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星が降ってきます!


「ギャハハハハ! それでそのまま一晩中ぶっ倒れてたってのかよ!? まさかテメェの歳でコウノトリをマジで信じてやがったとはなァ!?」


「だ、黙れ黙れ黙れえええええッ! あのようなことが真実などと……私はまだ疑っているのだ! だ、大体その……男の子とそんなことするとか……おぎゃ……ッ! あ……あまりにも廉恥すぎるだろうッッ!? 本当にそんなことで赤ちゃんが出来るのかッ!?」


「はわぁ……っ。わ、私もこんなこと全然知らなかったよぅ……。私とエステルが子供の頃に読んでた〝あの絵本〟って、全部嘘ばっかりだったんだね……はわわ!」


「僕も〝こういうこと〟について詳しくはないんですけど……もしかしたらハッピー様は、僕とエステルさんのことを心配してこの本を……」


 翌日。


 既に明るくなった早朝の砂浜で、目覚めた私は羞恥と混乱とやるせなさと……とにかく諸々のせいで顔も上げることが出来ずにいた。


 だってそうだろう!?


 あ、あれが世界の真実だと!?

 アレで赤ちゃんが〝バブバブー!〟するだと!?


 じゃあ、私もいつか……いつかユレルミとあんな……あんな!?


 あ、あああああああああああ!?


「ぴゃあああああああああああああ!? どうしたらいいどうしたらいい!? この真実を知った私はこれからどうすればいいのだっ!? なぜ父上も母上も私にこの真実を教えてくれなかったのだ!? なぜっ!?」


「さあな? どうせテメェの親のことだから、忘れてたとかそーいうテキトーな理由だろうぜ……って、テメェ騎士だろうが!? 俺みたいな底辺と違って学校行ってたんじゃねぇのか!?」


「むぅ……私もそう思うのだが、なぜか授業の記憶が私には殆ど残っていないのだ。体育と図画工作……あと国語はちょっぴり覚えているのだが……もしかしたら寝ていたのかもしれないっ!」


「自業自得じゃねぇか!?」


 なんということだ!


 このエステル・バレットストーム……ここまで学校の授業を蔑ろにしたことを後悔したのは初めてだ!


 こんなことになるなら、もっとちゃんと授業を受けておくのだった……!


 しかし今さらそんなことを後悔しても遅い。

 ジローに思いっきり馬鹿にされ続けるのは癪だが、大事なのはこれからなのだ!


 私は今もぷるぷると小刻みに震える心に気合いを入れると、なんとか今後のことに意識を振り向けようとした。すると――。


「でもさ、エステルとユレルミ君はとーーっても仲良しでラブラブなんだから、別にそんなに恥ずかしがらなくてもいいんじゃないの? ユレルミ君なんていっつもすっぽんぽん……だし?」


「それは……」


「それにエステルって、ユレルミ君とお手々を繋いだり、ぎゅっぎゅしてるときっていっつも凄く幸せそうな顔してるよ? この本に書いてあることも、二人にとっては自然なことなんじゃないかな……」


「あ……その! エステルさんが嫌なら、僕もこういうことをするつもりは……っ」


「う……!? ま、待ってくれユレルミ! 違うのだ、私は別に――!」


 バラエーナとユレルミのその言葉に、私は咄嗟に口を開こうとして固まる。


 別に?

 別になんだ?


 嫌じゃない?

 ユレルミとそういうことをするのは……嫌じゃない、のか?


 と、というか……!?


 そこまで考えた私の脳裏に、オータムとの戦場でほぼ全裸の兵士たちが気軽にユレルミと談笑していた光景が浮かぶ。


 そうだ。


 私もすっぽんぽんなら、ユレルミの貧乏神の力に抗う必要もない。

 思いっきりユレルミの手を握ることも、ぎゅっぎゅすることも出来るのだ。


 そして、ハッピー様の力のおかげで一度だけ味わったユレルミとの〝ぎゅっぎゅ〟のとろけるような心地よさ……。


 も、もしや私は〝したい〟のか……?

 私は、ユレルミとあんなことやこんなことを――!?


 だがその時だった。


 ピンク色のふわふわな世界を漂っていた私の思考は、突然の声と衝撃によって引き戻されたのだ。


『――バラエーナ! 皆さんを連れて空へ!』


「パパっ!?」


「な、なんだこりゃあ!?」


「空から……火の玉が降ってくる!?」


「っ!? こっちだ、ユレルミ!」


 それは、どこまでも広がる青空から降り注ぐ星の雨だった。


 私たちのいる島を中心にして次々と激突した火の玉は、辺り一帯を軽々と吹き飛ばし、巨大な津波と爆発、そして凄まじい衝撃波を巻き起こして見せた。


『みんな大丈夫だったっ!? 怪我はない!?』


「私たちは無事だ! ユレルミも櫓と一緒に私が背負っている!」


「しかしいきなりなんだこりゃあ!? 星が降ってくるなんざ……数年前にスプリングの姫さんが逸らしたって言う話以来じゃ……」


「―――あの星もオレが降らせた。あの時は福の神に逸らされたけど……ここに福の神はいないだろ?」


「!? 何者だ!?」


「貴方から感じるその〝力〟……もしかして……?」


 荒れ狂う突風と火傷しそうなほどの熱。


 バラエーナやバラエーナのご両親のおかげで一足先に空へと逃れた私たちの前に、なんと生身で空に浮かぶ〝一人の少年〟の姿が現れる。


 伸び放題の白い髪に赤い瞳。

 全身を太い鎖でグルグルに巻かれた異様な姿。


 年の頃は恐らくユレルミやハッピー様と同じくらいだろう。

 そしてその少年から放たれる力は、私が知る力にとても良く似ていた――。


「オレはミセリア……ウィンターの疫病神。世界を不幸に沈める前に、貧乏神と〝友だち〟になりにきたんだ」


 


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