表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/26

(同)ビーストバスター

【首相官邸】

「総理、あの…お言葉ですがこれはちょっと…的外れと言いますか、今こんな事をすればまた支持率が」


「これは急務です。全ての責任はわたしが持ちます」



【緊急速報】

『先程、首相官邸にて緊急発表がありました。現在世界で起きている事象への対処の為、約170年ぶりに【陰陽省】の設立を発表しました』



「陰陽省?ってあの陰陽師とかの?」

「でしょうね、実際明治3年に廃止されるまでは正式な政府の機関として存在してましたからね」


今は睦荘の庭先で大家さんから貰ったスズキを七輪で焼いて博士と一杯やる所だ。


「いや〜どうなのそれ?国家もオカルトに走り出したら終わりじゃ無いの?」


「アンナ氏、そのオカルトや神話が現実となって今世界を震撼させてるでござるよ。オカルトは最早オカルトでは無く現実の物なのです」


「あーそっか、まぁ確かに。日本にも妖怪がかなり出没しているのは知ってるけど目先の脅威って意味ではロシアと中国じゃない?」


世界にモンスターが出現する様になって日本にも伝説や神話で語り継がれてきたアレらが出現した、それが妖怪だ。モンスターはまさに国ごとの固有種の様に偏っていて、日本の妖怪は海外には現れないし逆にゴブリンは日本に現れない。


幸いな事にモンスターや妖怪も【生物】としての枠はハミ出ていなかった。特殊な能力を持つ個体は多数確認されているが、カメレオンの様な擬態、蜘蛛の様な糸、獣の様な牙や角、どれも既存の生物が持っている能力や特性とそう変わらなかったのだ。ゴブリンはチンパンジーより弱かったしオークも熊には勝てなかった。そう、お察しの通り銃火器を持つ人間にはまるで歯が立たないのであった。世界中がパニックとは言うものの、アトラクション的な盛り上がりを見せているのが正直な所だ。


なので妖怪対策の陰陽師を引っ張り出すより先にロシア、中国を何とかするべきではないのかと。俺は言いたい。


「アンナ氏の言ってる事は分かりますが、ただ今回の侵略は高確率でモンスターが関わってる可能性があるそうです」


「え?そーなの?そんな事ニュースで言ってたっけ?」


「いえ、拙者が盗聴したであります」


「あーなるほど・・・え、誰を?」


「無論国家の機密機構をですが?」


ですが?じゃねえよ何やってんだよオメェはよバレたらどーすんだよ焼き魚食ってる場合じゃねーよ。大学一の天才はバカだった。


「おまホント・・・はぁ、まいいや」

「で、その中で耳寄りな情報を入手したでござるよ」


博士がニチャアと笑う。この笑い方をする時の博士は嫌いじゃ無い。



「大量のラチナムが見つけられるかもしれないでありますよデュフフ」


ピクッ

「マジで?」



———【ラチナム】———

通称[魔石]と呼ばれる鉱石でモンスターの体内から取れる。宝石の様な輝きを放ちプラズマを内包、もしくはプラズマが固形化、もしくは融合している未知のエネルギーの塊。米粒程度の大きさでも変換器無しでスマホのバッテリーを充電したり家電を動かしてしまう程のエネルギーが有る。現在これを狙ってモンスターが乱獲されているのでモンスター愛護団体や保護団体ができた程。現在最も注目を浴びる物質で博士によればそう遠くない未来にはかなりの高値で取引さると予想している。



「ふむ、続けたまえ博士」


「御意。固有種モンスターの法則は皆様が知る所では有りますが、どうやら日に日に強いモンスターが増えているようです。海外の調査機関によりますとラチナムを核にしてモンスターは形成されていく様で、大きくて強いモンスターは復活に時間がかかる様であります」


「なるほどな、だから最近手強いのが増えたのか」


実は大学卒業後、俺と博士は脱サラして害虫駆除の会社を立ち上げた。と言っても2人だけの小さい小さい合同会社だ。最初は害虫だけだったがやがて害獣も扱う様になり最近は妖怪駆除も引き受ける様になった。最初は虫っぽい妖怪ばかりだったが最近ネズミっぽいのが増えた。この前は犬くらいの大きさのヤツまで現れた。そしてここだけの話、実は俺たちは小さいラチナムを結構溜め込んでいる。



「情報によりますと妖怪の総本山と呼ばれる京都の嵐山周辺に強い妖怪がいたと言う伝承が多数あり、政府が近々大掛かりな調査を開始するそうです。で、それを我々が先に頂くと」ニチャア


思わず手に持っていた缶ビールで乾杯し、早速明日の準備に取り掛かる。



———翌朝の早朝———

ガラガラガラ!


高架下のシャッター倉庫が俺達の会社で、その二つ隣がいつもの居酒屋。ここは俺の部屋の5倍以上広くてトイレ付きだ。最初ここに住もうかと思ったが早朝の始発時間、数分置きに襲ってくる高架下の音と振動には耐えられなかった。


「さて、どうしようかな?」

「フル装備&長期装備ですな」


我が社では完全な役割分担がある。俺は身体を張って前に出る。かなり殺傷力の有るエアライフル(要資格)で武装しているがナイフも使う。博士は主にドローン操作で索敵や情報収集を担当。また遠隔で罠を操作したりもするし完全に違法だがドローンにエアライフルを取り付けているので援護射撃も出来る。


エアライフルと言っても威力は実銃と遜色無いが、普段は鹿や猪駆除なので威力は落としている。ただその気になれば博士の魔改造エアライフルなら熊でもイケる。そして最近ラチナムを使ってさらに威力を高めれたそうだ。このボロボロの社用車ランクルにもラチナムエネルギーが使われているので燃費がバカみたいに良い。まだラチナムが発見されて日が浅いなにここまで活用してしまう博士はマジの天才だと思う。


迷彩カラーのオンボロランクルに会社のロゴマークがデカデカとプリントされている。子どもの頃に大好きで何度も何度も見たゴーストバスターズのマークをパクって赤の駐禁マークの中に【害】の文字が入る。このオンボロ倉庫のオフィスと駆除アイテム満載のオンボロ社用車は映画みたいで割と気に入っている。


【害虫、害獣駆除はビーストバスターにお任せ!】




まだ薄暗い中、オンボロ車で京都へ向かう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