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僕を知ってるんですか?


『僕たちの島にようこそ。僕の名はフォカ。バラエーナのお父さんだよ』


『私はベスティア。バラエーナの母です。バラエーナが色々とご迷惑をおかけしましたね』


「お、おおおお!? 飛ぶぞ、ユレルミっ!」


「わぁっ!?」


「で、デケェ……ッ! バラエーナよりもっとデケ……アバーーーーッ!?」


「わーい! パパ、ママ! ただいまー!」


 突然の声に振り向いた私をまず襲ったのは、ゆっくりと押し寄せる巨大な波だった。


 私は咄嗟に櫓ごとユレルミを抱えて後方へと跳躍。


 波の向こうで全裸のジローが海の藻屑になったような気もしたが、私の視線はさらにその先に現れた巨大な〝二頭のドラゴン〟に釘付けとなった。


 そこには、私たちが今いる島と殆ど同じ大きさに見える赤と青の巨大なドラゴンが、頭部と上半身だけを海から突きだしていたのだ!


 それは、私がかつて倒してきた有象無象のドラゴンなど足下にも及ばない。

 まさしく本物のドラゴンと呼ぶに相応しい、堂々たる姿だった。


『ははは、驚かせてごめんよ。初登場はやっぱり派手にしようと思ってね』


『もう、あなたったら本当に悪戯がお好きなんですから。ごめんなさいね、すぐに小さくなりますから』


「ぶはぁっ! 死ぬかと思った……って、おいバラエーナ! お前の親父とお袋がこんなデケェドラゴンだなんて聞いてねぇぞ!?」


「だから言ったじゃん。私のパパとママはとっても長生きだって! ドラゴンは〝歳を取れば取るほど強くなる〟から、パパとママもすーっごく強いし、偉いドラゴンなんだよ!」


「すごい……っ。バラエーナさんって、本当にすごいドラゴンさんだったんですねっ」


「なるほどな……。この両親から生まれたからこそ、バラエーナも他のドラゴンにはない力を備えていたというわけか。これならば、本当に疫病神のことも教えてくれそうだっ!」


 なんとか砂浜に辿り着いたジローに向かって腰蓑と服を投げ渡すと、私はそのままユレルミを乗せた櫓をゆっくりと地面に降ろす。


「よしっと……これくらいまで小さくなれば話もしやすいかな? 改めて、バラエーナを助けてくれて本当にありがとうっ! この子はこんな性格だから、一度言い出したら聞かなくて僕たちも困ってたんだ」


「お初にお目にかかるっ! 私はスプリングの筆頭騎士……じゃなくて……えーっと……? と、とにかくエステル・バレットストームだ!」


「ユレルミです」


「ユレルミたんを守る愛の戦士! ジロー・ペロペロだ! よろしくしてやるぜッ!」


 小さくなりながら目の前までやってきた父上と母上に、私たちは元気よく挨拶した。たとえドラゴンが相手でも、挨拶は円滑なコミュニケーションの基本だからなッ!


「初めまして、人間の皆さん。ドラゴン同士では、たとえ親族であっても互いに干渉することは良くないとされているのです。〝竜殺し〟として名を馳せるエステルさんがバラエーナ討伐に向かったと知ったときは、とても心配していました」


「なんと!? 私のことも既にご存知だったとは……!? では、もしや私たちがここに来た理由も……!?」


「もちろん知ってるよ! 神のスキルをなんとかする方法を聞きたいんだよね?」


「決して同時には現れなかった三つの神のスキルが、同じ時代に存在してしまうなんて……。これも、今は亡き神々のご意志なのかもしれませんね……」


 私の言葉にバラエーナの父上と母上は大きく頷くと、私の後ろで櫓から頭を覗かせるユレルミの方へと視線を向ける。


「そして君が貧乏神……ユレルミ君だったね。初めまして、君と会えてとても嬉しいよ」


「こうして見ると、〝あのお方〟に本当にそっくりなのですね……。実は私たち夫婦は、かつて健在だった頃の貧乏神様……当時は〝循環の神〟と呼ばれていたあのお方に、ずっとお仕えしていたのです」


「えっ……?」


「貴方たちが、実際に神に仕えていたと……!? い、一体どれだけ長生きなのだ!?」


「はははっ。それほど昔の話じゃないよ。ざっと五万年くらい前かな? その頃はまだ人間も生まれたばかりで、僕たちドラゴンは三柱の神様の手足として、新しい世界を作るお手伝いをしていたんだ」


「ご、五万年だぁ!? 」


「えー!? そうだったの!? パパもママも、そんなお話し全然してくれなかったじゃない!」


「この世界はとうに神々や私たちドラゴンの手を離れました。この世の行く末は人が決めるべき……少なくとも私たちのような古いドラゴンは、皆そう考えていますから」


 言いながら、二頭のドラゴンはゆっくりとユレルミの前に歩みを進める。


「あ、あの……? あまり僕に近づかない方が……」


「大丈夫だよ。さっきも言っただろう? 僕たちはずっと君と同じ力を持つ神様に仕えていたんだ。むしろ久しぶりにこの力に触れることが出来て、とても嬉しいくらいなんだよ!」


「そしてユレルミさん。貴方が神の力による混乱を収めたいと願うのなら、それは正に貴方次第なのです。幸福の神と不幸の神……この〝二者のバランスを保つ〟ことこそ、貴方に宿る貧乏神の……循環の神の役目なのですから」


「貧乏神の、役目……?」


 その言葉に、目を見開いて驚くユレルミ。


 バラエーナの父上と母上は立ちすくむユレルミの目の前まで進むと、まるでずっとそうしてきたように、ユレルミに向かって自然な所作で頭を下げた――。

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