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一年遅れの精霊術士  作者: 因幡 縁
第三部
113/135

28 初日を終えて



 アキヒコたちと握手を交わし、ヨウたちが観客席へと戻ってくると、級友たちが駆け寄ってきた。

「よくやった!」

「凄いな、お前ら!」

「マサムラ君、とってもカッコよかったよ!」

「シキシマさん、一人であの二人を抑え続けるなんて並大抵のことじゃないよ」

「これで決勝はどっちもうちの組だな、がんばれよ!」

 クラスメイトの言葉に、ヨウたちも笑顔で応える。

「本当に人気者なんだねえ、ヨウ君」

「でしょ? 最近女の子の人気総取りなんすよ、こいつ」

 フィルと共に、アキホが意地の悪い笑顔で出迎える。

「こりゃ、ノリコにどうやって報告すればいいのやら……」

「どうって、普通に勝敗だけ報告すればいいじゃないですか!?」

 うろたえるヨウをひじでうりうりと突きながら、アキホはチアキにもねぎらいの言葉をかけた。

「チアキちゃん、やるね。相手の二人、結構強かったように見えたけど。さすがはチームリーダーだよ」

「いえ、それほどでもありません。ありがとうございます」

「あー、イヤミなヤツだね。絶対勝って当然って思ってる態度だぜ、それ。口先だけで全っ然謙遜になってねー」

「何ですって!?」

 フィルにつかみかかるチアキにヨウが苦笑していると、アキホはシズカにも話しかけた。

「シズカちゃん、さっきの戦い、よかったよ。最後の攻撃はヨウ君との息もぴったりだったね」

「い、いえ……ありがとうございます」

 顔を赤くしながら、シズカが少し恥ずかしそうにうつむく。

 確かにその通りだ。ミナトさんのサポートが完璧だったからアキヒコ君の炎の壁を突破することができた。ヨウがうんうんとうなずいていると、アキホがそっと耳打ちしてくる。

「あの、ヨウ君。ここだけの話、シズカちゃんとはどういう関係なの?」

「え? もちろん大事なクラスメイトですよ」

「……そうだよね」

 ため息をつきながらうなづくと、アキホは一言、がんばってね、とシズカの肩を叩いた。

 どういうことだろう、と首をかしげていると、ヨウの視界に長身の少年が入ってきた。

「決勝進出おめでとう。君が言った通り、我々で決勝を争うことになったな」

「そうだね、決勝はお互いがんばろう」

 不敵に笑うヒロキ・クジョウに、ヨウも笑顔で握手を交わす。クジョウと共にやってきたチームメイトにも手を差し出す。

 チアキとシズカとも握手を交わすと、クジョウとそのチームメイトたちはその場を立ち去っていった。

「あれがうわさのヒロキ・クジョウか~。一目見ただけでも強そうだね」

「ええ、彼は本当に強いですよ。何せカナメ君たちにも勝ちましたし」

「なるほどね……それじゃ決勝、がんばらないとね。ヨウ君が勝ち上がらなかったら、ノリコが何言い出すかわからないよ?」

「ははは……」

「ま、そんなことは私が言わなくても、放課後ノリコがさんざん言うんだろうけどね。それじゃまた生徒会で~」

 バイバイ、と手を振ると、アキホはその場から立ち去っていった。

 その後、各会場に生徒が集合し、明日の日程について説明を受ける。

 対抗戦の二日目は、一日間をおいて明後日行われる。明日はクイズ、精霊力制御など、その他の各種イベントが行われる予定だ。

 こうして対抗戦初日は無事終了した。


 放課後、シズカと別れたヨウたちは生徒会室で今日の試合について語り合っていた。

「それにしても、さすがは会長です! 二回戦も完勝だったんですね!」

「そうなのよ、チアキちゃん。私とタチバナ君の二人がかりでも、全然歯が立たないんだもの」

 あきれたように副会長のイヨ・タチカワがぼやいてみせる。

 タチバナとは、今期美化委員長に就任したユウジ・タチバナのことだ。三年生で前期美化委員会副委員長だったシュウイチ・タチバナの弟にあたる。

「えっへん! あたしに勝とうだなんて、まだまだ早いのだ!」

 ノリコが得意げに胸を張る。

「ヨウちゃんもきっちり決勝戦まで勝ち上がったことだし、何より何より! 明日は楽しみにしてるからね、ヨウちゃん!」

「あはは……」

 ビシッと指をさしてくるノリコに、ヨウは苦笑を返すしかない。ここまでは自分の思い通りにことが運び、どうやらご満悦の様子だ。

「タチバナと言えば、タイキ先輩も明日の決勝は三年生のタチバナ先輩と当たるんですよね?」

 話を変えるように、ヨウはそばにいたタイキ・オオクマに話しかけた。今日は前生徒会メンバーの三年生たちもほぼ全員が生徒会室に集まっている。

「そうだね……。彼は強いから、何とか勝てるといいんだけどね」

「何とか、じゃありません! 絶対です! これは会長命令ですからね!」

 冴えない表情のタイキに、ノリコがビシッと指を突きつける。

 それから、ノリコはくるりとヨウの方へ振り返ると、にっこりと笑顔を浮かべた。

「と、言うわけで! 二日目はあたしも決勝戦見にいくからね? 楽しみにしてるよ?」

「う、うん……がんばるよ」

 瞳をきらきらさせるノリコに、ヨウは再び苦笑した。

「か、会長が直々に……。これは私も命を賭ける覚悟をしなければ……」

 横ではチアキがぶつぶつとつぶやいている。変にプレッシャーを感じなければいいのだけど、とヨウは思う。

「でも、あのクジョウ君は本当に強敵だよ。まさか僕とアライ君の二人がかりでもかなわないとはね」

 カナメが恥ずかしそうに頭をかく。そんなことはない、いい勝負だったよ、と周りの一年生たちが口々に言った。

 ノリコはと言えば、ヨウに敗れたアキヒコに何やら声をかけていた。きっとねぎらいの言葉でもかけているのだろう。無口なアキヒコが、どうも、と頭を下げている。

 一通りわいわいと騒いだ後、ノリコが明るい声で言う。

「それじゃ、あさっては悔いが残らないようみんながんばろう! みんな、生徒会の名に恥じないよう全力を尽くしてね!」

「おおっ!」

 ノリコの言葉に、あさっての決勝に出場するメンバーが拳を突き上げて叫ぶ。ヨウも明日のクジョウ戦に思いを馳せながら、気を引き締めるのだった。




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