俺の価値
ギルドの2階にある部屋に入った。ゴリラと農民、魔王とキャベツがテーブルを挟んで向かい合って座った。テーブルの真ん中に俺が置かれる。「それで、コイツの事じゃが。どうやら魂は別物のようじゃ。」「あん?どういう事だ?」「ふむ。」「え?」2人は疑問に思って、1人はやはりか、というような顔をしていた。
「此奴はスライムに転生させられた人間じゃな。あと、かなり口が悪い。」なんでコイツわかるの?「一々妾が聞いてお主達に言うのも面倒じゃな。本人に直接話をさせた方が良いじゃろう。」そう言って俺に向かって手をかざした。「触んなロリババア!」「うおっ!?喋った!」「これは何とも…。」「えっ?何?何ですか?何をしたんですか?ロリ、えっ?」
「思念をそのまま声に変えただけじゃ。」「「そんなんできんのかよ。」」俺とゴリラがハモった。この魔王は何でもできるらしい。迂闊に変な事は話せないな。「それで、君は何なのかね?」「何なのって言われてもなぁ…、なんか手違いで死んで好きなのに転生させてやるって言われたんだよ。、なんやかんやで気がついたらきったねースライムだった。」なんやかんやをもっと詳しく話せと言われたので、飯食って寝転んでたら体が光りだした時の事から今までの事を4人に話し終わると、4人全員が何だコイツ…という顔で見てきた。
「それでは、この転生者はスライムの形をした別の何かという訳かね?」エルフは俺がスライムであるかどうかだけが重要らしい。「いや、魂は人間じゃが体は間違いなくスライムじゃぞ。」「そうであるか、それならば問題はない。」満足そうにそう言うと、腰に着けたポーチをゴソゴソとしだした。ポーチから金貨が出てきた。「ほら、これが特殊個体の代金だ。受け取りたまえ。」農民は目をパチパチさせている。「えぇっ!?金貨!?本当に!?」「おっ、中々の臨時収入じゃねぇか!よかったな!」ゴリラはそう言って農民の肩をパンッと叩いた。「この金貨1枚ってどれくらい価値あんの?何円?」俺が聞くと、魔王が答えた。「そうじゃな、コレでだいたい5万円じゃな。この際だから、大体の貨幣価値も教えておくかの。鉄貨が小で1円位、普通ので10円位、銅貨が小で100円位、普通ので500円位、銀貨と金貨は桁が上がるだけで銅貨と同じじゃな。」
俺は5万円の価値らしい。
農民の喜び方から察するに、かなりのものだと思いたい。そう思っていると、エルフが急にこっちに手をかざしてきた。「触んなキャベツ!」「触りはしないさ。ただ、目は付けたがね。そうだ、クロ殿、コレを預かってはもらえないだろうか?色々教えてくれると助かる。」「目って何?え?連れ帰って閉じ込めて実験か何かするんじゃないの?」てっきりコイツに連れて行かれて実験室にでも閉じ込められるものだと思ってた。「いや、私は特殊個体に監視の魔法をかけて観察するのさ。まぁ、危険な個体なら隔離はするがね。口は悪いが所詮はただのスライム、子供が蹴飛ばしたら死ぬような存在さ。」「俺、子供以下?」どうやら実験室で飼い殺しルートではなかったようだ。言われてみれば、街の外を爆走している同胞も野放しだ。あれは危険では無いらしい。速度だけ見るとぶっ壊れ性能なのに。
「じゃあ、話は終わったし。これで解散としようかね。後の事はクロ殿に任せるよ。」そう言うと、エルフは立ち上がって出ていこうとした。出ていく前に、俺はエルフに言っておくことにした。「おい、風呂入って着替えてから仕事いけよ。お前、着替えどころか顔すらも洗ってねぇじゃん。きったねぇ。クサクサキャベツ。」「うるさいっ!黙れっ!」エルフは顔を真っ赤にして出て行った。「さて、それじゃあ俺達も行くか。」「そうですね。金貨が貰えたので、今日は装備を色々買おうと思います。」「そうだな、こんだけありゃ武器もマシなのが買えるだろうよ。じゃあな、変なスライム。」ゴリラと農民は出て行った。「それでは、我々も行こうかの。これからよろしくな、転生者。」「一応グミって名前になってるし、グミでいいぞ。」「そうか、では行こうか。グミ。」「んで、どこ行くの?」「この街の妾の家。」「魔王城かな?」「そんな訳あるか。」
俺達も部屋を出る事にした。