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第34話 ルドレッド王視点(カロライナ国王)

私はルドレッド・カロライナ。カロライナ王国の国王になって間もないが、大いなる野望を持っていた。私の望みはこの国を強大な国へと変え、国家の力と威信を高めることなのだ。




 カロライナ王国の繁栄は私の力を示す手段であり、私の使命はこの国を国際的な舞台で強力な存在に育て上げることだ。そのために高官や外交使節団を諸外国に向かわせ、さまざまなことを学ばせようとしていた。




 妹のカメーリアも私の意図を知り、私を支えるという健気な気持ちを持ち、彼らと視察に向かったはずなのだが・・・・・・




「未来の夫をメドフォード国で見つけた? いったい、それは誰なのだ?」




 いつもは聡明で思慮深いと思われていたカメーリアが、突然理解しがたい言葉を口にした。彼女は一目惚れをし、絶対に自分の夫にしたいという男性を見つけたと言ってきた。




「その男性はメドフォード国の第二王子で、名前はライオネル殿下です。彼は非常に芸術的な才能に恵まれ、風貌も美しい方ですわ」 




 メドフォード国の第二王子か・・・・・・身分については申し分ない。芸術面の才能が豊かであるならば、我が国の文化と芸術の発展に大いに貢献できるだろう。我が国の評判を高め、外交的な面でも利益をもたらす可能性がある。




 また、彼は兄である王太子と非常に仲が良いのも伝え聞いていることだった。メドフォード国の王族は皆仲が良く平和主義者であることは有名だ。彼がカメーリアの夫になることで、王家同士の結びつきが強化され、彼の存在が我が国の政治的な安定に寄与することは期待できそうだ。




 それに、彼の存在は我が国の文化と結束に貢献し、政治的な安定と市民の幸福を促進するかもしれない。カロライナ王国にとって、彼を家族の一員として迎えることは、悪くない選択肢だと思った。




「ふむ。なかなか良い男を選んだな。しかし、ライオネル殿下の身辺を詳しく調査させるゆえ、少し待っていなさい」




「お兄様。ぐずぐずしていると、ライオネル殿下をビニ公爵夫人の娘に取られてしまいます。ソフィという女性でビニ公爵夫人の連れ子なのだと思いますが、身の程知らずなことに、ライオネル殿下と婚約寸前の仲らしいのですわ」




 高官が聞きかじった噂を、自分の考えも含めて熱心に話すカメーリアに、私は口を閉じるようなジェスチャーを見せた。




「私は噂や軽率な仮説に基づいて、重要な判断を下す気はない。ライオネル殿下の身辺調査をさせる。噂ほどあてにならないものはないのだよ。詳細がわかるまで、大人しくしていなさい。わかったね?」




 私とカメーリアは王宮内のサロンで語らっていたのだが、私はテーブルに置いた美しい呼び鈴を鳴らした。中庭にいた人影が動きだし、次の瞬間には私の目の前で臣下の礼をとっていた。




 この呼び鈴は特殊な周波数や音の振動を利用して、彼らの優れた聴覚に合わせて作られた。人間の聴力範囲を超えた超音波の周波数を用いており、建物内で鳴らされても外部に伝わり、中庭にいた彼らの耳にも届くのだ。




「ルドレッド国王陛下。お呼びでしょうか?」




「あぁ、調べてほしいことができた。メドフォード国の第二王子、ライオネル殿下のことを調べよ。彼の王族内での立場や貴族達との政治的つながり。個人的な趣味と特技や嗜好品。人生においてなにを大事と捉えているか等の価値観。国内外での評判と人脈などもだ」




「お兄様、獣人の影部隊を使うのですか? ソフィという女性は、そのような脅威にとらえるような相手とは思えませんわ」




「カメーリア。本当にライオネル殿下が欲しいのなら、彼の好みや趣味、興味が何か。そして理想の女性像を知る必要がある。しっかりと研究するのだ」




 カメーリアは考えが甘すぎる。どのようなことも必ず下調べをし、傾向と対策なくして成功はしない。ライオネル殿下が賢く見所のある男であればあるほど、こちらが念入りの作戦を立てていかねば、カメーリアになびいてはくれまい。




「私がライオネル殿下を調べさせていることは気取られるなよ」




 獣人たちにそう告げると、彼らは音も立てずに、任務を遂行するために散っていく。




 これは単なるカメーリアの恋の話ではない。ライオネル殿下の価値がそれに見合うものであれば、カロライナ王国としては国の名誉をかけてでも彼を取り込みたいのだから。

数多くの小説の中から拙作をお読みいただきありがとうございます。

少しでもおもしろかったよ、と思っていただけたら、是非ブクマや☆で応援いただけると、執筆の励みになります。

※誤字報告をいただき、ありがとうございます。

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