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変なスライムの物語  作者: フラフラ
変なスライム、冒険者になる。
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冒険者登録

エルフと冒険者達が出ていき、部屋に残ったのは魔王と俺だけになった。「それで、これから何かすんの?」と俺が聞いた瞬間に、部屋を誰かがノックした。「ヨハンか、入れ。」魔王がそう言うと、傷跡だらけのスキンヘッドのおっさんが入ってきた。「誰このいかついハゲ?盗賊の頭?」「ハゲとは何だ、モンスター。」俺が喋っても驚かないようだ。さては、只者ではないな。「此奴はここの支部の責任者じゃ。」「ギルドマスターってやつ?」「うむ、そうじゃな。」鑑定しようとしたら、(無闇矢鱈と人を覗くでない。)と魔王に念話で止められた。鑑定はそうホイホイと使ってはいけないようだ。この世界の事どころか、自分の体の事すらよく分かってないから仕方ないだろと思うが、とりあえずこのハゲが何か言おうとしているから黙っておこう。「ナインが面白い事があるって呼ぶから何事かと思えば、クリス達が面白い奴を見つけてきた様だな。ところで、ゴリラはクリス、農民はクリスが面倒見ているマーカスの事だと思うが、キャベツって誰だ?」「ローズの事じゃ。なんでも、キャベツのような匂いがするらしい。所謂エルフ臭じゃな。」エルフ臭…。「ハァ…、アイツも女なんだから、そういうデリケートな事は言ってやるなよな…。」ハゲは呆れている。「そうじゃヨハン、コイツを冒険者登録しようと思うんじゃが、かまわんじゃろ?」魔王がおかしなことを言い出した。「別にかまわんぞ。」二つ返事でハゲが了承した。「俺スライムなんだけど、できんの?」「「出来るぞ。」」2人が口を揃えて言った。この世界おかしくない?「魔物の冒険者はたまに居るからな。ナイン、書類持ってきてくれ。」ハゲがそう言うと同時に「ハァい。」と言ってヤバい受付嬢が部屋に入って来て、俺の前に書類と羽根ペンを置いた。本当こいつ気味悪いな。目の前に置かれた紙に見たことの無い文字で何か書いてある、見たことが無いはずなのに何故か読める。これが転生者特典か。だが、スライムの俺にはペンを持つことすらできない。「手も足も出ねぇ。」俺がそう言うと、魔王が「あぁそうじゃった。まだ体の使い方も教えておらんかったの。妾が書いてやろう。」と言った。

書類に書くことはそんなに多くないらしいけど、どっちにしろペンすら持てないので書いてもらうことにした。登録書に書くことはこれだけだった。

冒険者登録書

種族:

名前:

年齢:

性別:

出身:

備考:

この並びを見て気付いた。これ、鑑定と並びが同じじゃね?「なあ、俺の鑑定の並びと似てるんだけど。」「妾のとは少し違うな。」どうやら、鑑定は人によって違うらしい。とりあえず、書いてもらうことしよう。

「種族は、スライムじゃな。」「名持ちの特殊個体様やぞ。」「そうじゃな。次は、名前じゃな。」スルーされた。「グミ。」「大昔に異世界人が広めた菓子と同じか。たしかにスライムとグミって大きさ以外はそっくりだよな。」ハゲが呟いた。気にはなるが、とりあえず後で聞こう。「年齢は…今の体を基準にするから、0じゃな。」「元はけっこうオッサンだったぞ。」「ああ、異世界人か。転移や召喚じゃなく転生ならこっちに来た時の年齢から数えるのが普通だな。」頻繁に異世界から来てんのかよ。「性別無しっと。」「前は男だったぞ。」「今はスライムじゃろ、スライムに性別はない。」サーセン。「出身はこの国でいいじゃろう。フジイ王国っと。」「フジイ!?」「自分が居る国の名前も知らんのか…。あのな、この国の初代国王は、600年前に日本という国からこの世界に来た異世界人だ。」先駆者がいたようだ。「あとは、人語の理解可能と意思の疎通は一応可能、と。」書類の記入が終わったようだ。魔王が書き終わると、ヤバい受付嬢に登録書を渡した。「ハァい、これで登録ねぇ。ギルドカード作ってくるからぁ、後の説明はギルドマスターから聞いてねぇ〜。」そう言うと、ヤバい受付嬢は出て行った。こういうのって受付嬢がするものじゃないのかと思っていると、ハゲがボヤいた。「説明してから登録証持ってくればいいだろ…。俺、ギルドマスターだぞ?」このハゲ、立場弱くない?。「おいハゲ、あのヤバいのが言ってた説明しろ。」俺がそう言うと、ハゲがギロっと睨んできた。サーセン。

