君は誰?
会社の機密情報のアトリ計画。それを大勢のいる前で話すなどあり得ない暴挙。
「お巡りさん? いやお前何を言ってるんだ? これは極秘事項だぞ! 」
大慌ての男の連れ。
「へへへ…… 実は関係資料を落としてしまいまして……
疑り深いお巡りさんが上司を連れてこいと言うものだから。済みません」
「馬鹿! しかもこんな大勢の前で! うわああ! 」
パニック状態の上司。
釣られるように左横田さんも騒ぎ始める。
「このストーカーを近づけないで! 」
誤解はいつまでも。
「ちょとカス君はストーカーじゃない! 」
「うるさい! あんたには関係ないでしょう? 」
「いいえ私はこの人の元彼女。関係あります! 」
俺のために争うのは止めてくれ。もうたくさんだ。
「うるせいな静かにしろって! ライブが聞こえないだろ! 」
こんな修羅場でもライブに熱狂の前田さん。
ブブンカは逃走を図るがとっ捕まる。
「おおもうバイバイの時間ね」
「まあいいじゃねえか。最後まで見ようや」
引き摺られていく哀れなブブンカ。
ライブって? ここ電器屋ではありませんよ。
もちろん大型ショッピングモールでもない。
お巡りさんに問うも笑うだけ。
前田さんたちに関してはお巡りさんたちも諦めてるらしい。
「あの…… 前田さん」
「おおやっぱりあんたも。お巡りさんも。二人とも一緒に見ようぜ! 」
だがもちろん今はそんな状況ではない。
修羅場を迎えている。どうしてこうなったかはよく分からないが。
結局一番手に負えないのは前田さんだったらしい。
迷惑トナラ―ここに籠る。
交番は混乱状態が続く。
まずは落ちついて左横田さんから解決を図ろう。
「あなたはストーカー? 」
震える彼女。演技には見えないので本気らしい。
「冗談じゃない! 何度言ったら分かるんです? 」
いつも勝手にストーカーに仕立て上げるんだから。
俺が何をしたと言うんだ? それは勘違いされるようなことをしたけどさ。
でもそれだって仕方ないことだったんだ。誰でも同じことをするはずだ。
「証拠を見せてください! 俺が何かしましたか? 」
「帰りの飛行機で偶然会って一目ぼれしたから後を付けてきた。間違いない! 」
決めつけが激しいので困る。いい加減にして欲しいよ。
「もう出会いが最悪だったのは認めます。それは俺のせいではなくてこの人」
上司を引っ張ってくる。
「おい何をする! 止めろってお前」
「この人がそもそもの元凶。あなたの席におしぼりを投げたんです。
俺はその尻拭いをしただけで。しかも帰りが一緒だったのも偶然。
方向も一緒だからそう見えるだけで。こう言うこともあり得るんです」
最初から順を追って説明する。これで納得するだろう。
俺たちは少々コミュニケーション不足だったのだろう。
「でも家まで駆けつけて嫌らしい目で見ていたでしょう? 」
うわ勘違いされるような言い方。
じっとこっちを見る無数の視線が突き刺さる。
「違う! 信じてくれ。ただ隣人が引っ越して来たんで挨拶に。
それが偶然あなたで正直最悪だと思ったのは事実です」
「嘘つきストーカー男! 」
あれだけ細かく説明したのに酷い言われよう。これでは時間の無駄ではないか。
「うむ。左横田さんの言う通りじゃな」
呑気に茶をすする爺さん。俺の味方をしないでまったくこの爺さんは。
「お隣さんは誰しも気になるものでしょう? 」
「しかしお主はお隣さんではなかろう? 」
「それは…… 」
「まったく困った奴じゃな。儂はお主に家を紹介した。
しかしお主は直前になって断ったろ? 」
「記憶にございません」
まるで政治家のような立派な発言。
風向きが悪くなるとどうしても使いたくなる伝家の宝刀。
「お前に家を紹介したのは覚えているじゃろ?
そこの娘さんと結婚するんだって舞い上がっていたわ」
「何のことだか…… 」
「カス君! 思い出してよ! 」
女性が感情に訴えかける。でも俺には彼女の気持ちに応えてやることは出来ない。
「記憶にありません」
「酷い…… どうして私を忘れられるの? 」
「うるさいな! 本当に君は誰なんだ? 邪魔しないでくれ! 」
「トワだよ忘れたのカス君? 」
忘れるも何もない。こんな女性知らない。言いがかりもいいところだ。
俺を貶めようとするとはたとえ女性であろうと許しはしない。
俺の味方をせずに本当に困った人たちだな。
恨みでもあるのかこいつらは?
続く




