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強制種族変更で妖精ライフ! ~転生辺境伯家四男ののんびり満喫!小さな美味しい冒険~  作者: 朝森朔


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第16話 空っぽの邸

「ここか」


 リデスが周囲を見回した。僕たちが案内されてやって来たのは、この前来たリンゴ畑。……だと思う。


 僕がちょっと自信ないのは、リンゴ畑がかなり拡張されていたからだ。


 しかもそこに新しく植えられたリンゴの木は、これから成長していく若木や、一部はすでに大きく育って立派なリンゴが実っているものもある。


 リデスが魔法で成長させた? いや、僕たちずっと一緒にいたよね。一部の畑自体にそういう魔法をかけていたのかな。それにしても成長、早すぎない?



 そんなことを思いながら、「戻ってきちゃったよ、おじいさんのリンゴ畑に」と僕は小さく呟いた。


 ってことはおじいさんの敷地内に怪しいやつがいるってこと? 疑問が頭の中をぐるぐるしている僕。


「この奥にある草原の先がちょっとした丘になっている。こちら側から行けば庭の木立に隠れて見えないが、小さな離れがある。俺はそこから逃げてきた」


 そう告げた妖精に、リデスが続ける。


「それで、赤髪の女はそこに囚われているから『助けて』とか言ってたんだっけ?」


「あぁそう言ってはいたが、それも本当かどうか」


「そうだな、何かやらかして隔離でもされてんのか。悪巧みするためあえて離れにいるのか」


 リデスの考察に僕も同意見だと草原を飛んで移動しながら思う。おじいさん所有なのかな。ずいぶんと広い敷地持ちなんだなー。


 実はおじいさんが影の悪者……とかはないだろうなー。もしそうなら、あの時僕らも捕まっていたはずだよね。探すのも協力してくれると言ってくれたし。



 丘の上まで来て振り返ってみると、リンゴ畑とお茶会をした建物。野菜か何かの畑と花畑も交互に並んでいる。


 そこそこ大きめな広場の奥に本邸らしき更に大きな建物が見えた。


 豪邸! 田舎だから土地はいくらでもあるって言っていたけど、建物は他にもあるんだよ。使用人とか騎士とかのための宿舎かな。


 邸のずっと先には街が続いていた。街の果てにうっすらと城壁も見える。結構大きな街を管理していたんだねおじいさん。


「この建物で間違いないんだな」


「あぁ、ここだよ」


 ぼんやり景色を眺めていた僕は我に返る。ちゃんとしなきゃ。



 木立があるこの場所は、邸を横から眺める位置。外に人影や、妖精は見えない。


「これからどうしようか?」


 と僕がリデスに訊くと


「そうだな。とりあえずお前はもう戻れ」


 案内してくれた妖精にリデスが伝える。


「俺も何か……何もできないかもしれないけど」


 そう言った妖精の手がぷるぷる小刻みに震えている。


「ううん、ここから僕たちだけでやるよ。僕が頼まれたことだからね。君は早くその薬を届けてよ」


「そうだ。俺たちなら大丈夫だ。主にアルフの力だけでもなんとかなる」


「それは、そうかもしれないが。こんな世話になりっぱなしで少しの力にもなれないなんてな……」


 落ち込む妖精さんに


「十分力になってもらってるよ。探していた人族の情報を教えてくれて、ここまで案内してくれた。とても助かったよ」


「お前と会えたおかげであちこち探さずに、手っ取り早く済んだしな」


「そうだよ。それまであちこち、いろんな妖精たちに話を聞いてまわっていて。君がいたから、簡単にここまでたどり着いたんだからね」


「そうか。わかった。じゃあ君たちも無理だけはするなよ」


「大丈夫。危険で手に負えそうになかったら、調べるだけでもいいって言われてるしね」


「無理だけはしねぇよ。俺はリンゴ育てることしかできないからな」


「帰り道で他の妖精に会ったら、噂のことと、ここに近づかないよう注意してくれると助かる」


「あぁ、任せておけ。気をつけろよ」


 と言い妖精さんは去っていく。



「しばらく様子見だな」


「そうだね。他にも仲間がいるかもしれないし」


「協力してるっていう魔石の妖精も見当たんねぇしな」


「あ、見つからないように魔法かけていい?」


 リデスと自分に魔法をかける。自分たちの音が外にもれないよう防音と姿を見えにくくする認識阻害魔法だ。


