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強制種族変更で妖精ライフ! ~転生辺境伯家四男ののんびり満喫!小さな美味しい冒険~  作者: 朝森朔


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第18話 地下室

 問題の邸が見える木立まで戻ってきた。


 庭にせり出したテラスで優雅にお茶を楽しんでいる女がいる。ここからだと後ろ姿しか見えないから、顔は確認できない。


 そばで給仕をしていた少女が頭を下げ部屋へ下がる。様子を伺っていると給仕の少女は邸から出てきて、本邸がある方へ向かっていく。ずっと側で仕えてるわけじゃないのかな。必要なときだけ通っているとか?


 お茶を飲んでる女に妖精が近づいてきた。ふらーっと飛んできた妖精が、まだ小さな、進化前の妖精たちを連れている。


 先導している妖精は、黒い帽子をかぶってトンガリ靴をはいている。あれが魔石の妖精だろう。


 額には帽子から半分ほど魔石が覗いている。手に持つ杖、腕輪、足にも? 魔石と思われるものがついている。


 足に括りつけられている魔石だけは、他の魔石と違う。輝きがなく、濁った色をしている。


「あれだな。あの妖精が進んで協力してるのか、従わされてるのかはわからんがな」


「あの妖精たちが魔力を吸い取られる前に助けなくちゃ」


 僕たちは目を合わせて互いにうなずいた。


「話せるようだったら対話して解決したいけど、話を聞いてくれなかったらリデスは妖精を助け出して」


「アルフはどうするんだ」


「僕はまずあの人族をなんとかするよ。なんとかならなかったら、みんなで逃げる。妖精たちを助け出すのが一番優先だと思うから」


「魔石の妖精はどうする? あいつ生気がなくて弱そうだ」


 そうなんだよ。魔石の妖精は、ふらふらしていて上手く飛べていないの。あまり力がなさそうだから、今はさほど気にしなくてもよさそう。



 テラスから部屋に入っていく女と妖精たち。僕らに認識阻害と防音の魔法をかけて後を追う。


 この部屋はサロン兼書庫なのかな。窓際の日当たりのよい場所には、お茶をするのにぴったりなテーブルセット。部屋の奥、日陰部分には書棚が並んでいる。


 その書棚が一つズレて、壁にどこかへの入口らしいものがぽっかりと空いている。人族と妖精たちの姿は見当たらない。そこへ入って移動したんだろう。


 入口を覗けば、そこには地下室への階段があった。下から明かりが漏れている。


 僕は本当に小さくした魔力で、相手に気づかれないよう探る。


 部屋の奥に人族、それに向かい合うように妖精たちがいるようだ。


「いる」


 とだけつぶやき、リデスと階段を降りる。階段の壁が終わる直前で止まり様子をうかがう。認識阻害で見えないはずだけど慎重にね。



 女が妖精たちに向かって話している。


「私は悪い人に騙されてここに囚われているのよ。魔力を自由に使えないようにこの首飾りを嵌められて。このせいで治癒魔法以外を使えなくして、自分たちが必要な時だけ無理やり倒れるまで魔法を使わせるの」


 自分の首に装着されている首飾りを指し示す。


 さらに女は、今回だって私を無理やり魔物討伐に連れて行って、騎士たちに治癒魔法を魔力がなくなるまで酷使されたのよ、と続けた。


「素敵な宝石に見えるよ」


「魔石? キレイだ」


 進化前の妖精たちが女の話より首飾りの石に興味を示す。


「まぁ綺麗だけれど。『高価なこのネックレスを君へ贈ろう』とか言って騙して私につけさせたのよ。そしたら、魔法を制限して私の魔力を吸い取る魔導具だったのよ」


 そんな女の言い分を聞いても、


「そんなひどい人、本当に居るの?」


 と妖精は、疑問を投げかける。


「ここはリンゴの妖精が手助けしてるって聞いたよ」


「妖精のよき隣人に悪い人はいないって、僕たち知ってる」


 その魔導具が必要な理由があったんじゃないのかと妖精たちが言う。


「私には必要ないものだわ」と声を荒げる女。ふぅと一息吐き


「それより何? この田舎農場なんかに協力している妖精がいるの? あなた知ってた? そいつを先に連れてきなさいよ」


 魔石の妖精に問いただす。


「妖精の気配は感じたことあったけれど、人族に協力している妖精がいるなんて知らなかったよ」


「そう。私を騙す悪い人たちだもの、きっとリンゴの妖精も騙して無理やり協力させてるのよ」


 リデスを見ると、横に首をふる。当たり前だ。口からでまかせを言う女に呆れる。


「だから私を助けてほしいの。そのために少しでいいから、妖精の力を私に分けてほしいの。お礼に、知恵の実と言われているこれをあげるわ」


 テーブルの上には宝石箱程の大きさの派手な装飾が施された箱。蓋が開かれた中にハシバミの実がある。


「これくれるの?」


「力を分けるって、何すればこれもらえるの?」


「えぇ、あなたたち妖精には大切で、必要なものなんでしょう。お礼だものぜひ受け取って欲しいわ。簡単よ。この魔導具にあなたたちの魔力を少し込めてほしいの。それだけよ」


 口角をいやらしく上げて、ニタリと笑みを浮かべる。


「本当にそれだけでいいの?」


「なら少し分けてあげる。でも少しだよ。あんまりあげると消えちゃうからね」


 魔力を分けてあげようと、ふよふよとそれに近づく妖精。


「ダメだよ!」


 自分たちにかけていた魔法を解き、僕は声を上げ妖精を止める。人族の前に姿を現す。


「あなた誰よ! どうしてここに……いつからいたのよ?」


「最初からだよ。この付近で妖精が消えているからずっと調べていた。全部知っている。今やめるなら――」


「やめるわけ無いでしょ。もう少しなのよ。後少しでこの魔導具にある魔石に魔力が満ちるのよ。そして私の願いがかなう。邪魔しないでよ。邪魔するならあなたから消すわよ」


 リデスが小さな妖精たちを魔導具から離し、後ろにかばいながら階段付近まで避難させる。


「お前、こいつらなんとかしなさい! お前を進化させたんだから少しは私の役に立ちなさい」


 女に命令される魔石の妖精。足首に付けられている装飾品が反応して光る。


「うぅっ」


 痛いのか小さく声をあげる魔石の妖精。それから僕たちを攻撃してくる。


 放たれた攻撃魔法は僕の防御魔法で無効化された。全力の攻撃だったのか、魔石の妖精はへなへなと床に倒れ込んだ。


「何してんのよ。これぐらいで」


「……」


 返事する力も残ってない魔石の妖精。あの足に付いてるのが力を吸い取ってるのか、この妖精も女の魔導具に魔力を注いでいるのか。その両方か。


 魔石の妖精が、やっと絞り出した掠れた声で


「ルクレーティア、俺には、もうこれ以上どうにもできないよ」


「役立たず! 私のためになんでもするって言ったじゃない」


「……ルク……レーティア? え、うそ……あの、ルクレーティアなの?」


 この名前を聞いた瞬間、僕は無意識に手をぎゅっと握りしめ、声にならない声で彼女の名前を何度も小さく呟いていた。


 目の前にいるルクレーティアと呼ばれた女と、僕の記憶にある小さな少女のルクレーティアが重なる。


 確かに面影はうっすらあるけれど……。でも、本当に? 本当にあの意地悪なルクレーティアなの?

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新しい連載始めました。
熱中症で死んで転移しました。もう暑い日は働きません。かき氷食べて、もふもふに埋もれて生きます。
そんな話です。こちらもぜひよろしくお願いします!
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