街に戻ろう
あれから1ヶ月経った。最初の10日と合わせて、物理の強化に20日位、魔法の強化に20日位費やした。
なかなかの強さになったと思う。
ところで、俺のステータスを見てくれ。こいつをどう思う? 鑑定
種族:スライム(特殊個体)
名前:グミ
年齢:0
性別:無し
レベル:1
体力:420
魔力:220
物理攻撃:210
物理耐性:210
魔法攻撃:215
魔法耐性:215
速度:415
スキル 鑑定100 水魔法21 魔法3 棍棒術20 体術20
称号:愚者 笑い者
あだ名:変なスライム
すごく・・・雄々しいです・・・多分。
ステータスは大体、1日あたり10の上昇率だ。スキルは、1日あたり1の上昇だ。すごい…多分。
棍棒を上げると、体術も上がるみたい。走るだけだと、体術は上がらないらしい。
大雑把な魔法とやらも、2上がってる。
水魔法は10で野球のボール位に、20でバレーボール位まで大きく出来るようになった。飛距離も延びたし、威力も上がった。何体の同胞が実験の犠牲になったかは、考えないことにしよう。結構な数を爆散させたのに、何故かレベルは上がらない。なんで?。
それは置いといて、ついに速度がキャベツを上回った。
魔王式クレイジートレーニングの成果なのかな?それともアイツ、実は遅いのか?まぁ、小太りだしな。タルンタルンさせながら走るんだろうな。
主に腹を。
そんな事を考えていたが、このステータスを誰かに見てもらいたい。
といっても、ゴリラ、激ヤバ受付嬢、キャベツ、魔王しか鑑定持ってる奴を知らないけどな。ハゲも持ってるかも。
待てよ、俺に深く関わってる奴で鑑定持ってるのって、ほぼ全員じゃねぇか。
帰ったら魔王に鑑定持ちって結構居るのか聞いてみよう。
とりあえず、街に戻ることにした。
湖から街まで移動してるけど、なかなか爽快だな。自転車位のスピードが出てるぞ。
まぁ、スライムだから疲れずにフルスピードで走れるんだけど。
そういえば、この速度ステータスでコレなんだよな…。あのゴリラ、マジ走りすると、車並みのスピードが出るんじゃね?怖っ。
高速で迫りくるゴリゴリマッチョ。ヤバっ。
あの同胞の方が速いんだけど、圧が違うもんな。
でも、あの激ヤバ受付嬢はもっと速いんだよな…。あのニタァ…っとした顔で猛スピードで走ってこられたら漏らすぞ。
スライムが漏らすのか知らないけど。
でも、死ぬと臭い汁を撒き散らすぞ。
そんな事を考えていると、街が見えてきた。
幌付の荷馬車とその運転手と恐らく護衛の冒険者が、門の前に列を作って並んでいる。なんか人多いな。
「あっ、イモ祭りか…。」俺はボソっと呟いた。
そうだよ、魔王が楽しみにしてるイモ祭だ。
とりあえず、街に入りたいし、並んだ方が良いよな。見た感じ、まだそんなに並んでないか。
俺は、列に並ぶことにした。割り込んでトラブったら面倒だもんな。
俺は列の最後尾に並んだ。荷馬車ってでっけーな。いや、俺が小さいだけか。
そんな事を思っていると、後ろから冒険者達が4人固まって歩いてくる。パーティーだろうか。
弓使いの男、剣士の男女、魔法使いの女。前衛2人、後衛2人って奴かな?。
俺を跨いで、荷馬車の後に並ぼうとする。気付いて無いのか?それとも、気にしてないのか?とりあえず、注意はしないとな。
「おい、抜かすなよ。並んでんだろ?」「うわっ!?何だコイツ!?」「スライムが喋った…。」「なんで棍棒なんか持ってるのよ!?」「距離を取れ!」
冒険者達は飛び退いて武器を構えた。
なんで?と思ったけど、考えたらそうか。
ザコモンスターが棒とカード持ってるだけならまだしも、喋るんだもんな。俺だって焦る。
剣士の男が話しかけてきた。「おい、何だお前は?」剣士の女はキッとした目付きで睨んでくる。怖っ。魔法使いの女は、ボーっとした顔で、火の玉を作り出している。お前の見た目だと、氷属性だろ。なんかガッカリ。「何って、スライムだけど。」そう答えると今度は、弓使いの男が話しかけてくる。「何なんだお前。」「いや、だからスライムだけど?」剣士の男は困惑している。「いや、そうだけど…そうじゃなくてな…。」ビビって剣抜いただけかよコイツら。変なスライム相手に焦り過ぎだろ。
