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御伽使い  作者: 安芸咲良
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ガール・ミーツ・××

 幽霊、妖精、未確認物体、その他のいわゆるオカルト系の物事は信じません。生まれ付いての現実主義です。

そんなもんのことを考えてるくらいなら、今日返ってきた三十七点の化学の答案用紙のことを考えるべきである。いやあんまり考えたくはないんだけど。

 なぜ私がいきなりこんなことを言うのかというと、今まさに目の前に信じ難いものがいるからだ。

 質問。頭に布地の三角帽を被って、幼稚園生が着るようなスモッグを着て、先の尖がった靴を履いた体長三十センチに満たない人のことを何と言うでしょうか?

 聞かれんでも分かるわ! 小人じゃ!


 まぁそんな風にガール・ミーツ・小人で物語は始まる。


   *


 席に付いて私は改めて愕然とした。あまりに黙り込んでいるので隣の席の夕夏が私の答案用紙を覗き込んでげらげら笑った。

「さ、三十七点……! あんた天才! こんな点数フツー取れないって!」

 笑いすぎてヒーヒー言ってる夕夏の頭を私はグーで殴った。やかましい。

「あんた他の教科は八割九割取れるのに、なんで化学だけ」

「苦手なもんは苦手なんだよ」

 私はふて腐れて言う。

「補習かもよー?」

 夕夏はまだニヤニヤ笑いながら言ったので、私はそっぽを向いた。


 まぁその日は補習も何も言われなかったから普通に家に帰って、いつもどおり愛犬ランの散歩に行った。この公園には滅多に人が来ないからリードを外して走り回らせている。私はベンチに座ってふて腐れていた。くそう、あのテストのせいで気分が悪いぜ。

 大体教え方が悪いんだ。化学の先生はメガネでボサボサ頭でぬぼーっとしてて……。はいはい、責任転嫁ってことは分かってますよ。

 ランが何かにじゃれついていることに気が付いたのはその時だった。大きさとしてはボールぐらいだけど、ボールにしては形が変なような……? 変な虫だったらマズイ。私はランに近付いていった。

 ランの足元にいたのは、頭に布地の三角帽を被って以下略。

 えっとまぁちょっと待って。確かに私は小説とか映画とか好きだけどリアルとフェイクの区別は付いてるっていうか私は現実主義! 突然遭遇したフシギ現象にがっつり混乱している!

「吉良、御伽発見」

 突然後ろから落ち着いた声が聞こえてきた。

 振り返るとそこにはスーツ姿の男の人が立っていた。片手には携帯電話を持っているからさっきの声は誰かと話していたものだろう。ほう、なかなかのイケメン。

「えっと……あ、の……これは……」

 別に私が悪いわけじゃないのになんでこんなに動揺してるんだ!

「形状としては恐らく白雪姫の小人。……あぁ、確かにぼんやり犬に苛められてるからドーピーだろう。頼んだ」

 そう言って電話を切った。そしてまたすぐに着信音がする。

「あの、あれって……」

 その人は私を一瞥したあと、ランの方を見やった。

「じっとしてろ」

 そして彼は踏み出した。まっすぐに小人の方へ向かって、携帯電話を突き出す。

「御伽、元ある場所に戻れ」

 次の瞬間、ランの足元にいた小人はいくつもの光の線になって携帯電話に吸い込まれていった。

 光が収まると、その人は何も言わずに携帯をいじり出した。

「な、何なの今の……」

 彼は眉をひそめてこっちを見た。

「今のを覚えているのか?」

「え、なに?」

 彼は溜め息を一つつくとまた電話を掛けだした。

「吉良……あぁいや御伽はちゃんと捕獲した。それよりも傍に女子高生がいたんだが、御伽を覚えたまんまだぞ?」

 思いっきり放置されてるんですけど帰っていいですかね? 不思議現象には遭遇しなかったということでヨロシク!

「分かった。一度事務所に連れてく」

 という訳にはいかないですよね、やっぱり。

「今のをちゃんと説明するから付いてこい、芹沢」

 電話を切った彼は私にそう言った。

「なんで、名前……」

 自己紹介はしてない。彼はちょっと面食らった顔をしたあと、にやりと笑った。

「それも説明する」

 やっぱりガール・ミーツ・ボーイだったんだろうか。

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