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第31話 養子認定審議会の次にある試練?

 元お父様達が連行された後、私はホッとしてボナデア伯母様の横で、涙を流していた。




「泣くことはありませんよ。これからがソフィの本当の人生ですからね」




 その涙は長い間抱えていた不安や緊張から解放された喜びからだった。両親の愛が欲しくて膝を抱えて泣いていた私は、メドフォード国に来てエレガントローズ学院で学び、ボナデア伯母様達から愛をいただいて、やっと自分自身を解き放つことができた。




「おめでとう!」ライオネル殿下やカーマイン王太子殿下、ミラ王女殿下が、まるでお誕生日のお祝いのように、祝福の言葉をかけてくださった。




 国王陛下夫妻もにっこりと笑いかけてくださって、王族の方々がこうして応援してくださることがありがたかった。もちろんボナデア伯母様とビニ公爵様も満面の笑みだった。




 その晩は目標を達成した充実感に浸っていたけれど、なにやら私には新たな試練が待っているようだった。それはボナデア伯母様の提案から始まった。




「さて、ソフィは私の姪とはいえ、ラバジェ伯爵令嬢ではなくなりました。厳密に言えば、あなたは平民になってしまったのよ? そこで、楽しい提案があります。ソフィ、私の娘になりませんか?」




 とても驚いたのと同時にすぐに深く頷いた。




「本当にそのようなことができるのですか? わたし、ボナデア伯母様の娘になりたいです!」




「まぁ、素敵! 早速『養子認定審議会』を開きましょう。審査がありますけれど、ソフィなら大丈夫です」




 カサンドラ王妃殿下が、華やかな声で笑いながらおっしゃった。




 養子認定審議会? そのようなものがあるなんて知らなかった。




 アルフォンソ国王陛下が私に説明してくださった内容は次のようなものだった。




 貴族は社会的責任を果たし、王国や社会全体の安定に貢献するために養子を選び、その選択を精査する必要があること。


 養子認定審議会は王国の安定と繁栄を促進するためのものであると位置づけられ、養子の出自、家族の背景、教育、価値観などを検討し、国王陛下も交えて、養子を迎えることを許可するかどうかを判断する機関であること。




 このような説明を受けた私は、少しだけ不安になった。自分の価値が試されることになるのだから緊張する。


  


「王家の血筋を引き継いでいないソフィを、ビニ公爵家の養子にするのは困難なのです。けれど、私個人の養子ならば大丈夫。それほど問題にはならないでしょう」




 ボナデア伯母様は私を勇気づけてくださった。メドフォード王国の王家の力は強大ではあるけれど、独裁国家ではない。重要なことは王家と三大公爵家や大臣達も交えて協議されることが厳格に定められているのだった。


 


☆彡 ★彡





 数日後、アルフォンソ国王陛下と、三大公爵家のビニ家、ヴァルダモール家、グレイヘイヴン家が出席した審議会が開催された。その場には大臣の方々もおり、主だった貴族達もほとんど出席されていた。それだけ、ボナデア伯母様の社交界における地位と影響力が高いということだ。




 ボナデア伯母様は私を堂々と紹介し、私の出自とすばらしい性質について語った。二大公爵家の方々から質問を投げかけられたけれど、すらすらとよどみなく答えていく。




 私は緊張しながらも、しっかりと顔を上げ背筋を伸ばし、ボナデア伯母様のように振る舞った。自信に溢れ落ち着いた女性に見られるように頑張ったのよ。二大公爵からの質問には、自身の価値と社会的責任についての深い理解を示したつもりだ。




 私の学院での学術成績は知識と教養の程度を示す指標となった。優れた知識と教育は高貴な出自の証として尊重され、知識の深さや学術的な成果は私の人柄に対する肯定的な評価につながった。




 学院でのクラスメイトからの評価は、私の社交的な性格や人間関係に関する情報を提供するものだ。私が友人達に対して協力的で友好的であるかどうか、他の生徒との関係が円滑であるかどうかが注目された。友人からの支持と信頼は、私の人柄に対する好意的な評価に影響を与えた。




 審議の後、主要貴族とアルフォンソ国王陛下は一堂に会し、私とボナデア伯母様の養子縁組みを承認することを決定してくださった。




 その夜は王城に泊まり、国王陛下夫妻やライオネル殿下達と夕食をいただいた。もちろん、ボナデアお母様もビニ公爵様も一緒だ。私は養子になった瞬間からボナデア伯母様をお母様と呼んでいる。




 ボナデアお母様は私にそう呼ばれるたびに、顔を輝かせて弾む声で応えてくださる。ただ、ビニ公爵様は悲しげな表情をしていた。自分もお父様と呼んで欲しいのに、と残念がっていらっしゃった。いくらビニ公爵様が望んでも、私はビニ公爵家の養子にはなれない。




 私にはメドフォード王国の王家の血が一滴も流れていないからだ。ビニ公爵家は王弟であるビニ公爵様の血筋を象徴するものなので、私はビニ公爵令嬢にはなれないのよ。




「ビニ公爵令嬢にはなれなくても、次期ビニ公爵夫人になることはできますわ。ソフィ、ライオネルのために、頑張ることはできて?」




 王宮の大食堂は巨大なシャンデリアが天井から吊るされ、クリスタルの輝きが部屋全体にきらめきをもたらしていた。その光がテーブル上の贅沢な食器やガラスに反射し、部屋全体を美しく照らす。




 長大なテーブルに新鮮な生牡蠣が氷の上に盛り付けられ、ミニョネットソースと共に供された。ミニョネットソースは、玉ねぎのみじん切りと酢を基にしたシンプルなソースで私も大好きなものだ。




 カサンドラ王妃殿下は優雅にフォークを使い、それをお召し上がりになりながらも、私にお声をかけてくださった。




 ライオネル殿下のために頑張る? なにを頑張れば良いのかしら?




数多くの小説の中から拙作をお読みいただきありがとうございます。

ブクマや★評価をいただきありがとうございます。

少しでも楽しんでいただければ嬉しいです!

※誤字報告をいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] いい制度ですね。よくある乙女ゲーヒロインが養女(なり替わり)を防ぐのに使えそう
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