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南の島に来ました!


「ほらほら! あそこが私のパパとママの住んでる島だよ!」


「わぁ……すごく大きな島なんですね。僕、こんなに大きな〝湖〟を見たの初めてですっ」


「そうか、ユレルミは〝海〟を見たことがないのだな! この水浸しの一帯は海と言って、川や湖とは違って果てがないのだ! 私も一度海の果てが気になって一ヶ月ほど海の上を走ってみたのだが、ひたすら水浸しだった!」


「果てのない、水浸しの……? すごい……なんだか感動ですっ!」


「そうそう! ここはスプリングでも一番南側。この海を抜けた先にはサマーがある! サマーは小さな島ばっかりの国だが、一年中あちぃし食う物も山ほどある楽園だって聞いてるぜ!」


「パパとママは寒いのが苦手なの! 私は寒い方が好きなんだけどね! じゃあ、降りるからしっかり掴まってーっ!」


 王都を脱出して二日。


 疫病神への対処法をバラエーナの両親に教えて貰うべく、私たちはスプリングとサマーの国境ギリギリに位置する諸島地帯までやってきていた。


 城から脱出する際に愛用の双剣以外は何もかも置いてきてしまったのだが、ここまで南に来るのであれば、元より鎧などは暑くて邪魔にしかならなかっただろう。


 どこまでも続く青い空と青い海。

 そしてそこに点々と浮かぶ緑色の草木に覆われた島々。


 そしてその中でも一際大きな島めがけ、バラエーナは私たちを乗せたまま一気に降下していった――。



 ――――――

 ――――

 ――



「ふぉおおおおおおお!? すげえ、凄すぎるぜ! こんな海を前にしたら、俺もすっぽんぽんで泳ぎたくなってきたッッ!」


「んーーーーっ! 久しぶりだから気持ちいいー! エステルとユレルミも泳ごうよー!」


「そうだな! ちょっと待っててくれ、今準備する!」


「すみませんエステルさん、いっつも僕を運んでくれて……」


「はっはっは! 気にしないでくれ! しかししかし……ユレルミのすっぽんぽんは、この南の島ではむしろ涼しそうでいいなっ!? このような暖かい場所の方が、君が平和に生きていくのにはいいのかもしれない!」


「あははっ。そうかもしれませんね」


 バラエーナの両親が住むという島に上陸した私たちは、島を覆う密林ではなく、周辺を囲む白い砂浜の上をはしゃぎながら歩いていた。


 なんでもバラエーナの両親は水属性らしく、普段はこの島を中心とした海中に住んでいるのだという。


 すでにドラゴン同士でしか分からない合図は送っているというので、私たちはバラエーナの両親が現れるまで、あまり馴染みのない砂浜と、海から押し寄せる波を満喫していたというわけだ。


「そういえば……エステルさん、ちょっといいですか?」


「ん? なんだ、ユレルミ」


「今思い出したんですけど……僕たちがお城から抜け出すときにハッピー様から頂いた本って、もう読みましたか?」


「ん……? あ、あああああああ!? そういえばそうだったっ! あの日からずっと激動すぎて、あの本の存在を今の今まで忘れていた!」


 ユレルミを運ぶための櫓を砂浜に降ろし、万が一のときのための葉っぱの換えの枚数を数えていた私に、ユレルミは唐突にそう尋ねてきた。


 あの日、ハッピー様の手引きで城を脱出したとき。


 隠し通路に飛び込む私とユレルミに、ハッピー様は一冊の本を渡してくれた。

 あのような状況下で託すような書物だ……きっと〝この世界の命運を左右する〟ような、貴重な書物に違いない!


「くっ……! そのような重要な書物の存在を今の今まで忘れるとは……このエステル一生の不覚っ! たしか櫓の中に入れておいたはず……申し訳ないのだが、ユレルミも一緒に手伝って貰えるか? こうして櫓に私が触れていれば、君が本に触っても平気なはずだ!」


「はいっ! じゃあ、僕は上の方を探しますねっ」


 二人でそう頷き合うと、私とユレルミは手分けして櫓の中にあるはずの本を探した。


 実は、このユレルミ用の櫓は今や私やジローの荷物も入った巨大なバッグになっている。


 私の換えの服や食料も入っているし、あのハッピー様から頂いた本も、無くさないようにこの櫓の中にしまっておいたはずなのだが……。


 すると……。


「あっ! あった、ありましたよエステルさ――……。え……? こ、これって……!?」


「おおっ! 良かった、ありがとうユレルミっ!」


「は、はわわ……! はわわわ……っ!? こ、これ……この本……っ!」


「ユレルミ?」

 

 だがどうしたことだろう。

 ハッピー様の本を見つけたというユレルミの様子がなんだかおかしい。


 まさか……それほどまでに恐るべきなにかが書かれていたというのだろうか!?

 ならば、私も早く内容を確認しなくてはっ!


 櫓の中から抜けだし、顔を上げた私はそのままユレルミの元に向かおうとした。だが、その時――。


『お帰りなさいバラエーナ。ちゃんと帰ってきてくれて、ママとっても嬉しいわ』


『友だちを作ると言って出て行ったときはどうなることかと思ったけど、どうやら元気そうだね。お帰り、バラエーナ!』


 私がユレルミの元に辿り着くよりも早く、イマイチ距離感の掴めない、海の底からとも、耳元から響くとも取れるような穏やかな二つの声が、私たちの耳に届いたのだった――。



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