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御伽使い  作者: 安芸咲良
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パートナー

「あ、おかえりー。涼子ちゃんと順平君はおつかれー」

 事務所に入ると吉良所長が待っていた。コーヒー片手に大変くつろいだ様子で。この人も一枚絡んでたんだよな……。

「あすかちゃんごめんね!」

 軽っ! 風船よりも軽いよ!? カップくらい置きましょうよ! でもまぁそれが吉良所長らしい。

「ところで君ら二人さぁ、ちょっと組んでみない?」

 私もお茶でも入れるか、と思ったら所長が唐突に言った。

「誰と、誰がですか?」

「だから、あすかちゃんと託馬君」

 私と先生は顔を見合わせた。

「いや無理だろ」

「先生ひどい!」

 そんなバッサリ切り捨てなくても! 所長は先生に耳打ちする。

「まぁまぁ、リハビリだと思って」

「は?」

「あすかちゃん、彼女に似てるじゃん」

 先生の表情がさっと変わった。所長が先生に何を言ったのかは聞き取れなかったけど、先生はそのまま固まっていた。

「ま、そういうことでよろしくー」

 その言葉でこの話は終わってしまった。


   *


 さて、それから数日経った。あれから言われたとおり、私と先生は一緒に御伽捕獲に行っている。

と言っても私はさして役に立っていないので、何とも言えない。全部先生が捕獲している。みんなは力があるとか言っていたけどウソくさい……。

何より怖いのは先生が何も言わないことだ。先生の性格からすれば、「ちょっとは仕事しろよ」とか「邪魔だから帰れ」とか言いそうなのに。

 今日の相手は三連岩だった。三つの岩が組み合わさったり離れたり、ちょこまか動いて先生は苦戦していた。時折、地面を石状にして攻撃してくるので私も必死になって避けていた。

「先生ー! こいつらすばしっこくて捕まえるの無理だよー!」

「無理でもやるしかないんだよ! お前隠れてろ」

 「でも先生!」と言い掛けた時だった。そこまで役立たずか、と。でも先生の方を見ると三連岩が大きな石を先生目掛けて撃とうとしているところだった。

「先生!」

 私は思わず駆け出していた。先生は私の方を見ていたのでそれに気付いていない。

 先生と私は地面に勢いよく倒れた。うぅっ、これは擦り傷になりそうだ。でもそれ以上に背中が痛い。石が直撃だったな……。

「芹沢!」

「先生……ケガない?」

「バカ! お前何やってんだよ!」

「いやー思わず……」

 先生は私を横たえるとすっと立ち上がった。

「十秒待ってろ。すぐ片を付ける」

 そう言うと先生の空気が変わった。え、ちょっと怖い怖い怖い!

 そうして先生は駆け出し、三連岩に狙いを定める。石の攻撃をさっとかわし、回し蹴りを決めた。いいい痛くないんですか!?

「元の姿に戻れ、御伽」

 三連岩は先生が手にした携帯に吸い込まれていった。

「芹沢大丈夫か!」

 光が収まるやいなや先生は駆け寄ってきた。

「あーだいじょぶです。すっごい痛いけど」

 私はうつ伏せのまま動けない。これはしばらく大の字で寝れないぞ……。

「あまり無理をするな。……また失うかと思った……」

「え?」

 先生はまた立ち上がった。そして電話を掛け始める。

「吉良、芹沢がケガした。治療班を頼む」

 そうしてまたしゃがむと背中を差し出してきた。

「ほら」

「え?」

「早くしろ。おぶってやる」

「えぇ!? 先生が優しい!? 気持ち悪い!」

「怪我人に冷たくするほど俺も鬼畜じゃない。早くしろ」

 いや、あの、恥ずかしいんですけど……。

 でも先生があまりにも背中を向けてくるので根負けしてしまった。う、ちょっとまだ痛い……。

 先生の背中に揺られながら、私はさっきの言葉について考えていた。

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