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逆さ時計

作者: 藤乃花

怪具かいぐ』と称され、人々に様々な影響を与え続けている品々。そんな災いを宿した品の中から、一つ……『逆さ時計』と名付けられた懐中時計……ワタシの事、が今、怪具売りから、とある男性へと売られていく。怪具売りは年端もいかない少年。幼い顔付きで、怪具売りは男性へ助言を下す。「お客様、その時計を使用される際には御自身の年齢と調節し、時の運びを範囲内でおこなって下さいな。範囲内を越えてしまいますと、お客様の御体が限界に達してしまいます」重々しい口調で語る怪具売り。そんな助言を軽く受けとめ、男性の手は懐中時計ワタシの鎖を片手で揺らすように握る。「ふう……ん、時を戻す時計……『逆さ時計』ねえ」「お客様の年齢を越えた時間までは戻せません。ご了承下さいね?」「分かってる、分かってる!で、いくら?」男性はスラックスのポケットから長い財布を鮮やかに取り出すと、中身の金額を確かめた。財布の中にあるお札からは、何処と無くギャンブルの匂いが漂ってくる。賭け事に慣れている手付きでお札を数枚ちらつかせるが、怪具売りの欲しいものはそんな人間的な物ではない。「現金ではなく、お客様がお持ちである『望み』です」「んあ?のぞ……なんだそれ?」「『代価交換』です。別名『代償』とも云います。一つのモノを手にいれる時には、その時手にしているモノを一つ差し出す行為の事です」少年から伝わる何かを、この時初めて男性は感じ取る。「交換条件、というヤツか。構わねえ。俺の望みは一攫千金。それだけだ!」〈やはり、今回のお客もそんな類いね。分かっていたけど、実際そうだとガッカリしてしまう〉「承りました。近いうち、お客様の『望み』を頂きに参ります」「ま、どのみちこの時計で時を戻せば初めからリセット出来るから、『望み』は取り戻せるよ!ありがとよ」男性はそういうと懐中時計ワタシをカッターシャツのポケットに入れ、立ち去ろうとした。「お客様……『怪具回収人かいぐかいしゅうにん』には用心して下さい」「ああ、あの厄介な連中だろう?んなの、無視だ無視!」「……お気を付けてお帰り下さい」懐中時計ワタシが回収されれば人の『望み』を食い物にしている怪具売りが困る。けれどもう懐中時計ワタシは限界を迎えていた。人を不幸にするために生まれてきたのならば、いっそのことこの硬い体ごと壊してほしい。バラバラに分解して!懐中時計ワタシの叫び声は誰にも届かない。品が叫んでも、それは単なる空耳扱いされるだけ。〈あ……!この気配!〉怪具売りが放つ不吉な空気とはまるで違う……澄んだニオイが、懐中時計ワタシの六巻をくすぐった。〈気付いて!ここにいるわ!〉男性と怪具回収人かいぐかいしゅうにんとの距離が縮まる。怪具回収人かいぐかいしゅうにんの女性の眼差しが男性を捕らえ、何かの気配を察知している感じがする。怪具回収人かいぐかいしゅうにんの女性が懐中時計ワタシの存在に気付いて見事回収に成功してハッピーエンドか、はたまた男性がまんまと懐中時計ワタシの気配を隠して逃げ切りバッドエンドか……それとも……?





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