうぞどうぞ! もうみんな集まってるよ!」

「よう、昨日はお疲れだったな」

「クジョウにノリコ相手だ、身体の方は大丈夫か?」

 中に入ると、マサトとカツヤが声をかけてくる。

「はい、どうにか動けてます」

「そいつはよかった。昨日のお前らの戦い、指輪に守られているとはいえ心臓に悪かったぞ」

「何ですか、だらしない。あたしたちは昔からずっとあんな調子ですから」

「信じられねえ……お前らが強いのも道理だぜ」

 あきれた顔の二人をノリコが一睨みする。

「でも、ヨウちゃんは本当に強くなったね! 昔はあたし、格闘だけはヨウちゃんに負けなかったのに」

 それから、ため息を一つつく。

「はあ……、ヨウちゃんに勝てるのもこれが最後かな……。昨日だって、ヨウちゃんの虚をつけなければ勝てたかどうかあやしいし、ヨウちゃんはその前にクジョウ君とも戦っていたからね」

「そんなことないと思うけど……全然勝てる気がしなかったし」

「いーや、絶対あたしが負けてたよ。男の子ってずるいなあ、すぐに成長するんだから」

 ふと見れば、チアキが不満そうな顔をしている。ノリコが負けるはずなどないという目だ。

 そのチアキに、ノリコが声をかける。

「チアキちゃん、決勝はがんばったね! チアキちゃんがねばらなかったら、クジョウ君の隙もきっと生まれなかったはずだよ?」

「あ、ありがとうございます。もったいないお言葉です」

「お前、あの程度は当然とか何とか言いまくってたじゃん」

「う、うるさいわね!」

 チアキがぎろりとフィルを睨む。

「ところであの子、シズカちゃん! 最後は凄かったね! 騎士槍ランス級が使えるなんて、凄い子を見つけてきたんだね!」

「使えるというか、使えるようになったんだよ。チームに入ることが決まってから、一生懸命練習してくれたんだよ」

「そうなの!? あの短期間で騎士槍ランス級を習得するなんて、並大抵のことじゃないよ!?」

「それをやってくれたんだから、本当に凄いよ、ミナトさんは」

「そっかぁ~、それは凄いね。ヨウちゃんが教えたの?」

「うん。ろくに精霊術も使えないのに生意気だとは、自分でも思ったけど」

「そんなことないよ、シズカちゃんだってきっと感謝してるよ」

「そうそう、きっと感謝してるって」

 アキホがノリコに同調しながら、ヨウに向かってウィンクをしてくる。よかった、どうやら妙なことをノリコに吹きこんではいないようだ。

「やあ、みんな集まっているね」

「あ、タイキ先輩」

 生徒会室に入ってきたタイキ前会長の姿に、皆が声をかける。

「先輩、お疲れさまでした。三年の部、優勝おめでとうございます」

「ありがとう。もっとも、最後はいいところがなかったけどね」

「せっかく生徒会の対抗戦で当たらなくてすんだと思ったら、今年もノリコにこてんぱんだもんな。しかも今回は全生徒の前で」

「それは言わないでくれないかな」

 タイキが苦笑する。

「でも、これでノリコも学院の実力者たちの力を把握することができたんじゃないかな? 生徒会以外の生徒の力を実戦で見る機会なんて、そうそうないことだからね」

「はい! おかげで今後の学院の勢力図が少し見えてきました!」

「その調子。がんばるんだよ」

「はい!」

 嬉しそうにノリコがうなずく。彼女にとっても、今回の対抗戦は意義深いものであったようだ。

「でも、ヨウ君はこれから大変なんじゃないのかな?」

 カナメがそんなことを言ってくる。

「へ?」

「そうそう。ヨウ殿はこれでその力が学院中に知れ渡ったわけですし、これからは大変ですぞ」

「魔法を見せていないとはいえ、クジョウ君や会長とあれほどの激闘を繰り広げたんだからね。学院中の生徒に注目されるかもしれないよ?」

「まさか、そんなこと」

「いや、あながちそうでもないかもしれないぜ? オレのクラスでも話題になってたぞ、お前のこと」

「ああ、俺のところでもそうだったな。特に女子が気にしてたように思うぞ」

 そんな、気のせいですよ、と言いながらも、ヨウの脳裏にはいくばくかの不安がよぎる。何もなければいいんだけど。

 気づけば、チアキがなぜか冷たい目でこちらを見つめている。

「……これ以上女の子のファンを増やさない方が身のためだと思うわよ?」

「ぼ、僕は別にそんなつもりじゃ……」

「でも、ヨウちゃんの実力が学院に知れ渡るのはいいことだね! あたしも精一杯戦った甲斐があったというものだよ」

「そ、それはどうも……」

 ノリコの妙に自信ありげな表情に、ヨウの不安がかきたてられる。本当に、何もなければいいんだけど……。


 その後も生徒会は昨日の対抗戦の話題で盛り上がり、仕事もそこそこにその日の活動を終了した。






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