夢の呪い
路地は続くよ何処までも
この道の先が何処まで続いているのか
自転車で確かめたことがある
立ち入り禁止の妖しい家があった
さては一家心中
背中を押されて
振り返ったら誰もゐない
そんなことが何度もあった
嗚呼、夢は
おどけて通りでタップダンスを踊っている
もうゐない、過去の君の姿を追いかけて
逢魔が時の宿場町はどこまでも闇が深い
ほら、あそこの天井を見てご覧よ
昔のお侍さんが人を切った血しぶきが
まだ黒く残っているんだよ
その夜布団の中で天井を眺めていると
確かに黒い影が
血の影だと思ったら大きな軍曹蜘蛛だ、勘弁
便所に行く途中、仄かな青白い
人影がうつむき加減に立っている
風が吹けばかたかたと部屋が軋む
父ちゃんいつまで旅してるの?
懐の水泳帽子が夏を旅したいと云う
夏は、ともしび。幽かな夢
冬の草原を巨大な月が睨みつける
ああ、いつか僕らはひとりになってしまうから
心の鉄を溶かす様に
月光に照らされて、鉱石を探すのだ
旅人のコートの中で、風が吹いている
とんからり、とんからり
糸車は美しい娘の血を吸って真っ赤に染まった
夢の中なんだよ
街には誰もゐない
私だけが、家族を探して旅をしている
お嬢さん、お気をつけなさい
枕元で、三回鈴の音が聞こえたら
霊柩車が迎えに来るから
そっと、風車を仏壇に
旅人のコートの中から赤い林檎
青い壜の底の眼玉は物を云うか
先生、銀河鉄道でコックリさんをやっていいですか
疑問は答え公式は抽象
セーラー服の娘のリボンがやけに赤く光っている
宿場町の影が蠢いている
夕陽が格子戸を照らし隙間からシャボン玉が
此の世はまこと可笑し気で
常世へ旅する骨女
懐かしい日の想い出
六人で遊んでいたはずなのに
写真には五人しか映っていない
あの子誰だっけ
向日葵畑で姿を見失う
あそこは狐が出るから気をつけなさい
お寺の和尚様も云っていた
懐かしい小径には
今でも小さなお地蔵様が
雨の日には見知らぬ子供が
傍で立っているんだって
魔訶不思議奇譚
古き子守歌
あの小径に行ってみよう
怪人黒マントが
子供達にお菓子をあげている
窓から燃えさかる大鬼が
娘を抱いて怖い顔をして飛び出してきた
お伽噺は本当のことなんだよ
新聞紙の日付が昭和十六年になっている
入道雲がやたら目について
台所には冷えたサイダー
懐古の夏へ
僕らは旅をする
夢ですか、夢ですね
みなもを揺らす、波の狭間に懐かしい声がする
蜻蛉は南へ行きましたよ
すべて通り過ぎていきますね
息は立ったまま眠っている
悲しみの在り処はあの瓶の底
眼玉がぎょろぎょろと教科書を読んでいる
卒業できないのか
永遠の卒業生は
いつかまた懐かしい人に会えたらと
影になる
月が出たから酒でも飲もうと
台所に出向いたら
たらいに太陽が隠れていた
陽が沈んでから人徳がなくて
人の目が怖いと云う
洗面台に夕日が隠れていた
臆病者なんです
なんでいどいつもこいつも度胸がねえ
居間に太陽と夕陽を並べて
説教をしてやったら
午後九時までかかり
遠くで犬の遠吠え
夕暮れ時になって幻灯機が
くるくると廻って人を騙し
人攫いがあちこちで
みんな幸せになりたいんだって
草原では強い風が吹いて
旅人の煙草を吹き飛ばす
たまの休みになんてこと…
旅人は父親になって
幻灯機は廻る
そうしてまたひとりひとりと
姿を消す
夢の國へ旅だったんだよ
幽霊は云う
夕べの月が風呂場に居た
黒マントに追われているんだ、身を隠したい
怪人は綺麗な魂を捕まえて
人買いに売りつける仕事をしているらしい
洗面台で歯を磨こうと棚を開けると
星屑が隠れていた
母ちゃんに叱られて夜空に帰れないんです
なんなんだ君たち
原野は凡てを知って、葉を風に揺らしている
風が吹くから原野に行き
火を灯す
雨が降るから、仏間に行き
線香を立てる
どこまでも不思議の人を演じて
揺蕩っていたいのだ
目の周りに見える嫌なことに
蓋をして
おどけて笑うピエロのように
まぬけを晒して
人に好きになってもらおうと必死になって
人間失格
嫌いです
何度読み返したか
夜の月の灯りが
これほどまで美しいと思えたのは
ここ最近のこと
今までは真っ赤な毬から生えている
深紅の糸ばかり追っていたから
草原の草が風に揺られて縦横無尽に揺れている
夜の原野は言葉がいらぬ
ことりことりと賽子を転がし
十二支時計を欲しがったりするものさ
常夜灯の下で、燐寸を擦る少女
綺麗な人が通り道で
雨の止むのを待っている
気まぐれ屋の夕立は
紫陽花の花を散らさん勢いで降っている
ハンカチを差し出したら
麗人は狐の姿に戻って逃げ出した
確かこの先の路には大きなお寺
墓場から参ったのか狐狸幽霊の類
そういえば、先ほどから三つ編みを引っ張られる
あの世からの、お誘いだ