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第43話 かわいさ余って憎さ百倍 カメーリア視点

 私はライオネル殿下の看病をして、徐々に信頼と愛を勝ち取っていくはずだった。でも、彼は感謝の気持ちを表すだけで、いつまで経っても私を恋愛対象には見てくださらなかった。




「いつも、申し訳ありません。私の世話をしてくださるのはありがたいのですが、もっと他の者に任せてください」


「私が世話をしたいのです。私はライオネル殿下をお慕いしております!」


「私はメドフォード国の第二王子です。王国の繁栄と王位継承に対する責任を重く受け止め、国家の安定と利益を優先する立場にあります。ですから、カメーリア殿下のお気持ちはありがたいが、私個人の判断でそのお気持ちに応えることはできません」




 なんて堅物なの!


 ソフィという女性の存在は忘れているはずなのに、第二王子という立場から拒絶してきた。


 


 私はアルケムスを訪ねた。今回の記憶喪失の件にお兄様の関与があったことは、後から知ったことだったけれど、とても良い作戦だと思った。でも、このままでは駄目よ。




「おや、まぁ。今度は妹姫ですか? なにがお望みですか?」




「ある男性の心が欲しいのよ。アルケムスのエリクサーは最近の記憶が消えるだけで、私に好意を抱かせる成分が不足しているわ。私の虜になるエリクサーを作って」




「虜ですか? それはまたずいぶんと強い効き目のものをお望みですね。一時的なものなら作ることはできます。ですが、それは短期的な感情の強化に過ぎず、持続的な関係を築くためには、本物の愛情やコミュニケーションが不可欠です。彼がカメーリア殿下に全く好意がない場合、効果は約10日後に薄れるでしょう」




 10日も効けば十分だわ。


 絶対に、ソフィには渡さない。




 ライオネル殿下の帰国間近になり、私は焦っていた。メドフォード国からは医師団や多くの医療看護人たちが派遣された。以前に比べて、私がお世話する機会はめっきり減ってしまった。




 王宮に持ち帰り、早速、それを飲み物に混ぜてみたけれど、親しく話をしたり側に寄りそうまではできる。けれど、それ以上は絶対に進展しなかった。




「お金だけ取って能なしの錬金術師ね! 彼は私を抱き寄せてもくれないわ。キスもできないのよ!」




 私は再度アルケムスの屋敷を訪ね文句を言った。




「その男性は元々カメーリア殿下に対して嫌悪感を抱いていたか、簡単には女性に好意を持たない慎重な性格の男性だったのでしょうね。エリクサーといえど、限界はあります」




 男性がもともとその女性を嫌っていた場合、既存の感情がエリクサーの効果に影響を与える可能性があるのだそうよ。また、個々の性格や精神的な強さにも影響を受け、男性がしっかりとした考えを持つタイプである場合、自己制御力が高く、感情のコントロールに長けている可能性があるため、エリクサーの効果は薄れるらしい。  




 記憶まで失わせることができるのに、恋の虜にできないなんておかしいわ! 




 アルケムスに因れば、私は妹のような親しい存在にはなれるけれど、恋人になって彼を虜にすることは不可能だという結論だった。私に対して、どんな錬金術師のエリクサーを用意してもなびいてくれないライオネル殿下に、無性に腹が立った。




 私のものにならないのなら、うんと辛くて苦しい目にあえば良い。


 そうだ、彼の恋を邪魔してやろう。


 


 ライオネル殿下が帰国する際、彼の体調を心配するふりをして同行することを願い出た。メドフォード国に着いても六日間ほどは、エリクサーの効き目が持続する計算だった。




 メドフォード国に着いたら、常にライオネル殿下の側に寄り添うようにいてやろう。ひと月も待っていた男が他の女性を連れて、六日間も心を許しているようなそぶりを見せたら、ソフィは不信感でライオネル殿下を疑うようになるはずよ。




 ライオネル殿下はソフィに心から惹かれていたようだ。だとしたら、記憶をなくしてもきっとソフィに恋をする。


でも、ライオネル殿下に幻滅したソフィは、絶対に彼を受け入れることはない。




 ざまぁみろだわ!


 これはライオネル殿下への罰だ。




「なるほどな。ならば、ライオネル殿下の裏切りに傷ついたソフィを、ぜひ我が国に招待するとしよう。ライオネル殿下に失望した彼女の心は、この私が慰めてあげよう」




 私の計画を聞いたお兄様は、にやりと笑った。






☆彡 ★彡







 ここはメドフォード国。私は今、地下牢に閉じ込められている。カロライナ王国の天才錬金術師アルケムスより、さらに実力のある錬金術師がメドフォード国にいるなんて思わなかった。




 彼の名はグレイトニッキー。伝説級の錬金術師だそうだ。アルケムスはグレイトニッキーに敵認定されると知っていたのなら、こんな仕事は引き受けなかったと後悔していた。




 私とお兄様が引き起こした一連の問題は、メドフォード国からの宣戦布告に繋がった。だが、戦争になることはなかった。カロライナ王国の主要な貴族たちや騎士達が、私達のしでかした事件を聞きメドフォード国と戦うことを放棄したからだ。




 これから私はどうなってしまうの? 



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