OPEN The PANDORA!
ピクニック感覚でパニックを楽しみたいなと思って描いていきます。文字も似ているし。
1999年ノストラダムスの予言を無事にスルーしたかと思えば2025年を過ぎてギリシャのパナチャイコ山付近で【パンドラの箱】が発見された。厳重な石棺に収められたそれは箱と言うより壺だったが問題はそこでは無くただ一つ。
『開けるか埋めるか』
この事は世界中で議論された。開けても絶対に100%ロクな事がないのは皆んな重々理解した上で、それでもどうしても開けたいらしい…どうしても。
人類の好奇心を大きく刺激したのは未知なるエネルギーがパンドラの壺から止めどなく溢れ出していたからだった。
【パンドラの箱オープン】
その様子は世界中のテレビ局が集まり生中継で行われた。重苦しい石棺の蓋を開けると中は虹色の謎エネルギーが充満していて、その中から古びた壺を取り出した。壺からは虹色のドライアイスが溢れ出している。壺には蓋が無いので既に開いている状態なのでひっくり返すと中から丸い陶器の玉が転がり出てきた。その玉を振ると中でカラカラと音がするのがわかる。何か入っている様だ。リポーターは軽く叩いたり捻ったりしているうちにうっかり地面に落としてしまった。
パキャ コロコロコロ…
アッサリ割れてしまい中から虹色に光るクルミの様な種が出てきた。
しばらくの沈黙があり周りは爆笑の渦に呑まれた。恐らくテレビの前の人達も同じ反応だったであろう。盛大な前振りにオチは種コロコロ。すると突然
ブォォォォォ…
ブォォォォォ…
ブォォォォォ…
晴れ渡るギリシャの空が曇りだし、何処からともなく鳴り響く重低音のラッパが7回鳴らされた。空から鳴っているのか地面から鳴っているのか、もしくはその両方か。カメラは辺りを映すが其処はただの美しいギリシャの風景が映るばかり。しかし驚いたのはテレビの向こう側の人達だった。何故なら世界中が同時にこの音を聞いたのだから。
この瞬間、もう笑っている人はいなかった。
ラッパが7回。これは黙示録に記された【最後の審判】が実行された合図だと誰もが知っている。
ラッパが鳴り止み再び静寂が当たりを支配する。不気味な程の静けさが恐怖を駆り立てる。そう、人類は次の展開を知ら無い。人智を遥かに超えた事態に人々はただ固唾を飲み身構える事しか出来ないでいた。
キャスターが叫び声を上げて指を刺す。その声に反応したカメラが先程のクルミの種を映すと、いつの間にか地面に根を張って小さな虹色の木に成長していた。
木はホログラムの様々に色が変わりながらタイムラプスの様な速度で成長し、僅か数分で100mを超える巨木に変貌し、更に驚くのはその幅だった。虹色に輝きながら四方に広がる枝葉は数キロに及び、その眩い光は衛生からも確認できた。
それはまるで伝説に聞く世界樹そのものだった。
そして次の瞬間、真っ赤な無数の隕石が空から降って来るのが目視でハッキリと確認出来た。
パンドラの箱は開けられ天使の出現、7回のラッパ、世界樹の出現、無数の隕石。もはや何が始まったかは言うまでも無いだろう。何故なら人類は以前から『パンドラの箱』が何かは重々承知の上だった。その上で自ら選択した結果なのだから。
———数日後———
御伽話や異世界やSFの話が現実の物となり、世界を取り巻く環境は激変していた。
ワシントン州【国際連合機関】
WORLD HAZARD RESEARCH(WHR)
「幸いな事に隕石は殆どが海に落ち、その他はは湖に落ちたので犠牲者は今の所世界中で報告が有りません。しかし現在衛星で確認出来た286個の隕石全てがたまたま水に落下するのは逆に不自然さが目立ちます」
「何が言いたいのかね?」
少し遠回しな説明に議長が苛立ちを露わにする。議長はパンドラ騒動以降寝る間も無く対応に追われていた。進行役のやり手風の男性が議長の苦労を察する様に視線を向けた。
「失礼しました、ではこちらをご覧下さい。国際宇宙ステーションのクルーが捉えた落下前の隕石と思われる写真です」
その写真は太陽の光を受け所々にチカチカ光っている隕石が真っ黒な宇宙空間に無数に写っていた。
「そしてこちらが拡大写真です」
画像が少し荒い、しかしそれは衝撃の映像だった。明らかな人工物、窓が有り噴射口が有る。チカチカしていたのは太陽の光の反射では無く中を照らすライトの灯りだった。
会議室は一気にざわめき立つ。
「今回の隕石の落下、これは落下では無く『着陸』かもしれません。全て水に落ちのは何らかの意図が見られます、その証拠に世界樹の発光を合図に宇宙船と思われるこれは明らかに推進力を使って目標調整しているのが映像で確認出来ました」
議長は頭を抱えた。既に人智を超えた事態が山積みだったのだ。
人智を超えた事態とは?
パンドラパニック以降、伝説や伝承に伝わるモンスターが各地で出現していたのだ。ゴブリン、オーク、サイクロプス、もちろんドラゴンまで。面白いのは各地の特色、伝承に伝わる
モンスターが現れると言うところだ。もちろん議長は面白く無いがアメリカに日本のモンスターは出現しないなど一定の法則があった。
議長が頭を抱えるのは、これに加え宇宙人の襲来もプラスされる事になるからだった。伝説のモンスターとSFの宇宙人のお話は一見無関係に思えるが、パンドラパニックのタイミングで来たしまったのならもはや無関係を貫けない。
進行役の男性は自身のタブレットを凝視していた。すぐに電話をして2、3事話すと重い口を開いた。
「・・・追加情報が来ました」
ざわめく会議室。議長も重い頭を上げて報告を聞く覚悟を決める。
「現在世界各地で【伝染病】が同時に多発している事が確認されました。感染の症状は自我の消失、無痛症の発症、食欲のみでの行動、咬傷や粘液による感染。平たく言うと映画によく有る【ゾンビ】と類似してまいます」
モンスター出現
天使降臨
宇宙人襲来
ゾンビ出現
新約聖書 「ヨハネの黙示録」16章16節に記述された、終末に行われる善と悪の最終決戦 【アルマゲドン】
あのラッパはアルマゲドン開始の合図だった。