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強制種族変更で妖精ライフ! ~転生辺境伯家四男ののんびり満喫!小さな美味しい冒険~  作者: 朝森朔


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第26話 番外編 side ヴァレリオ

「ヴァレリオ、眠れないからとこんな時間に訓練してるのか?」


「あ、副団長。えぇ……まあ」


「まだ、あのことを気にしているのか? それとも夢でも見て目が覚めたとか」


「そうですね……」


 やっぱり鋭いな、この人は。手を伸ばせば掴める距離で、何もできずアルフレード様を連れ去られた。そんなこと忘れられるわけがない。


「あれは、人がどうこうできるような存在じゃない。辺境伯家の影の護衛が三人もついていた。数は最低限だったが屋敷の警備として騎士団員も残っていた。だが、皆その場で動けなくなった」


 そう、近くにいた俺とジェンマ、影の護衛は魔人を視認できる距離にいた。そのため直接影響を受け、身動きが取れなくなっていた。それはわかる。しかし、訓練場から離れた場所にいた騎士たちも、魔人の力によりその場に縛られ動けなくなっていた。


 ただならぬ異変を感じ、駆けつけようとしたにも関わらずだ。


「仮にあの日、魔物の討伐へ行かず俺たち騎士団本隊がいたとしても何もできなかった。領主様を含めた話し合いで、そう結論が出たろ」


「はい、わかってはいるんです」


 その時は、領主様をはじめ、騎士団長、三人の兄君たち、皆渋面をしていた。その場にいた者たちは、力ない自分たちに腹を立てた。それでも何もできなかったと認めるしかなかった現実に。


「実際、過去に魔人を討伐、もしくは封印したのは、勇者や英雄と呼ばれるような伝説の偉人たちだけだ。気にしすぎるくらいなら忘れてしまえ」


 簡単に忘れられるなら忘れたい。でも時間が経とうと、はっきりと覚えている。





 いつもと同じ静かに本を読み自習をなさっていたアルフレード様。あのわがまま放題で傲慢な小娘ルクレーティアが、無理やり訓練場に引っ張っていく。どうせまたいつもの魔法自慢だろうと思っていた。


 何となく後ろの従者が気になった。フードからわずかにのぞいた不敵な笑みは、何かを知っている者だけが持つ余裕。少しの違和感。小娘の従者は、いつも何を考えてるか掴みどころのない男。強さも大したことはないと思わされていた。そのため油断していたのだ。


 意地の悪い小娘が詠唱をし召喚したのは魔人。黒い霧が立ち上り、次第に濃くなっていく。中心部に集まり形作られていく……そして現れたのは……


「魔人?」


 何かの本で読んだ。その絵に特徴が酷似している。


「……そ、そんな」


 隣のジェンマも驚きのあまりそれ以上言葉が出てこないようだ。アルフレード様もお気づきになったのか


「魔族? いや、人の姿をしているから……魔人、なの?」


 そのつぶやきを聞いた瞬間、ジェンマと同時にアルフレード様をかばうべく前に出る。


 小娘がぎゃーぎゃーとうるさくわめいている。そして黒い霧がなくなり完全に姿を表した魔人に向かって


「いいかげん邪魔者は消えて! 魔人よ、我が命に従い、悪役アルフレードを葬り去りなさい!」


 とありえないことを言い放った。魔人の目がギラリと光り、じっとアルフレード様を見据えている。


「アルフレード様、我々が……」


 武器を構えさらに前に出て戦おうとする俺たちを、アルフレード様が手で制する。


「あれ、最初から、ぼくだけを見てた。ルクレーティアの命令なんて、関係ない。なんでかは、わからないけど。だから、ぼくが――」


 言いかけたとき、一瞬で目の前へ現れた魔人は、俺たちの間をすり抜け、後ろにいたアルフレード様を掴んだ。その左手の中に捕らえて地面から一気に遠ざかり、高く飛び上がった。


