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夏雲  作者: 逢内晶
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心霊写真とあの世からの声!?

 次の日、教室に入ると何やらざわついていた。不思議に思っていると彩夏が興奮した面持ちで机までやってきた。何だろう、こういうのって確か『デジャブ』って言うんだっけ?


「大ちゃん、昨日の講演会で新聞クラブの人が写真を撮ってたこと知ってる?」


「うん。たぶん次の校内新聞の記事にするためでしょ。」

 

 校内新聞は先日のニュータウン開発のような特集記事も組むが、学校の行事についても掲載している。


「そこに写ってたんだって!」


 昨日からの流れで何が写っていたのか何となく分かったけど一応質問してみる。


「写ってたって、何が?」


「光の玉!これも祟の一種で昔生贄にされた人の魂なんじゃないかって、みんな盛り上がってる。」


 『これも』って、工事現場の幽霊騒ぎは、結局見間違いってことになったと思うんだけど……まあいいや、その写真を見せてもらえば本当の事がわかる。どうせ、昨日みたいに見間違いだと思うけど。


「ねえ彩夏、その写真って今ある?」


「うん、写真撮ってた子が何枚かプリントして学校に持ってきてるみたい。」


 彩夏はそう言って、教卓の方を指さした。教卓の周りをクラスメイトたちが取り囲んで盛り上がっている。きっと教卓の上にその写真が置かれているのだろう。僕も前に行ってのぞき込んだ。


「あっ!」


 確かに無数の光の玉が写真にはっきりと写っている。それに偶然かもしれないけど、ニュータウン開発に賛成する立場の人が発表してるときの方が、光の玉の数も多い気がする。


 『昔生贄にされた霊が賛成派の人の周りで怒っている』というストーリーが思い浮かんだ。こうして目ではっきりと見える分、昨日の幽霊騒ぎでは興味がなさそうに見えたクラスメイトも教卓に集まっている。こんな状態じゃ『昨日の幽霊騒ぎは見間違い!』とは言い出しづらいな……。2日続けてこんなことが起こるなんて、ひょっとしたら『見間違いが間違い』で、工事現場で目撃されたのは本物の幽霊だったんだろうか。




 夏休みまで残り1週間ほどになり、いつもなら夏休みの話題がちらほら出てくるころなのに、幽霊と光の玉騒動以来、クラスいや学校全体が『オカルト』に関連する話題で持ち切りだった。『学校の七不思議』についてクラスメイトが話しているのを久しぶりに聞いたし(確か4年生の頃に一時期流行った話題だ)、図書室でオカルトに関連する本を借りたり、家から学校に持ってきたりする子も増えているらしい。これには先生たちも驚いたらしく、昨日の全校集会では、校長先生からあまり騒ぎすぎないようにと注意があった。それに、昨日家に帰ると母さんからこの騒ぎについて聞かれた。どうやら、すでに学校を超えて、この騒動は広まっているようだ。


 学校全体が1つの話題で盛り上がっているのには、少し気味悪ささえ感じる。写真の件で少し気持ちが揺らいだとは言え、最初の幽霊騒動はやっぱり見間違いの可能性が高いと思うし、写真だって何か説明がつくかもしれない。そうだ、思い切って小野寺君にどう思っているのか今日聞いてみよう。もしかしたら、写真についてもとっくに解決済みかもしれない。


 そんなことを思いながら教室に入ると、なぜかいつも以上に盛り上がっていた。また何かあったんだろうかと思っていると、彩夏が興奮した面持ちでこっちにやってくる。


「大ちゃん、今度は声が聞こえたんだって!」


 予感的中だ。


「声?」


「うん、昨日青木さんがラジオを聞いていたら小さなか細い声で『許さない』って聞こえたらしいの!」


 青木さんはクラスメイトで、おとなしい感じの女の子だ。この騒ぎを盛り上げようと思って、話をでっち上げるようには思えない。それが本物かどうかは別としては青木さんには確かにそう聞こえたんだろう。教室には他のクラスの子も何人が来ていて、青木さんから直接話しを聞こうとしている。当の青木さんは少し恥ずかしそうにうつむながら話しているようだ。なるほど、クラスから当事者が出ればいつも以上に盛り上がるのは当然だろう。


「松井君。」


 不意に教室の外から呼ばれたので振り返ってみると、声の主は小野寺君だった。


「今日の放課後、僕の家に来れる?この件で聞きたいことがあるんだけど。」


 この件とは青木さんが聞いたという声のことだろう。ちょうど写真の件について僕も小野寺君に直接確かめたかったので、二つ返事でオーケーした。


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