哀れな小鬼達
俺達はゴブリンの集落に突撃した。ゴブリン達が気付いて向かってくる。
「グギャッ!!」「グオォー!!」棍棒を振りかざして叫びながら走ってくるゴブリン達。
「うおおおおっ!デヤァッ!」ズタ男が気合いの入った声でゴブリンを真っ二つにする。こいつ結構やるな。
「ハアアアッ!」ヤクザ女が勇ましい声を上げながらゴブリンをバッタバッタと斬り伏せていく。こいつも強いな。
「わぁ〜。」俺も声を出してゴブリンの頭を殴っていく。強化魔法ってすげーな。頭が弾け飛んだぞ。たのしい。
「何よその気の抜けた声!ハアアアッ!」
ヤクザ女がツッコミを入れながらもバッサバッサとゴブリンを倒していく。なんだよ。
「ケイン!気を付けろ!」弓男が叫びながらズタ男の背後から襲いかかるゴブリンを射抜く。「助かったぜ!リーダー!」当たったらどうすんの?そんなヘマしないか。
「後ろ…。」ボッ「ギャッ!!」「あつそう。」俺の後ろにいたゴブリンが火の玉を食らって焼け死んだ。威力たけーな。食らわないようにしよ。あ、俺に死角はないぞ?知るわけないか。
順調にゴブリン達を倒していくと、ようやくデカゴブリンがテントから出てきた。「グオッ!!グオォー!!」キレて叫んでるよ。何か気に入らない事でもあったのかな?あいつ殴りにいこ。
ボコッ「デカゴブリン殴ってくるわ。」ズバッ「でやっ!気を付けろよ!うらぁ!」ザシュザシュ「ちょっと!待ちなさいよ!私が倒そうと思ってるのに!あ~もう!鬱陶しいのよ!クソゴブリン!死ね!」ボコッ「次でいいじゃん。今回俺な。」「もう!!アンタ何なの!?」「スライムだけど?」「お前ら!喧嘩してる場合か!」ビュッ「…。あと7匹…。」「おぉ〜、頑張れよお前ら〜。もう少しだぞ〜。」
5人がかりだと流石に早いな。もうほとんど死んでるんだけど。そう思っていると、デカゴブリンが棍棒を振り下ろしてきた。
レベルアップと強化魔法のおかげで余裕で避けられる。
でもこれ、かなり触手伸ばさないと頭届かなくね?
そうだ、足の指潰そ。
俺は攻撃を避けながら執拗に足の指を殴り続けた。
デカゴブリンが凄く嫌そうな顔をしている。
なんだよ。低いんだから仕方ないだろ。
しばらく殴っていたら、とうとう棍棒を手放した。
足の指を押さえながらピョンピョン跳ねている。
「たのしい?」「グウゥ~ッ…。」俺はたのしい。
飛び跳ねているデカゴブリンのもう片方の足の指も執拗に殴り続けると、とうとう転んだ。やったね。
すかさず頭側に回り込み、頭を思いっ切り殴った。デカゴブリンの頭が弾けて痙攣している。おいしそう。
既に戦闘を終えた4人がこっちを見ている。なんだよ。
「頭届かないから手こずった。」「いや、まぁ…うん。お前酷いな。」弓男が何か言ってくる。「ゴブリンもあんな顔するんだな…。」「アンタ陰湿過ぎない…?」剣士共もなんか文句言ってくる。「普通のゴブリンだけ倒して…。」フワフワ女もかよ。
「おぉ〜、なかなか早かったなぁ。よし、一旦戻るか。ホラ、早く来〜い。」ゴリラがそう言って拠点に戻っていく。続いて4人も戻って行った。あ、弓男の矢を回収しとこ。俺も飛ばせるかもしれないし。いいよね?
俺は矢を回収してから拠点に戻った。
拠点に戻ると、焚き火で肉とキノコを焼いている。
「アァ〜、グミちゃんだぁ〜。」グミちゃんですよ。それお前の口癖?