「はぁ~、仕方ねえ。」ハゲがそう言ってため息を付き、冒険者についての説明が始まった。


冒険者は、特別な奴以外はFからAまでランクがあり、初めはだいたいFランクスタートで、ちょっと強い奴はEランクスタートらしい。ランクは仕事をこなしたり、実績が認められると上がるらしい。

なぜかアルファベットなのも含めてこの辺はお約束だ。C以上がベテランで、Dランクが中堅だと。

因みにあの農民はFランクなんだと。弱いもんな。

Aランク以上のランクもあるらしく、それはアルファベットじゃなく、特級と呼ばれるもので、あのゴリラと魔王とがそうらしい。

確かに、ゴリラのステータスおかしいもんな、魔王は鑑定すら出来なかったし。

あのヤバい受付嬢は元特級冒険者らしく、ギルドに勧誘されて特別職員になったらしい。

その特別職員になるには飛び抜けた能力が必要らしくギルドマスターに次ぐ権力を持っているのだとか。

ギルドに登録だけするのはよくあるらしい。何もしなくても登録抹消される事とかは無いらしい。嘘付いて登録できるじゃんと思ったけど、魔法で普通に嘘がバレるんだと。魔法って便利。

あと、無くすと再発行手数料が銀貨1枚かかって始末書みたいなのを書かされるんだとか。字が書けない奴は、口頭で言わないといけないらしい。なんでも、カードを盗まれると、同じ種族と性別の似顔絵付きの手配書に書かれていないレベルの悪人がそれで身分を偽って堂々と国境を越えたりするから厳しくしてるんだとか。ちょっと高いから、無くさないようにしないとな。

冒険者同士の争いなんかは特に禁じられていないらしく、普通に気に入らないからブッ殺すとかアイツ気に入ったからブッ犯すってのが出来るらしい。国も冒険者同士の諍いはノータッチらしく、極端な話、教会で冒険者を犯して惨殺してもお咎め無しなんだとか。ヤバくない?ただ、それをやると普通に他の冒険者に殺されるから余っ程トんでる奴以外はまずしないんだとか。たまに居るのかよ、そんなヤベー奴。異性界怖っ。

ちなみに、ギルド内で職員に危害を加えたりするとあの激ヤバ受付嬢みたいなのがすっ飛んで来るんだとか。大抵はボコられたり、説教で済むらしいが、本格的にヤバい奴は登録抹消とかじゃなく物理的に抹消するんだとか。

どこのギルドにも最低1人はああいう用心棒みたいな職員が居るんだとか。

依頼で怪我したり死んだりしてもギルドは責任は負わないが、依頼内容や報酬が依頼書と違う場合はギルドが介入して解決くれるんだとか。場合によっては、依頼者を牢屋送りにしたりするらしい。

パーティーを組むのも自由で、仲間が欲しいけど声かけられないっていうコミュ障なんかは受付に言えば探したりしてくれる。気に入った者同士でパーティーを組んでパーティー名を登録したりも受付に言えばできるんだとか。登録すると、パーティー名と登録したギルド支部の名前がギルドカードに登録されるらしい。

