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夏雲  作者: 逢内晶
3/8

幽霊が出た!?

 次の日、教室に入ると何やらざわついていた。不思議に思っていると彩夏が興奮した面持ちで机までやってきた。


「大ちゃん、昨日の新聞を見てニュータウンの工事現場に行った子が隣のクラスに居たみたいなんだけど、その子が見たんだって。」

 

 何を見たのか何となく分かったけど一応質問してみる。


「見たって、何を?」


「幽霊!みんな昨日の新聞に書いてあった生贄の幽霊なんじゃないかって噂してる。」

 

 本当なのかな。昨日の今日だし、かなり出来過ぎてる気がする。


「見間違いなんじゃないの?」


「ううん、学校の帰りにたまたま近くを通りかかったら、青い顔をした幽霊がはっきり見えたんだって!」

 

 それも思い込みのような気がするけどな。まあどちらにせよ僕には関係ないことだし、こういう話が好きな人同士で盛り上がってくれればいいや。

 それにしても、クラス全体がこの話で盛り上がっている。こういう話が好きな人ってこんなにいたっけ?クラスの中にはあまり興味がなさそうな人も何人かいたけど、クラスの中で浮くのも嫌なので、一応この話題について彩夏や他の友だちとも話した。


 『祟なんてそんな非科学的なこと有り得ないよ。』


 昨日小野寺君の言葉が思い浮かんだ。今頃クラスで同じようなことを言っているのだろうか。だとすれば、かなりクラスで浮くような気がする。もっとも、小野寺君はそんなこと全く気にしないのかもしれないけど。


 講演会の会場となる体育館に行くと、雨にも関わらずすでに見学者が何名か来ていた。講演会の開始まではまだ時間があるのに、やっぱり自分たちの地域に直結することだけあって、関心も高いのだろう。ただ、体育館がいつもより少し埃っぽい気がする。きっと、外部から人が来るということで、いつもは掃除しない部分も掃除したからだろうな。僕たちの学校では「給食→昼休み→掃除→5時間目」という流れで、今は掃除が終わったばかり。取りきれなかった埃が宙に舞っているんだと思う。

 

 始めに発表したのはニュータウン開発に賛成の立場をとる人だった。配布された資料によると、この人はニュータウン開発計画に参画している不動産会社の人らしい。一方の反対派は地域の人で組織された「ニュータウン開発に反対する会」の人た。高橋先生によると賛成派も地域の人など実際の生活に影響が及ぶ人が良かったらしいけれど、忙しい人が多くて講演を承諾してくれる人がいなかったらしい。

 

 どちらの主張も一応は納得できるものだったけど、賛成派の人の方が淡々としている印象を受けた。その不動産会社は僕でも何度が名前を聞いたことがあるので、きっと大きな会社なんだろう。だとすると、今回講演した人も何年後かには別の地域の担当になっているかもしれない。それに、企業にとってはあくまでビジネスだから感情的になる必要もなく、淡々とした印象を受けるのは当たり前かもしれない。逆に反対派の人は自分たちの生活に直結する分、どうしても感情的になるだろうなと思う。

 

 講演自体は良かったと思うけど、質問の時間に祟についての質問をした生徒がいたのは驚いた。教室で盛り上がる分には良いと思うけど、6年生にもなってこんな場で尋ねることじゃないよ……


 講演会を終えた後は教室に戻って感想文を書かないといけない。感想文は少し面倒くさいけど、いつもの授業よりは楽だ。20分ほどでクラス全員が感想を書き終わったらしく、少し早いけど今日の授業は終わった。挨拶をして帰ろうとすると彩夏に呼び止められた。


「ねえ、これから時間ある?」


 何をしたいのか何となく分かったけど一応質問してみる。


「何するの?」


「目撃現場に行く!」

 

 彩夏の目がキラキラ輝いて、本当に楽しそうだった。正直な所、うわさ話だけでどうしてこんなに楽しそうにできるのかよく分からない。まあでも、幽霊が目撃されたという場所は自転車で行けばそこまで離れているわけでもないし、ちょっとした暇つぶしだと思って付いて行くことにした。


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