2.不平満足婦人
最近、私素晴らしいって言わなくなったの。
お陰様で髪はぐちゃぐちゃ、お洋服はぼろぼろ、靴も我楽多みたいになっちゃった。
でもね、この王冠だけは綺麗なままなのよ。
当たり前じゃない、熟した果物の枝は変わらないのだから。
人間ってそう言うものなの。
朝は爛々と輝く朝日に愚痴を吐いて、昼は真頂点から見下ろす太陽に舌打ちをして、夜はぴっかぴっかと点滅する星を握り潰して。
そうなの、人間ってそう言うものなの。
けど私は嫌いじゃないわよ、一挙にスバラシイと拍手喝采を送る殿方も。自然にアンコールなんて無いじゃない、でもそれを求めるのもまた人間。それこそ正しい普遍。
劇場の拍手喝采の中、一人だけ暴言を吐いたら追い出されるでしょう。きっとその時、みんな首否するの。
だけど、好きでも無い作品に拍手なんて出来ないじゃない?
貴方達がそれに首を振って否定出来るのは、公共に傷を付けた時だけ。
そうでしょう?だって脳味噌の皺が同じ人間なんていないじゃない。細胞が同じだって言ったって、核が違けりゃ全部違うのよ。
組織を運営するのはボスの役割なのだから。
でも貴方は脳では無いのだから、ボスでは無くてリーダーになりなさいな。
あら失敬、私普遍的な事を言ってしまったかしら。
でもこれが人間なの。
私そろそろお洋服を着替えないと。
今日のお洋服は決まってるのよ。葉っぱドレス。
雨上がりの匂いを吸った葉っぱを着れるなんて、素晴らしいじゃない!
ところで、私は貴方が知らない言葉を言ったと思うのだけど、それは何処だったかしら?
また今度教えて頂戴な。