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侮れない緑

「いやはや何と!コレはコレは!」

「すっげぇテクノロジー・・・」

「えらいヌルヌルピカピカしとるな」


滑らかな金属がふんだんに使われた匠の技が光る内装だった。何に使うのか分からないツマミ、意味不明な壁のスイッチやメーター類、それでも見ているだけで楽しい。そしてコレらを細かく解体し会社に持ち帰る為の作業に入る。トラックをレンタルしたり道具を買い揃えたり、作業はかなりの時間を要しやっと解体し終わったのが10日間後だった。



「バラして並べたら案外少ないな」

「ですね、念の為隣の倉庫も借りましたが不要でしたね」


まだ用途は不明だが取り敢えず未知の金属を大量GET! 博士がこれらを使ってしばらく研究作業に没頭したいらしいのでお仕事は当分お休みかな。ま、ソロでも出来る仕事ならぼちぼち受けても…いや、カッパもいたんだ。


でも十兵衛は銃とは相性が悪い、何故なら水かきが邪魔でトリガーに指がかからないからだ(笑) 爪で引っ掻く様にしかトリガーを引けないから撃てない。本人は刀とか槍なら扱えると言っていたが、この前の銃刀法改正以降は武器や刀剣を扱うお店に注文が殺到していて買えないらしい。


「せやけど手ぶらじゃ仕事も出来んしな、さてどないしよか?」


「妖怪の知り合いの武器屋とかは?」


「おるけどごっつ高いねん。ほんで世間じゃ武器が値上がりしとるやろ?絶対足元見て来よるからな。アイツは無しや」


妖怪の武器屋とか機会があれば是非お目に掛かりたい。特定条件をクリアしないと入手出来ない特殊アイテムが満載に違いない。


「一応心当たりはあるんやが…ま、今は車でパッと行けるし行くだけ行ってみるか」


と言う事で俺は十兵衛に付き合う事になった。

場所は奈良県奈良市に有る柳生町、柳生の里らしい。


〜〜〜奈良へドライブ〜〜〜



———柳生家———

徳川秀忠・徳川家光の剣法指南役として台頭し柳生藩主となる。柳生家の開祖【柳生宗厳】(柳生石舟斎)は当時の剣聖【上泉信綱】から剣法【新陰流】を学び【柳生新陰流】を完成させた。



「え、お前あの柳生と縁があるの?」


「まぁちょっとな、昔ちょっとだけ世話になった時期があってな」


何か急にこのカッパが偉大に見えて来るから不思議だ。まぁ完全に柳生効果だろうけど、いきなりのビッグネームにちょっと心躍ってしまうが決してこの緑色が偉大なワケじゃない。


「え、待て待て待て!お前の十兵衛って名前もしかして柳生十兵衛と関係あるの?」


「柳生十兵衛?誰やそれ?知らんぞ」


だよな、たまたまか。また面白い逸話でも聞けるかと思ったけど的外れだったらしい。その後柳生の里に簡単に行けた事に十兵衛がつくづく驚いていた。当時は馬でも数日かかっていたらしい。


かなり鬱蒼とした森林に囲まれた里。裏では忍び稼業もしていたと言う噂の柳生家、当時の息吹を感じながら観光がてら歩を進める。


「あんまり変わってないな〜、お、アンナちょっと待ってくれな」


そう言って十兵衛は小道にそれて小さいお地蔵さんの前で屈んだ。それは誰の目にも止まらず道端に打ち捨てられ忘れ去られた様に佇んでいた。十兵衛は落ち葉やコケを払い真っ直ぐに立て直して綺麗な姿勢でお地蔵さんに向かって手を合わせるその所作の一つ一つが美しい。心の中で何かを語り合っているのか少しだけ微笑んだ後


「ほな行こか」


と、すぐにいつもの顔に戻った。



道すがら観光名所が所々にあり、ここにも目につくものが有った。7メートル四方のデッカい巨石を切ったらしい。


———柳生一刀石———

中央から真っ二つに割れた巨石。柳生石舟斎が天狗と試合中に一刀両断に断ち切ったという伝説が残っている。



「十兵衛、これ実話?」


「ん?あぁコレか。全部ホンマや、観光名所になっとるんかいな(笑)」


「え!事実かよ!刀でこんな岩切ったの?マジで?」


「まぁここまでデカいのは腕がいるけど兵法者やったら石くらい切れるやろ?」


「いや小石でも無理だろ…」


兵法者は切れるらしい。昔の人って何なの?もしかして色んな逸話とか伝説って結構マジ話が多かったりするのか…


「そういやお前ら以外の人間からも全然妖力感じ無いんはどうやら失ったんやな、せやから小石も切れんのや」


なるほど、どうやら進化の過程で人間は大きな力を失ったらしい。その代償に科学を得たのかも知れない。


そのまましばらく山道を進み、さらに脇道にそれ道なき道を進むと辛うじて柱だけが残る朽ちた建物跡に辿り着いた。十兵衛はその建物跡の裏手に周り地面を掘り出した。


割と浅い所に埋まっていたとは思えない程綺麗な白木の桐箱が現れ、中から刀とキセルと着物が出て来た。


「良かった〜!絶対盗られてると思たのにまさか無事やとは思わんかったで!」


「素人目に見ても分かるほど良い刀だなソレ」


「お!わかるか!これは中々の業物やで、せやから絶対盗られてると思たけど妖力を封じる結界が功を成したようやな」


「妖刀って事?」


「せや、『水面に映る月をも両断せしその名は【水月】』ちゅうてな」


「かっけぇ…」


「せやろ!(笑) ま、とにかく武器はGETや!久々に手入れもしたいから一旦帰るか」


何かこのカッパちょいちょい英語使うのよな。いや別に良いんだけど。

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