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強制種族変更で妖精ライフ! ~転生辺境伯家四男ののんびり満喫!小さな美味しい冒険~  作者: 朝森朔


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第4話 妖精さんの知の殿堂

 妖精の森。大きすぎる木々のせいで薄暗い森の中に、明るい光が差し込むぱっと開けた空間が見えてきた。


 ぽっかり空いたその場所の中心には周りの大樹よりさらに大きな巨木。てっぺんが見えない。


 巨木の根元が光っているように見えるのは妖精がふよふよ漂っているからだ。



「ここで知りたいことがわかるぞ」


 そう言って、連れてこられた巨木の前。そこには葉っぱの巨大掲示板!!


 超特大の葉っぱに文字が書いてある。それが巨木に掲げられてて、いろんな光が見ている。


 これは知恵の樹という葉に世界樹の枝で縁取りがされ、この二つを妖精女王が魔法であれこれして作ったらしい。そうして巨大な画面のような掲示板ができた。


 リデスも詳しくはわからないらしい。



 『妖精さんの寄る辺』

 妖精さんとっておき! 情報掲示板。


 使い方は簡単。巨木に掲げられている超特大葉っぱに書いてある項目からこれが見たいと思う項目を思い浮かべると、目の前にその内容が現れる。


「すごい! リデスすごいよこれ。この森の地図も、森の植物、美味しい木の実・朝露の在り処、【注意】人族との付き合い方、森の新発見情報、生まれたて妖精さん必読! なんて項目もあるし。なんてことない妖精さんたちのおしゃべりまで何でもあるね」