「とりあえず、武器下ろせよ。」俺が言うと、パーティーメンバー同士で暫く顔を見合わせた後、「…。分かった。」と言って、武器を収めた。コイツら、見た感じ普通の冒険者っぼいし、とりあえずステータスを見ておくか、クソ農民よりはマシだろ。鑑定…(こら、無闇矢鱈と見てはイカンと言ったであろう?尻を叩くぞ。)「俺に尻なんてねーよ!見りゃ分かんだろ!お前本当尻好きだな!このケツ魔王!てか、ずっと見てたのかよ!キャーッ!!覗きよーっ!!衛兵さーん!!」(お主というやつは…。)魔王は呆れている。勝った。何がとは言わんが、勝った。いや、負けか?。
いきなり叫んだからか、剣士の男がまた剣を抜いた。「は!?いきなり何だお前!?…ケツ魔王?」そうか、コレ念話だからコイツらに聞こえないのか。「いや、魔王が鑑定したらケツ叩くって念話で言うからさ…。」言い訳をしたら、今度は剣士の女が食って掛かってくる。「魔王?念話?アンタ、何言ってるの?てか、アンタ鑑定持ち?嘘でしょ!?こんなのが!?」こ ん な の が ? 「念話…。失われた魔法か…。」弓使いの男が呟く。そこは魔法使いの女だろ。魔法使いの女は…何ボーっとしてんだよ、何だこのフワフワ女。お前が一番反応しないと駄目だろ。大丈夫かこいつ。そんな事を話してると、門の前まで来た。「とりあえず、詳しい話とかは、街に入ってからにしない?魔王に会いたかったら、ゴリッゴリの大男のゴリラって名前のクリスが知ってるからさ。」「クリスって名前のゴリラだろ…えっ、クリス?」剣士の男が反応した。「大男でクリスって…。もしかして、そのクリスって人、身の丈ほどの大剣を装備してない?」剣士の女も反応した。「何?お前らあのゴリラ知ってんの?」フワフワ女が口を開いた。「知ってる…。皆知ってる…。最強の冒険者…。守護者、剛剣のクリス…。全冒険者の憧れ…。」「俺そんな肩書き知らないんだけど。」あのゴリラ、有名人だった。そういや、守護者って称号持ってたな。あれってそういう意味なの?あだ名が大剣ゴリラなのに?
ゴリラが有名人なら、あのヤバい受付嬢もそうなのかな?ついでだから聞いてみよう。
「あっ、そうそう。ギルドにヤバい奴居るのも知ってる?ナインっていうなんか気味悪い女なんだけど。」「ヒッ!!」フワフワ女がビビり出した。何だよ。弓使いも知ってるらしいが、あんまりビビってない。剣士の男女は呆然としている。何なんだよ。
フワフワ女はガタガタ女になって話にならなさそうだし、剣士共は魂が抜けたみたいになってるし、弓使いに聞いてみるか。「何?あいつも有名人なの?」「勇者殺し、ナイン。暇潰しだと言って、勇者達と真正面からやり合って、無傷で全員惨殺した危険人物だ。国1つを滅ぼした事もある。」
やっぱりクソヤバい奴だった。正に災害。「ドラゴンか何かかな?」「ドラゴンの方がまだマシだな。礼儀を弁えれば、話を聞いてくれる。」あいつ、ドラゴン以下かよ。頭アポカリプスか?
「しかし、どうしてギルドに…?」「特別職員だってさ。ダルそうに接客してるぞ。ホラぁ、草出しなぁ〜とか言ってる。」「嘘だろ…。」
俺の知り合い、ヤバい奴しかいないの?
そうこうしていると、前にゴリラ達を呼んでた門番が俺たちを呼んでいる。
「おっ、クリスが拾ってきた変なスライムか。久しぶりだな、何処行ってたんだ?」何かコイツ馴れ馴れしくない?まぁ、あの無愛想な奴よりかは気分良いけどさ。「湖でずっとトレーニングしてたぞ、もうあの農民ならワンパンだな。多分。」「そうか、とりあえず規則だからな、身分証をこっちに渡してくれ。」「ほい。」「うん、これはお前しか持って無いだろうし、良いだろう。入ってくれ。クリス達によろしくな。」「今あのゴリラ何処にいんの?」「さぁ?ギルドマスターなら知ってるんじゃないか?」そう言って、カードを返してきた。ついでだし、コイツらをギルドに連れていくか。ギルドは目と鼻の先だけどな。スライムには目も鼻も無いがな。「ホラ、お前らもギルドカード渡せよ。俺はハゲにゴリラか魔王の居場所聞きにギルドに行くけど、お前らも来る?」「あ、あぁそうしよう。」「流石に、ギルド職員になってるなら暴れたりはしないわよね…?」「ウン。」「実際に目にするのは初めてだな、勇者殺し。」全員正気に戻ったみたいだ。イモ祭が始まってるのか、街には人が沢山居て、屋台まで出ている。
冒険者達の入場?手続きが済んだので、俺はこいつらを連れて、ギルドに向かった。
すぐそこだけど。