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不法入国

ポートリアの入り口付近で茂みに隠れるシャイン一行

入り口の門には銃を持った兵士が2名立っていた

シャイン「ねぇ、何で僕たち隠れてるの?早く中に入ろうよ!」

突っ込むカイン「バカ!俺たちゃヌーナに指名手配されてるお尋ね者だぞ!堂々と正面から入国してどうすんだよ!?」

ジング「カインの言う通りだ」「あの兵士を見ろ、武器を携帯している」「大陸の中心部での争いを警戒してるのだろう」

焦るエミリー「じゃあどうすんのよ?」

ジング「ここはダメだ」「別の入り口を探そう」

ジングにある質問をするシャイン「ところで、前から気になってたんだけど……」「ジングさんたちは何をやらかして指名手配されてるの?」「正直、あなたたち三人が、あのロストリリジョンみたいなテロや犯罪を犯すとは思えない……」

そう言って、先日オデッサで起きた宇宙船衝突事件を思い出すシャイン

突然無言になる三人の賢者たち

ジング「我々が所属していた革命組織ガイアは、過激派のロストリリジョンとは違い穏健派だった」「だが、目的は彼らと同じく、世界連合ヌーナと、その陰に隠れている謎の組織の壊滅だ」

エミリー「謎の組織って?」

アチュラ「影の政府と呼ばれる秘密結社だ」「その存在は巧妙に隠されているが、我々三人は、この組織がヌーナを裏から操り、人類を分断して争いを起こすことで利益を得ていると考えている」

ジング「そう、おそらくエンリルもこの組織に所属している」「奴らは戦争をただのビジネスとしか考えていない」「人の命を弄び……自分たちだけ私腹を肥やしているクズ野郎共だ………!」

珍しく感情を露わにしたジングを驚きの目で見つめるシャインとエミリー

カイン「だが、俺たち以外のガイアのメンバーはその話を信じようとはしなかった」「あいつらは俺たちの主張をただの陰謀論だと決めつけた」「だから組織を抜けたんだ」

エミリー「で……でも、あなたたちもその影の政府っていう謎の組織が実在するって証拠を持っていないんでしょ?」

アチュラ「いや、それはジングが知ってる」

シャイン「え?」

ジング「俺は見た」「奴らのせいで、あいつも死んだ……!」

シャイン「あいつ?」

その時、ポートリアの入り口の門から言い争う声が聞こえる

町民A「いいだろ!通してくれよ!隣の村にいる家族に会いに行くだけだろ!」

町民B「そうよ!私たちはどこも怪しくないわ!銃を向けないで!」

門番の兵士A「分かってるぜ?お前らが怪しくないことは」「だがなぁ……今日はそんな気分じゃないんだわ」

町民A「そんな気分じゃない……?」

兵士B「あぁ、そうさ」「貧乏くせぇ下層民のお前らに、自由を与えるような気分じゃねえんだよ!」

無理矢理門を通り抜けようとする町民B「いいから通しなさいよぉ!」

その時、銃声が響いた

町民の女性は腹部から血を流して倒れた

泣き叫ぶ町民A「シーナぁ!!!」「お前ら、よくも………それでもポートリアを守る門番かぁ!!?」

兵士A「何一丁前に国を語ってんだよ!?」「お前ら貧困層エリアの連中に、国に意見できる権利は与えられてねぇんだよ!!」

兵士B「とっとと失せろ!!!」

茂みの中から息を潜めてそのやりとりを伺っていたジングたち

カイン「アイツら……!」

ジング「なるほどな……あの兵士の発言からすると、ここポートリアの国内は二つのエリアに分かれているらしい」「貧乏人が暮らす貧困層エリアと、金持ちが暮らす富裕層エリアに……」

シャイン「ちょっと、のんびり分析してないであの人たちを助けてよ!?」

シャインの抗議を無視するアチュラ「大抵こういう貧富の差が激しい国の政府が最も恐れているのは、国民の反乱」「ポートリア政府が町中に監視カメラやセンサーを設置しているのは目に見えている」

