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第50話 楽しい乗馬デート フェンシング練習試合の事件

フェンシングは、社交界での重要な催し物として楽しまれ、貴族の間で伝統的に行われてきたスポーツでもあった。乗馬も貴族社会において非常に重要で、近頃は女性も馬術を学び、馬に乗る技術を磨くことが求められていた。


 


 そのため、エレガントローズ学院でも、新たな科目として馬術とフェンシングの授業が導入された。始めは尻込みしていた私だったけれど、いざ乗馬やフェンシングを始めてみると、とても楽しくてすっかり夢中になってしまった。




 乗馬はまるで冒険の始まりのように、私をわくわくさせた。馬の背に乗り自然の美しさを堪能しながら駆け抜けることは、私にとって世界を探索し、新たな発見をするための最高の手段になった。広がる空と走り抜ける風景が私に自由を感じさせ、新しい可能性を信じさせてくれたわ。




 また、馬とのふれあいは私に癒やしをもたらし、困難に立ち向かう勇気を養ってくれた。馬は私の意志を感じ、私はその動きに合わせてコミュニケーションを取る。馬の背に乗ると、私たちは互いを理解し、信頼し合っていることを感じとれたのよ。




 私はビニ公爵邸でも専用の馬を用意してもらった。私の馬は美しいクリーム色の毛並みのアンダルシアン種だった。この馬は高貴な風貌を持ち、しなやかで優雅な歩みを見せた。ライオネル殿下の馬は逞しい体つきで、漆黒の毛並みが太陽の光を反射して輝いていた。




 週末の休みにビニ公爵邸に帰ると、私たちは王城の近くにある森林まで馬を並んで走らせた。森林の中には幾重にも広がる小道があり、木々の葉は緑の濃さを増し、その鮮やかさと豊かな色彩に満ちていた。鳥たちの歌声も耳に心地よく響く。ライオネル殿下と私は、一緒に森の中を童心に返って冒険した。




 その日、私たちは自然の美しさを満喫し、二頭の馬は力強く駆け抜け、私とライオネル殿下は互いに笑顔で語り合った。森の中には小川が流れ、美しいオレンジや黄色のヤマユリや、可憐な白い花のヒメウツギが咲き誇っていた。




 「ソフィと一緒にいると、世界が美しいものに満ちて見えますね。森も鳥たちも私たちの愛を祝福しているようです。ソフィ、心から愛しています」




 時折、馬から下りて並んで歩くと、ライオネル殿下が私の耳元で、甘い言葉を囁く。この乗馬デートは私たちにとって、愛と親密さを育む特別な瞬間であり、私たちの心はおだやかな幸福に包まれたのだった。






 ☆彡 ★彡






 フェンシングを習い始めてしばらく経ったある日、エレガントローズ学院の庭園に特別なフェンシングリングが設けられ、生徒たちと教職員がフェンシングの試合を楽しむために集まった。観客席にはフェンシング好きの貴族たちや生徒の父兄も来ていた。誰もが、緊張と興奮に胸を膨らませて座っており、期待が高まっていた。




 私とマリエッタ様はフェンシング用の剣を手に取り、闘志に燃えた表情で向かい合った。私たちはフェンシングの楽しさに目覚め、切磋琢磨して技術を磨いてきたのよ。今日は私とマリエッタ様の練習試合を披露する日だった。試合が始まり、私たちは優れた技巧と素晴らしいフットワークを駆使して戦った。




 けれど、私が強力な一撃を放とうとした瞬間、私の手に握られたフェンシング用の剣が折れ、その破片がマリエッタ様の腕に当たり、怪我を負わせてしまった。観客たちは驚きで騒然となり、マリエッタ様は痛みに顔をしかめた。




 即座に試合が中断され、私はマリエッタ様に駆け寄り謝罪した。けれど、マリエッタ様の腕は予想よりも遙かに酷い傷を負っていたのよ。私は破片を注意深く観察し、剣が明らかに切れ味の鋭い刃物に交換されていることに気づいた。


 


 ニッキーが即座に『傷癒やしのエリクサー』を調合し、マリエッタ様の傷は治療できたけれど、観客席にいたビレル侯爵が私に向かって叫んだ。




「ソフィ嬢は鋭利な剣にすり替えてまで、この試合に勝ちたかったのですか? グレイトニッキーがいなければ、あなたは傷害罪で地下牢の住人になっていました。このような邪悪な女性は、ライオネル殿下の婚約者に相応しくありません!」




 周りにいた貴族たちも騒ぎ出して、私は身に覚えのない罪を着せられた。観客席にはライオネル殿下もいて、もちろん私を庇ってくださったけれど、ビレル侯爵はさらに私に言い放った。




「ライオネル殿下の婚約者とはいえ、たった今、マリエッタ嬢に深い傷を負わせたのです。マリエッタ嬢の傷が治ったからといって、犯した罪は消えますまい。さぁ、公正な裁きを受けなさい!」




 ビレル侯爵は大臣の一員であり、社交界でも著名な重鎮の一人だった。そして、ビニ公爵とボナデアお母様はメドフォード王国の外交使節として、先日、西に位置するヴァンダーウォール国に旅立ったばかりだった。




「タイミングが良すぎるな」




 ライオネル殿下は私を背に庇いながら、ビレル侯爵を睨みつけたのだった。

※もうひと波乱あります。ソフィは辛い目にはあいません。次回の更新で解決しますので、ごめんなさい。なぜか、この展開が脳内に出てきちゃって(ーー;)


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