「何やってたんだお前?まぁ全員揃ったし、損耗確認だ。俺は矢を5本消費だ。残りは25本。」「俺は問題無いぜ。肩慣らしにもならねぇよ。」「私もよ。まだまだいけるわ。誰かさんが真っ先にいい獲物に向かって行ったせいで。」「だれだろうな。」「魔力を少し…昼には回復する…。」「俺疲れないしこの棍棒壊れない。」「次は私が上位種の相手するから、アンタはザコでも狩ってなさい!良いわね!」「なんで?」「アンタさっきから何なのよ!」
魔力って自動回復すんの?俺水吸わないと回復しないんだけど…。あ、矢持ってきたけどあいつ使うかな?
「あ、そうだ。矢拾ってきたけど、いる?」「いいのか?」「1本くれたら後はいいや。」「そうか、すまないな。」俺は矢を4本渡した。
「へぇ~、意外ね。遅いから遊んでるのかと思ってたけど、気が利くじゃない。」ヤクザ女が感心してる。ツンデレか?
フワフワ女の回復に時間がかかるから、休憩がてら昼飯にするらしい。俺は別に食わなくても平気だから皆が飯食ってる間に矢を飛ばして遊んでいた。
飯を食い終わったみたいなので、また集落を潰しに行った。
やる事はさっきと同じだけど、今回はヤクザ女がデカゴブリンを倒すらしい。
とりあえず普通のゴブリンを全滅させてヤクザ女の戦いっぷりを観ることにした。
「炎よ、我が魔力を糧に、刀身に宿れ。フレイムエンチャント!」何今の?厨二病か?
ヤクザ女が変な事を言うと、剣が燃えた。
なにあれ?俺も出来る?あ、出来そう…。ボッ。出来た。でもこれじゃ松明じゃん…。ナイフは?…ボッ。出来たよ。でもショボいな。
そう思っていると、後ろの方から「嘘…。」って聞こえた。
フワフワ女がこっち見てる。なんだよ。
「は!?お前どうやった!?」横に居たズタ男がなんか焦ってるよ。なんで?
「いや、なんか出来そうだったから…。」「マジかよ!」「終わったみたい…。」いつの間にかデカゴブリンが死んでる。燃えながら縦に真っ二つだ。俺も出来る?いや棍棒じゃ無理だな。
そう思っていると「フゥ〜。ま、こんなもんね。どう?私の実…は?」とヤクザ女がドヤ顔自慢げに振り返ってたが俺の方を見て固まって口をあんぐりと開けている。なんだその顔。少しフリーズした後、ヤクザ女が騒ぎだした。
「ハァ!?」「なんか出来た。」「何でよ!?」「なんか出来た。」「私がコレを習得するのにどれだけかかったと思ってんの!?」「なんか出来たもん。」「何なのよ!もう!何でこんなのが…。」「なんか出来たもん。」なんかヤクザ女泣きそう。何かあったのかな?
「あぁ~、グミは転生者だからなぁ。普通はあり得ねぇよなぁ。俺も炎剣覚えるのに苦労したぜ…。」
ゴリラがそう言うと、ヤクザ女はちょっと落ち着いたみたい。
転生者だって事は気にしないのかな。この世界割と異世界人居るみたいだし、そりゃそうか。
その後俺達は拠点に戻った。今日はもう寝るらしいけど、俺暇なんだよな。
勝手に行こうとしたら、ゴリラに止められた。なんで?
仕方ないから朝まで矢を飛ばして遊んでいた。
次の日以降のゴブリン狩りもあっさり終わった。こんなんでいいの?
集落のゴブリンを全て討伐した俺達は、街に帰る事にした。終わった報告はどこ行けば良いか知らないけど、ゴリラに付いて行けばいいか。
あ、ゴブリン食ってみたらよかったな。