【番外編】彼女の話
御伽と呼ばれる存在がある。古い古い、忘れ去られた物語。それが忘れられたくないと叫んだ姿が御伽である。魔法使いやペガサス、いわゆる人ならざる者が実体化したものだ。
そんな御伽を捕まえて元に戻すのが私のような御伽使いだ。自分で言うのも何だが私は結構凄腕の御伽使いだ。いや、だった。恋人を守ってうっかり死んでしまったのだ。
御伽使いがそういう危険を伴うのは分かってはいたが、気掛かりなのはその恋人の存在である。口が悪くて一つ年下の彼は、私に及ばないとはいえなまじっか力があるもんだから、向こう見ずに御伽に挑んでいく。私が死んでからの彼は見ていられなかった。「もっと自分の命を大事にしろ!」と言ってやりたいくらいの力の使い方だった。もう言うに言えないけど。
そんな彼に変化が現れたのは新たな御伽使いの存在である。まだ女子高生の彼女は、彼に冷たくあしらわれながらも食い付いていっていた。多分、彼女には私並みの力があるのだろう。ただそれ以外は私とは正反対だった。年上ということもあって、私は彼には大人ぶった態度しか取れなかった。
彼の不注意で彼女に怪我をさせてしまったことがあった。彼は自分を責めた。私のことを思い出したのだろう。それでも彼女はめげなかった。
「私は死んでも生きてやるよ!」
なんじゃそりゃ。まったく子供の理屈だ。だけどそれは私には言うことのできなかった言葉だ。そしてそれは彼の心に響いた。
彼は新たなパートナーと共に前向きに生き始めたみたいだ。私を忘れてほしくないのも本心だけど、仲間が側にいることも忘れてほしくない。
私が見守るのはもうここまででいいだろう。そろそろ成仏させてもらうよ。
だけど教え子に手を出すのは犯罪だということは肝に銘じておくように。