 隠密行動にはいい魔法だよね。まだ、完全に見えなくするのはできない。


 初めからそこにいるって知っててよーく注意して見ると薄ぼんやり歪んで輪郭を認識できちゃう。


 でも存在を知られてなければまぁまぁ有効。体が当たったり、触られたりして認識されなければ気づかれない。もっと魔法の練習がんばろ。



それから、離れの周囲をぐるりと見て回ったが、今は誰の姿もなかった。


 木立まで戻り、しばらくそこで待ってみたが何の変化もない。



 おじいさんならばここの住人のことを知っているはずだと訪ねることにした。


 リンゴ畑の横にある、お茶会した建物まで来たが、リンゴ畑で作業していた人たちも、おじいさん本人も、メイドさんたちもいない様子。ここも人の気配が全くしない。


「ここに全く人がいないなんてことは珍しい。何かあったのかもしれん」


 とリデスが驚いている。どうしたんだろ。おじいさんたち何かあったのかな。


 丘から見えた本邸らしき建物まで行ってみようか。妖精だし許される?


 見えない人には全然見えないし。魔法もかけているし、大丈夫かな? なんとなく勝手に奥の敷地まで入るのはちょっとなぁ……と迷う僕。



 リンゴ畑の端に目をやった時、そこからふっと森の方へ向かって何かが動いてくるのが目に入った。


「あれ、何か来るよ」


 僕はリデスに小声で伝える。リデスも気配に気づく。二人でその気配を辿っていくと、そこには…… 


 弱った動けない妖精さん。進化前の光の玉の妖精と、進化を果たした妖精たち。


 近づき、声をかけて事情を訊く。


 進化できないでいた親友のため魔力をあげてノチラの実をもらってきたんだって。そのままずっと囚われてしまったり、消えそうになるまで吸い取られたりはしなかったそう。


 魔力を込めている途中で突然止められて、ノチラの実を押し付けられて窓から放り出されたんだって。


 魔力が普通の妖精よりずっと多かったからここまで飛んできたけど、力尽きた。


 もらったノチラの実を食べた光の玉の妖精さん、当然進化しなかった。動けないし進化もできなかったしで、二人して落ち込んでたところだった。うん、もらったのはノチラの実じゃなくてハシバミの実だね。


 進化している妖精さんに蜂蜜ドリンクをあげて、ぐいっと飲んでもらって回復。



 隣で、泣いているような声でごめんと謝っている進化できなかった妖精さんには、飲んで元気出してねの気持ちを込めて朝露の入った瓶を渡す。


 何はともあれまずは、妖精さんたちを回復させた。本当に深刻な事態にならなくてよかった。



 だが、いまだ目的は不明のままだ。とにかく魔力をここに込めてほしい、自分たちを助けてほしいということだった。この妖精たちが行った時は、他に妖精はいなかった。


 人族のためにやって来た妖精が目にした、捕まって動けなくなっていた妖精たちのことがとても心配だ。最悪のことを考えてしまう。


 早くなんとかしなきゃと焦る僕。


「ここにいないならしゃーない。一度森へ戻ろうぜ」


 他に囚われている様子の妖精もいなかったなら、すぐ助け出さなきゃならないような緊急事態でもないだろうと。決断早いなリデス。


 念のため、魔法で捜索してみよう。


「時間はいくらでもあるしな。そのうち戻ってくるだろ」


「そうだね。丘の上の邸にも、おじいさんと会った邸にも、リンゴ畑周辺にも捕まってる妖精もいないみたいだし」


「邸の中まで探ったのか?」


 リデスは驚いたように尋ねた。


「うん。人族と妖精の気配、それに魔力も探ってみた。何も感じなかったから建物の中にはいないと思う」


「いつの間に。そんな広範囲を探れるのはすげぇな」


「へへへ。でも地下は探れないんだけどね。まだ地上の建物の中しかできないんだ」


 それでもだ、すごいことには変わりないって褒められた。ちょっと照れるけど嬉しい!


「じゃぁ、近くの森にいる妖精の様子も確かめがてら、俺の家がある場所まで行こうぜ」


「うん。僕、ここまで妖精から聞いたことを忘れる前にまとめたい」


「じいさんの菓子でも食いながらゆっくりすればいい。休みも必要だ」


 ここまでのことを女王陛下に報告の手紙を書いておこう。色々と情報も集まったしね。


 休憩にはかかせないおやつの時間。お菓子たーくさんもらってるからね。楽しみだ!

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