 はるか上空に攫われ、もはや手の届かぬ高さにいた。


「アルフレード様!」とジェンマの悲痛な叫び声。


 あまりに素早すぎる動きでなんの反応もできなかった。


「くっ……」


 なんだこの速さは! 追いかけようとして、自分の体が全く動かせないことに気づく。上空で魔人に捕らわれたアルフレード様を、ただ呆然と見上げることしかできない。



 捕まったアルフレード様は、抵抗して次々と魔法を放つ。


「魔法を放てるのか?」


 アルフレード様だけは可能なのか。次々と至近距離で魔法を放ち魔人を攻撃している。


 が、魔人には全く効果ないようだ。アルフレード様の攻撃など気にする素振りすら見せない。


 ニヤリといやらしく口元を歪めて笑う魔人。ちらりとこちらに視線をよこし、俺たちが見ているのを確認する。こちらへ見せつけるように大きな口を開け、そこへアルフレード様を放り込む。


「あぁっ」


 魔法も放てず、暗器を投げることもできず、ただ目の前で幼い主人が魔人に飲み込まれるのを眺めている。何もできない絶望。


 魔人の中に消えていくアルフレード様。


 そのとき、まぶしい光と清らかな魔力を強烈に感じる。


「魔力が変質した?!」


 確かにアルフレード様の魔力だ。でも今までのものとは明らかに違う。そして魔人をも圧倒する膨大な魔力量。これが話に聞く覚醒した妖精の力?


 強すぎる光で魔人の中から透けて見える。喉あたりか。


 さらに下がっていき胸のあたりまで来ると、さらに強く発光する!


 黒い魔人を光が侵食していくように、青白い光がきらめきながら広がっていく。その中心に浮かび上がってきたのは……あれはアルフレード様のシルエット?


「あぁ、アルフレード様そこでまだ戦って……」


 幼い主の奮闘に少しでも力添えしたい。必死に体へ命じるが、指先一つぴくりとも動かせはしない。


 その間にも、禍々しい魔人を青白い神聖な魔力で塗り替えていく。


「うぐぅっ」


 魔人が胸のあたりを押さえ苦しみだした。


「あぁぁぁ、こんなところで終わるわけにはいかぬ。こんな劣弱なものに……」


 このままいけば魔人を倒せるかも、そう思ったとき——。


 アルフレード様の美しい魔力はさらに大きく膨れ上がる。周辺を飲み込む勢いで、訓練場、屋敷、敷地全体を覆うように拡散されていく。


 さっきまで、はっきりと見えていたアルフレード様の輪郭が次第に薄くなっていることに気づく。


「ダメです! それ以上、魔力を放出してはなりません。アルフレード様っ!!」


 大声で呼びかける。それでも止まらない魔力放出。常人ならすでに魔力が枯渇して命を落としているはずなのに、アルフレード様はなおも魔力を溢れさせていた。


「っ、魔力暴走……誰か止めてくれ」


 誰に向けて言ったのか。その小さな体が今にも砕け散ってしまうのではと、恐怖で震える。



 目の前で倒されようとしている、魔人最後の言葉。


「我が、あるじ、の、もと、へ……ゆかねば……ならぬ」


 魔人も、魔人のどす黒い魔力も、その言葉と思いも、青白い光に浄化され消滅。


「「アルフレード様!!」」


 ジェンマと必死に呼びかけ止めるが声は届かない。


「あぁ、もう……お姿がっ」


 アルフレード様の姿が、きらりと光を放つたびにぼやけて薄くなっていく。


 最後の光が輝いたとき、青白かった光が金色に変化した。


 一帯を覆っていた魔力が、かすかに見えていたアルフレード様に集まり収束。


 集まった魔力は青空へ向かって上昇していき、上空でふっと消えた。


 金色に変化した魔力の中にうっすらあったアルフレード様の姿も消えてなくなり、見えなくなった。


 全てが俺たちの視界から消えていった。

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熱中症で死んで転移しました。もう暑い日は働きません。かき氷食べて、もふもふに埋もれて生きます。
そんな話です。こちらもぜひよろしくお願いします!
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