娘に会いに行こう
200年かけてようやく自分を完全に制御出来た俺は、まずリリーに会いに行く事にした。キャベツとかは後でいいや。タマも王都に用事があるから一緒に行くんだって。魔王ん所に行くらしい。
とりあえず王都の門の前に転移すると…あれ?街の中じゃん。王都広がってね?門の後ろにも街があるぞ?あ、結構向こうの方に門がある。
かなり様変わりしてんな…。なんか線路とかあるし街灯もあるよ。これ路面電車かな?中世にそんなのあったっけ?無いよな…。
でも街並みはあんまり変わってない。ネオ中世って感じ。ネオ中世って何だよ。
あ、路面電車が走ってる。どこの世界の奴もチンチン鳴るんだな。ちんちん。
暫く街の様子を見ながらボーっとしていると、知らない奴に掴み上げられていきなり線路に投げられた。電車向かって来てるんだけど?
何故か路面電車がスピードを上げて突っ込んで来た。避けようとしたら体が動かない。なんで?
そのまま轢かれた。でも俺の勝ちみたい。
路面電車が俺を轢いた衝撃で脱線して横になったまま滑ってその辺の建物に突っ込んだ。すげー事になってんな。
「うん?もうこんな程度じゃ死なない?あわよくば二人ともって思ったのになぁ…。仕方ないか、あはは。」俺を電車に投げた奴が何か言ってる。なんなのコイツ?とりあえず殴り殺…あ、消えた。何だったのアイツ?どっかで会った気がするけど…まあいいか。次に会ったら殺そう。
さっきの通り魔?みたいな奴の事を考えていると、いつの間にかワラワラと人が集まって来ている。建物に突っ込んだ電車の周りにいっぱい居るな。
どこの世界にも野次馬って居るんだな。俺も行こ。
俺も事故現場で野次馬をしてると、兵士がやって来てワチャワチャと救助なんかをやり始めた。
あ、魔王が這い出て来た。「わらわのりんご…。」なんか半ベソじゃね?あ、角に食いかけのリンゴが刺さってる。何してんのお前?「おや?こんな所に…あ~ん。」あ、食った。そういやタマがいつの間にか居なくなってるな。
野次馬を下がらせようとした兵士共が俺を見るなり「ん、なんか汚いスライムだなな。」「スライムレイクの固有種だな。芋の馬車にでも紛れ込んでここに来たんだろう。」だって。なんだよ。まあいいか、リリーの場所聞こ。
「この街にリリーって名前のエルフ居る?多分食堂で働いてると思う。」「喋っ…まぁモンスターも喋るか。もしかしてあのレストランの婆さんか?何だ知り合いか?」「俺の娘。」「娘?お前スライムだろ?」「スライムだけど?」「お、おう…。」なんだよ。
まだ生きてるらしい。よかったね。場所を教えてもらったからリリーに会いに行くことにした。
食堂は移転してるみたい。行くとすっげーデカい店だった。何階建て?ヤベーな。
店に入ると店員に箒で掃き出された。俺は虫か?ひどくない?
仕方ないから壁を登って一番高い所の窓から侵入した。侵入するとヨボヨボの婆さんが机に向かって何かやってる。あ、ガッツリ目が会った。俺に目は無い。あれ…?お前ってもしかして…。
「おじさん…?」リリーじゃん。
「久しぶり、お前シワシワじゃん。」「200年も経ってるからね…。久しぶり!おじさん!」「笑顔は変わらないな。」「ふふっ。」
それからリリーと暫く話をした。
あの粉を使った肉料理が大ヒットして店がここまでデカくなったんだって。
今じゃ王都の名物らしい。粉のバリエーションも増えたみたい。
この店は下の階が一般庶民用で上の階が貴族とか金持ち用らしい。一番上と地下に従業員用の部屋とか食糧庫とかがあるんだって。リリーは旦那が死んでからはずっと経営をしてるらしい。でもたまに厨房に行って料理人の指導とかもしてるんだって。
そんな事を話してたらリリーが「おじさん、お腹空か…ないだろうけど一度食べてみてよ!」って言って誰かを呼んで串焼きを持って来させた。名物の串焼きセットらしい。同じ肉が3種類ずつとキノコのセットか。高いのは牛豚鶏系の魔物で安いのは普通の家畜の肉らしい。デカオーガとか普通に買うとめっちゃ高いんだって。
エビとかホタテとかの海鮮のバージョンもそれぞれあるんだって。てかボリューミーだなこれ。いくらすんの?小銀貨2枚!?この量で!?安くね!?あ、金持ち用は金貨2枚もするんだ…。金持ち用で採算取ってるのかな?