「あぁ、進化するまでの妖精に必要なこと、それ以外も、ここを見ればたいていのことは分かるぞ」


「どうしよう。どれだけ時間かかるんだろう。面白そうな項目がいっぱいだよ」


「気になるものは一通り読んでおけ。そのあと、オレのお気に入りの場所に行こうぜ!」


 隣で待っててやるから、「俺たちの時間はいくらでもあるから気にするな」というリデスに甘えて、さっそく必要そうな項目を片っ端から読んでいく。



 いちばん重要なのはやっぱり進化についてだよね。


 で、よーく読んでみたけど、ぼく自身がどうしたら進化できるのかはわからなかった。


 妖精によって条件がバラバラで違うからだ。


 あるものは修行をし力を増したらとか、宝物的な何かを探し出したらとか、特別な食べ物を食べたらとか、何が進化に繋がるのかはその妖精が求めるものによるらしい。


 妖精の長い寿命の中で、進化前の時間は短いとされている。妖精にとってはそれを探すのも楽しみのうちの一つぐらいの感覚だ。


求めていたものはこれだ! というものを見つけた瞬間、本人にははっきりとわかるらしい。


 うーん、今ぱっとは思いつかない。欲しいものとか、強く求めているもの、願望とか……なんだろ。まぁ、その時が訪れるまで色々やって試していこう。



 進化すると現れる変化については、まず強くなれる。今よりずっと強力な魔法が使えるようになる。妖精によっては、魔力より肉体的な力が強くなる個体もいる。


 そして何と言っても一番の違いは、その姿。羽がついた人の姿になったり、獣の姿に近いものになったり、光の塊じゃなくなる。


 何かの姿に見えるようになりたいね。希望は人の姿、できれば人族だった時のぼくに近い姿になれたら一番いいなと思う。



「リデスは自分の進化についてわかってることある?」


「オレの進化か。オレの好物はリンゴだ。だから進化するにはリンゴが関係してる。たぶんな」


 そう言ったリデスの光には赤いキラキラが増えた。本当に好きなんだねリンゴ。


「リンゴなんだ。リンゴ食べればいいの?」


「いや、リンゴを食べるってのは違う。もうリンゴは食べてるからな。でもオレの進化の条件はわかってるぞ」


「えっ、そうなの?」


「このあと見に行くか?」


「見たい! じゃぁ早く行こう」


 ぼくがリデスの案内でここから移動しようとしたとき


「おい、お前! その黒いの! なんでお前がここにいるんだ」


 ヒュンッて音と一緒に後ろに飛ばされた。今度は何かがあたった瞬間ちょっと痛みを感じた。


 急に入ってきたそいつらは、生まれてすぐに会った青、白、緑の三妖精。


「ここに来たら色々わかるって。リデスに連れてきてもらって」


「妖精のアルフがここにいて何が問題なんだ」


「コイツはダメだ! 妖精じゃない。こんな、黒いのが混じってるのが妖精なわけあるか」


 と青いのが言いながら、小枝をぼくに飛ばしてきた。すぐ横をかすめていった。


「アルフ!」


 ぼくの名を呼ぶリデス。


「ギリギリ当たってないから平気だよ」


「当たってないのか。避けたのか? 枝が逸れた……いや弾かれたのか」


 心配してくれたリデス、何かぼくを見て、手を口に当て考え始めちゃった。そんなぼくらを無視して話を始める白いの。


「みんなも知ってるでしょう。黒いのは魔族や魔物だけだってことを」


 白いのが掲示板を見に来ていた光の塊の妖精や、進化した後であろう羽がある妖精たちに向かって、同意を求めるように話す。


「僕には何なのかはわからないけど、黒いキラキラなのは本当だよ」


「こんなのが近くに居たら俺たちになにか起きるかもしれない。どんな影響がでるかわかんねぇぞ」


 そういう緑のと青い妖精たちに、リデスが言い返してくれる。


「これを使えるのは妖精だけだ。アルフは、何も問題なく使えて中身もちゃんと閲覧できたってことはそういうことだ。さっきからずっと一緒にいるオレはなんともない。赤いままだ! そもそもお前らも一緒にアルフがこの森で生まれるの見てるだろ」



 ぼくらの言い合いを遠巻きに見ていた他の光もさわさわ揺れて、「魔族なの?」とか「怖いよ」とか不安そうな囁きや、「でもこの森で生まれたって」「ここでは妖精しか生まれないよね」など賛否色々聞こえてきた。


 何かと文句をつけてくる青白緑にはちょっとうんざり気味になってきてて、そういうのとは関わらないのが一番だし。ちょっと他の光妖精たちに注目されるのも苦手なぼくは


「ありがとうリデス。でも大体知りたいことは読めたから。もう行こう」


「アルフ。お前がこんなこと言われる理由は何もねぇ」


「うん、でも周りの妖精さんたちがざわざわちゃって、うるさくして迷惑かけちゃってるみたいだし」


 だが……と納得してないリデスだけに聞こえるよう小声で


「誰も居なそうな時間にこっそりまたくればいいよ。特に知りたいと思っていることは読んだしね」


 と伝えてぼくたちはその場を離れることにした。



「ここへはもう来るな! 俺たちがいる他の場所にもだ!!」


「そっちは森の奥ですよ。この森から出るなら反対方向へ行きなさい」


「この森からいなくなってくれれば安心できるのですが」


「ここはお前が来ていい場所じゃねぇ。さっさと消え失せろ! 二度と俺の前に姿をみせるなよ」


 去ろうとするぼくたちにまた何か飛んできた。やっぱりぼくには当たらず、先の方でカンっと硬質な音が響いた。


 それはぼくより大きい胡桃。もちろんかったい殻付き。当たったらものすっごく痛そう。あの速さで、当たりどころ悪かったら、し、死んじゃうよ。


 ん? この状態の妖精、当たったらどうなるんだろ。この胡桃が当たったら痛みは感じるけど怪我とか、消滅とか、死とか。そんなことってあるんだろうか。


 うんうんと胡桃を見ながら考えているぼくに向かって


「さっきからずっとそうだが、アルフってやっぱすげぇのな。あいつに魔法を放たれても、他の攻撃されても全然当たんねぇの。特別な力でも持って生まれたのか。なんか加護でもついてんのか。」


「ん? リデス、今なんて?」


 リデスがなんか言ったの胡桃に夢中になってて聞き逃して聞き返したら、「なんでもねぇ、行くぞ」ってずんずん進んでいく。遅れないようささっと胡桃を拾ってついていく。


 あ、胡桃はね持っていきたいなーと思ったら、目の前にあった胡桃消えたよ!


 そして、異空間的なところに収納できた。ふっとそこに収まった、そんな感覚がある。あ、できた……なんかできちゃったー!