カイン「どうする?ジング」

不信な目で三大賢者を見つめるエミリー「まさかあなたたち……その情報を引き出すためにわざとさっきの言い争いを傍観してたの!?」

突然不安な表情になるシャイン「………?」

ジング「心配するな……どっちにしろ入国すれば奴らともやり合うことに……」

突然背後で音がして振り返るシャインたち

そこにはボロボロの身なりをした若い男性が立っていた

「あんたたち、俺についてきな!」「絶対にバレない秘密の抜け道を教えてやるよ!」


数分後、入り口の門から少し離れた場所で、国境沿いに置かれている金網へと連れてかれる一行

若い男性「ほら、見てみろ!ここだけ金網に穴が空いてるだろ?」「人一人は通れる大きさだ」「俺はいつもここを通って隣の村に商売に行ってるんだ」「安心しろ!この辺は沼地になってて、不法入国者も少ないからセンサーは置かれてねぇよ」

カイン「ち、ちょっと待ってくれ!親切にしてくれるのはありがてぇが……あんた誰だ?」

頷くシャインとエミリー

若い男性「いやなに、俺は昔から石や貝殻でアクセサリーを作るのが得意でね……さっき隣の村に俺自作のアクセサリーを売りに行ったんだ」「そしたらその村のじいさんばあさんにあんたらのことを聞いたんだ」「ポートリアの取り立てから村を守ってくれた英雄だってな!」

表情が明るくなるシャイン(きっと三大賢者のことだ!)

若い男性「だから、俺が代表してあんたらに何かお礼をしたかったんだよ」


助けてくれた理由に納得した一行は、金網を抜けて、ようやくポートリアの領内に入った

目の前には、タケトがいた村ほどではないが、やはりここもとても富んでいるとは言えないボロボロの町並みが広がっていた

よく見ると、それぞれの建物の窓から灯りが見えない

ジング「なるほど、ここは貧困層エリアだな?」

カイン「おいおい、ここって電気も通ってないのか?」

若い男性「あぁ、電力は全部富裕層エリアの連中が独占してるよ」「少しでも反乱の芽を摘むためだとさ」

エミリー「そういえば、監視カメラがどうとか言ってなかった?」

シャイン「えっ、まさか僕たちが不法入国したことがもうバレてるってこと!?」

若い男性「大丈夫だよ!」「さっき言った通り、このエリアには電気が通ってない」「監視カメラもセンサーもここにはないよ」

アチュラ「だが、それじゃあ連中はどうやってここの治安維持をしてるんだ?」

突然腕時計を見て慌てる男性「あ、悪い」「俺ちょっと用事があるんだ!」「じゃ、後は案内しなくても平気だな?」「適当にその辺の宿に泊まってゆっくりしてってくれ」「そんじゃ!」

町の暗がりに走り去る男性

カイン「何だったんだ?あいつ……」

ジング「とにかく、彼の言う通りまずは宿を探そう」

シャイン「ねぇ、もうすぐ陽が沈むからみんなでどっかで外食しよーよ!」

エミリー「美味しいお店があるようには見えないけど……」


その頃、町の暗がりで誰かに電話をしている先ほどの若い男性「えぇ、言われた通りにやりましたよ」「奴らは監視カメラやセンサーの存在に気づいていません」

電話の相手は資本家バラダイだった「よくやった……そのまま奴らを泳がせておけ」「もうすぐレムリアからレプティリアンの兵士が一人やって来る」「後はそいつに片付けてもらう予定だ」

若い男性「それで、例の件は検討してくれましたか?」

バラダイ「あぁ、その件についてだが、もう少しお前が国のために働いてくれたら考えてあげよう」

若い男性「あ……ありがとうございます!」

バラダイ「期待してるよ」

そう言って電話を切るバラダイ

携帯をしまい、夜空に浮かぶ満月を見上げる若い男性「ナツキ……」


第四話〈完〉




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