久しぶりに食ったけど…うん、懐かしい味だな。あ、味が違うのもある。辛い味とレモンっぽい味。おいしい。
リリーはこの粉を作る為に錬金術を覚えたんだって。粉の開発と錬金術の習得に相当苦労したらしい。そういや錬金釜で偶然出来た粉だったな。なつかしい。
オリジナルの作り方を知ってるのは俺とリリーと店を継ぐために残ったリリーの子孫達だけらしい。門外不出の秘伝の粉だな。辛いのとレモンっぽいの奴のレシピを教えてくれた。
そういやペネロペ達が生前よく来てたんだって。魔王は今でもたまに来るらしい。丸焼きのジャガイモとラビットステーキの粉マシマシをいつも大量に食って帰るんだと。マシマシとかラーメン屋か?
街の様子がかなり変わってるのも話になった。
俺がスラムをぶっ壊したのをきっかけに街の拡大が始まったんだって。
今じゃ以前の倍位まで街が広がってるらしい。
俺が暴れる前から王都を広げる計画自体はあったんだって。俺が破壊した辺りの連中がかなりタチが悪くて何かと難癖付けてきたりしてたんだって。
俺が皆殺しにしてあの辺りを破壊し尽くしたからこれ幸いと計画を実行したらしい。
ついでにあの街灯とか路面電車は何?って聞いたら、100年位前に突然現れた奴が新たな魔法技術がどうのこうのとかで路面電車とかが出来たんだって。そいつ転移者だぞって言ったら納得してた。
その転移者はもう死んだらしい。あ、あの路面電車は魔導路面鉄道って言うんだって。そういや電気無いもんな。
久々の再会に話が弾んで話し込んでいたら、気付いたら夕方になってた。
これからどうすんの?って聞かれたけど、そういやリリーに会う以外特に考えてなかったな。
特に考えて無いって言ったら、学園に通えば?だって。そういやリリーが嫁入りするからって学園に通おうとしてたんだっけ。入学試験の申し込みを締め切られてたけど。
え?今年はまだ受付してる?じゃあ行くか。
その日はリリーの家に泊まって、次の日に学園へ入学試験の申請をしに行く事にした。
晩飯の時はめっちゃ人が居たな。家族と住み込みの従業員らしい。一緒に晩飯を食うのが決まりなんだと。晩飯で料理の腕を確認したり、配膳の仕方を確認する為なんだって。
リリーがはしゃいでるのをみて皆驚いてたな。普段は物静かな婆さんなんだって。
メシ食う時に居た赤ん坊はリリーの曾孫の曾孫の曾孫の子供なんだって。なんだそりゃ。何て言えばいいのこれ?該当する言葉が無いんだけど?
メシを食った後は朝までリリーの部屋で過ごした。寝顔を見てるとなんか懐かしい気分になった。
朝になったからリリーを起こす事にした。
「おきろ。」「う〜ん…。」「おきろ。」「う〜ん…。」「なんだコイツ。」なんか前にもこんな事あったな…。あ、起きた。
その後、朝飯を一緒に食ってから店を出て学園に向かった。




