第24話 番外編 ピスタのつぶやき
はい、アルフ様に運良く助けられ、名前までいただき従魔となった
「ピスタです」
ペコリ。
すでにご存知とは思いますが、えー。色々やらかしてしまいまして精霊ノーム様の元から逃げ出し……ゴホンゴホン……離れて森をフラフラしておりました。
「何をやらかしたのかは、聞かないでくださいっ」
えー、ノーム様のお仕事を後回しにし、他の人のおやつを食べました。ちなみに三回目です。ノーム様のお客様へお出しする、特別なものだったらしく。どうりで止まらないウマさ! なわけです。
開放感にひたり、爽やかな風に吹かれて木陰でぼんやり休んでおりましたら、魔物に襲われました。負傷し動けなくなっていたところをアルフ様に助けられたのです。
あのままでは、黒い変色が全身に広がり、黒いもやに取り込まれるところでした。そうなったら、理性を失った魔獣と同じ、ただ他者を襲う何かになっていました。
「私の命を救ってくれた恩人です。この命の限りご恩をお返しいたします」
などと、お礼を直接伝えたかったのですが、逃げ出す前にノーム様に罰として言葉を封印されており……言葉で伝えることができなくなっておりました。
なので、アルフ様に助けられた恩をお返ししたいと『妖精の燈火』の採取をお手伝いしたのです。少し苦労はしましたが、無事採取できたときはホッとしました。
「上手くいった。ほんとに採取できたー!」
とアルフ様の喜ぶ姿を見て、私も同じくらい嬉しくなりました。そして、一度見ただけで成功させてしまう能力の高さに驚きました。まだ進化前でしたのに。
「アルフ様、さすがです!」
この採取時に思いの外魔力を使ってしまい、その後は大した役には立てませんでした。
魔力の回復に時間がかかったのは、ノーム様の眷属ではなくなったためだと思われます。眷属としての恩恵の一つに魔力や体力、怪我などの回復速度向上もありましたので。
ノーム様のありがたさを実感し、反省も少ししました。
「ノーム様ごめんなさい」
そんな可愛らしさと、もふもふな癒やししかない私を、アルフ様はかわいがってくれ、変わらず一緒に連れて行ってくれました。なんとお優しい!
妖精の女王陛下の庭での出来事はアルフ様の偉大さを思い知ります。
「妖精の進化を女王陛下が直接?!」
私は驚きで目を見開き、女王陛下とアルフ様を何度も交互に見た。そしてなかなか直接見ることのできない進化の瞬間を目の前で見てしまった。
「なんとも可愛らしいお姿」
進化したアルフ様のとても嬉しそうな、溢れる笑顔! 思い出すと今でも心がほっこりします。
しかし、わたくし個人としては、この庭でのことは恐怖の体験となるのですが。
褒美として首輪をくださったときです。思わず息を短く吸い込み、小さな声にならない悲鳴を
「ひぃっ」
と漏らし、背中につーっと一筋の汗をかき、ヒヤッとした悪寒が走るほどの、支配される恐怖を感じました。
いえ、女王陛下とノーム様が親しいのは存じておりました。ですが、褒美としてノーム様が所持しておられた写し鏡の首輪をはめられるとは思ってもいなかったのです。
えぇこの首輪の性能ですが、ノーム様が持つ写し鏡と首輪についた魔石は対になっております。それで私の首輪の魔石から、鏡本体に映像が映し出されるという仕組みです。
女王陛下より
「これでノーム殿へ随時報告せよ。この任務を遂行すれば、ノーム殿はそなたの罪は赦そうと言うておる」
というお言葉を、アルフ様には聞こえぬよう念話でいただきました。
「はい、承知いたしました」
という返事以外できません。密偵のようなことをする以外の選択肢はありません。
「逃げられない首輪をはめられた」
ノーム様か、女王陛下にしか外せない首輪。逃げても場所を特定され、仕事を放棄すれば首輪を通して身体的な痛みの罰が与えられるでしょう。
誰かあのお二人に断ることができるという方がいれば教えてほしいです。
「行動がすべて筒抜け。サボれない。常に見張られるなんて……」
さらに、アルフ様の行動を御本人に内緒で報告し続けるというのも心苦しいです。ですが見方を変えれば
「ずっと見守ってくれている。アルフ様の安全のため」
うん、そう思うことにしました。アルフ様に何かあればノーム様や女王陛下が助けてくださる。実際、女王陛下がアルフ様に対する様子は保護者のようなお気持ちも含んでおられたようでしたし。
いつ、私がアルフ様の元にいるのを知り、ノーム様とどのようなやり取りがあったのか? いつノーム様から首輪が渡されたのか? などなど謎は多いです。しかし世の中には知らないほうがいいということが多く存在します。
「ガクブルっ」
気にしないのが一番です!
この首輪、眷属であれば大したことない魔力消費でも、その時の私にはギリギリでした。回復した分、常に魔石に吸い取られる状況でしたので。
アルフ様のお役に立てず。ただ愛らしいペットとして横にいるだけの存在に!
でも、
「やり遂げました! 赦されました」
アルフ様は女王陛下からの依頼をこなされました。また、ご自身の雪辱を果たし、ご家族の下へ戻られたのです!
これで、罪を償ったとみなされ赦されました。制限されていたアルフ様との会話もできるようになります。報告もノーム様が必要と思われる時だけとなり魔力にも余裕ができます。
今までより、お役に立てることができるようになり嬉しく思います。
そして、
「今日もおやつが美味しいです」
ちなみに今日のおやつはアルフ様の大好物! レモンタルトです。
ラレス家本家の料理長が、戻られたアルフ様のために腕によりをかけて作った絶品レモンタルトです。
ノーム様のところより美味しいおやつが食べられる、アルフ様の従魔になってよかったです!
アルフ様が私のお腹をもふもふする手つきと、ブラッシングは最高です! すぐにすやすや眠りに誘われてしまいます。
あ、いや。妖精女王の加護があり、ノーム様のお気に入りになり、魔法も強く、問題も解決してしまうアルフ様の側に居られるのは幸せです。
なにより、そばにいること以外できなかった私でも捨てずにいてくれた、命の恩人のアルフ様のため。
「おやつのために……あ、いや、アルフ様とずっといられるように、がんばります!」
明日のおやつはなんだろうなー。