 リデスにこっちだと案内され、巨木の森の奥へ進んで行こうとするぼくらに好き勝手なことをごちゃごちゃ言ってくる三妖精。気にしないことにした。


「巻き込んじゃってごめん」


「気にするな。それよりオレの特別な場所に行く」


 そういってリデスがぼくを連れてきたのは、森の奥。近くに小川が流れ、木々が途切れて太陽の光が差し込む場所。そこに一本の木が植えられている。


「ここが俺のリンゴ畑だ。今は一本しか育ててないけどな」


 リンゴの周りをふよんふよん飛ぶリデス。赤のキラキラが増し増し。本当にリンゴが好きなんだって伝わってくるよ。


 あ! 光の中にうすーく透けて、小さな人型をしたリデスの姿が見える。羽も四枚ついてるね。本当うーっすらだけれど。


 やっぱり! さっきも掲示板のところで見えた気がしたんだよね。リデスが考えている表情っぽいの。


 進化近いからかな。それとも、光の塊のふよんふよんだと思ってても実はうーっすら何かの姿になった、実態みたいなのがあるのかな。



 ぼくもリデスみたいなこんなに好きになるものあったかな。レモンタルトはぼくの好物。でもたぶん違う。


 ぱっと思いつかない時点でないってことなのかな。見つかるかなー。でも妖精によって色々だって話だから、好きなものってわけじゃないと思う。



「ねぇリデス。いつもここにいるの?」


「んー、ここにいることが多いが、森の他の場所だったり、知り合いの人族に会いに行くこともある。」


「えっ、人族に知り合いいるの? どんな人? 国、国はどこの人? ここからどうやって行けば会えるの? 近い? すぐ行ける?」


 思わず詰めよるぼくに、「まぁ、待てって。話すから」と、経緯を話してくれた。



 リデスが森で迷ったあげく、魔物に襲われて逃げた先がそのおじいさんの敷地。


 おじいさんが、始めたばかりのまだ小さなリンゴ畑でリンゴの世話をしてたところへリデスがすっ飛んできた。小さい時から妖精とか普通人には見えないものが見える人だった。ふわんふわんと飛ぶ光のリデスが妖精だって気づいて、「一番いい色で一番できがいいぞ」ってリンゴくれたんだって。


 真っ赤でつやつやに輝くのが綺麗で、いい香りがする、甘酸っぱいリンゴが大好きになったリデス。


 それから今でもおじいさんに時々会いに行っているんだって。リンゴの育て方聞いたり、リンゴのお菓子もらったりして「人族にしてはいいやつだ」と言うリデス。



 森の外へや遠くへ行く時は『妖精の通り道』ってところを通ると、一度行ったことある場所なら近くまで一瞬で行けるんだって。便利!



 人族の国とかは気にしたことないし、最初に行った時は逃げ惑ってたまたまたどり着いたし、帰りは妖精の通り道で戻ってきたから正確な場所はわかんないってことだった。


「今もちゃんと行き来できてるんだから何も問題ないだろう」


 うん、そうだね。どこの国とか知りたかったぼくはちょっぴり残念だなぁって思う。


 人の顔なんて興味あるやつ以外みんな同じだし、興味がない相手の顔なんて覚えない、それが妖精なんだって言われた。


 そうなの? ぼくもそんなふうになっちゃうのかな。家族とか、ぼくの周りにいた人たちの顔を思い浮かべる。


 うん、大丈夫まだちゃんと覚えている。忘れてない。絶対忘れないよ。



 早く会いに行くためにも、行動しなきゃと思う。だって何となく、リデスの進化は近いと思うんだ。一瞬、ほんの一瞬リンゴの木に近づいた時、ぼやんとした光の中に人型のリデスが見えたしね。


 だからぼくも早く何か見つけよう! と、あるかわからないけど手のひらをぎゅっと握ったつもりで決意する。



 明日はそのおじいさんに育てているリンゴの相談をしに行くというリデスの邪魔はしたくないし、ぼくもやってみたいことあるしそろそろ行くことにする。


「ぼくもリデスみたいになれるようやってみるよ。話聞いてできるかもって思えたし」


「そうか、お前はすでにオレより色々できるだろ。それで、アルフは何をするつもりなんだ?」


「まず森で食べられるものとか、食べてみたいもの探すよ。あとは、掲示板にあった『妖精の燈火とうか』っていう花を探して見ようと思う。まだ誰も手にしたことないって書いてあったから」



 妖精になる前に図書室で読んでた妖精についての本。


 開いてたページは妖精の道標になるという伝説の花。その挿絵と見習い妖精の掲示板で見た妖精の燈火って花の絵が似ている。


 絵の細部は微妙な違いもあるけど、どちらも採取が難しい、見つけると幸せが訪れる、願いが叶うよなど似ているところもある。たぶん同じ花だと思うんだ。


 想像図みたいなのもあって、真っ暗な夜に、浮かび上がるように綺麗に咲いていた花。大切な人たちに見せたいって思ったんだ。


 そして願いことが叶うってあった。そんな花を一番に手に入れたら進化ができちゃうかもよ? というのもある。



 この場所から、どこへどう行けば何があるという簡単な説明を聞き


「いつでも、どんな些細なことでもかまわねぇから何かあったらオレに言え。何もなくても会いにこいよ」


というリデスに別れを告げ、森の北へ向かう。妖精の燈火を見たっていう目撃情報が北側に多かったからだ。

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熱中症で死んで転移しました。もう暑い日は働きません。かき氷食べて、もふもふに埋もれて生きます。
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