既に使われているパーティー名は使えないので登録は早いもの勝ちのようだ。

ちなみに支部が違えば名前がモロカブりでもで登録できるようだ。

勝手にパーティー組んで名前付けてもいいけど、登録したほうが何かと便利だから皆登録するらしい。たまに登録しないで同じ拠点で同じパーティー名で活動して、登録済みのパーティーと未登録のパーティーとが揉めるんだとか。

初心者の個人指導も受付で言えば手の空いてるベテラン冒険者を探して付けてくれるらしい。普通はDかCランクが担当するらしいが、B以上が担当する事も極稀にあるとか。魔王とゴリラがこの街にいる時期に登録して個人指導を頼んだあの農民は運が良いんだとか。良かったな、クソ農民。

因みに、あの農民はゴリゴリのオッサンと魔族の幼女とどっちが良いか聞かれて、ゴリラを選んだそうだ。ま、当然だろうな。

あと、Eランク以下の初心者向けの講習会もあるらしく、魔物や獣の特徴や弱点なんかについての説明や、薬草や鉱石等の採集系依頼の物の説明、食える物食えない物の判別法、応急処置や戦闘訓練なんかがほぼ毎日日替わりでやってるらしい。講習を受けると食い物を1食分位くれるらしく、孤児や金のない初心者はそれで食い繋いだりしているんだとか。

「まあ、ざっとこんなもんだな。」ハゲの説明はさすがギルドマスターと言う感じで分かりやすかった。こいつはハゲではなく、ギルマスと呼ぼう。よろしくな、ハゲ。

説明が終わったと同時に、誰かが扉をノックした。「おう、入れ。」ハゲが言うと、「失礼します。」と言って普通の受付嬢が入ってきた。

「登録証をお持ちしました。説明はギルドマスターから受けられたようですね、これが貴方の登録証です。」そう言って俺の前にギルドカードを置いた。「それでは、失礼します。」一礼した後、普通の受付嬢は部屋を出て行った。礼儀正しいな、本来これが普通なんだろうけど。

これが俺のギルドカードか。カードはこんな感じ。


冒険者ギルド登録証

種族: スライム 名前:グミ

性別:無し ランク:F 

以下、余白


「あれ?出身地は書かないの?」

「出身地は隠している。出身地で差別されたりするのを防ぐ為だ。年齢は長命種だと書ききれない事があるから書いていない。この魔王なんかがそうだな。あとは、裏面に備考の欄がある。」そう言ってカードをひっくり返した。裏面はこうだ。


冒険者ギルド登録証

備考欄:人語の理解可能

意思の疎通、一応可能

以下、余白


貰ったはいいが、これをどうやって携帯するのか。とりあえず、魔王に持っておいてもらおう。

「のじゃロリ、これ持っといてくんない?俺、手とか無いし。」「コロコロと呼び名を変えるでない。妾の事はクロと呼ぶが良い。大魔王様でも良いぞ。」「じゃあクロで。」「うむ。」「のじゃロリ…?」ハゲが首を傾げている。「此奴の元いた世界では、妾のような者をそう呼んだりするらしいのじゃ。1000年位前に来た転生者がそう言っておったな。」「なるほどな。まぁ、異世界人なんて割と居るからな。」この世界、異世界人がはるか昔から頻繁に来るらしいが、のじゃロリってそんなに古くない言葉だよな。俺の居た世界と時間の流れとかが違うのだろう。これは、現代知識無双も出来そうにないな。

「さて、では行こうかの。手間をかけたな、ヨハン。」そう言って魔王が立ち上がり、俺を持ち上げた。「おう、気にするな。一応、魔物が登録した事は領主様に伝えておくからな。」そう言ってハゲも立ち上がった。

「妾が面倒を見ることも伝えておいてくれ。さて、グミよ。とりあえず、妾の家に行くぞ。色々と説明をせねばならんからな。」

こうして俺は、冒険者になった。

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