異世界征服記録2『世界に終わりを告げた少女』
「まさか! そんな! どうして! 君は!!」
健太郎は悔しそうにしながらルシファーナを見ていた。
「先生のお陰で私は自分の夢を叶えることが出来そうなんですよ! 本当にありがとうございます!」
ルシファーナは眩しい笑顔で健太郎を見ていた。
健太郎は涙を流して
「私はどうしてと聞いているんだ! 僕は君をそんな風にするために助けたんじゃない! 一体何があった! 教えてくれ! どうしてこんなことをしてしまったんだ!」
救いを求めるかのように問う。
彼女が生きている間にきっと苦しい事があったに違いないと、辛い事があったに違いない、
そうでないと恋人の心臓で救った意味がないと思いたくなかった為、そう信じたくて健太郎はルシファーナに縋る様に質問をした。
ルシファーナは俯きながら考える様にしてから
「アハハ……アハハハハハ!!」
腹を抱えてケタケタ嗤い出した。
「そうだね、どうしてこうなったかって……」
少し悩んだ後ルシファーナは
「私は昔から少し欲望が強くてね、それなのに心臓の病のせいでずっと死の恐ろしさを感じて過ごしていた、ベッドの上に横になって過ごすことの多かった私はテレビを見たり人の話を聞くだけで実際に何かをすることも出来なかった……そして心臓も苦しくてゆっくりも休めなかった……私は苦しいというより欲望が叶えられないことがとても辛かった」
ルシファーナは震えだしながら自分が病弱だった頃を語り始めた。
「だけどそんな時に貴方に出会えた、その死を回避させてくれたのは貴方だ! 私を死の運命から救ったのは貴方だ! だから私はその時思った! これで欲望を叶えることが出来る! 私はこれで自分の思い通りに生きていける! それがとてもとても嬉しかった!」
「だったら何故……」
健太郎には分からなかった、人生はこれからなのにどうしてこんな悪逆の限りを尽くしたのか、どうしてこんなことを起こしたのか分からなかった。
「退院後私は安心で久しぶりに眠ることが出来た……だがそれが私にとっての恐怖の再来だったよ……」
ルシファーナは先程とは違い突如震えだした。
そんな彼女の様子を不審に思ったが
「恐怖の再来……どういうことだ……」
健太郎は理解出来なかった。
「私は夢の中で突然車に轢かれて死んだ……そのせいで飛び起きた……親には心配を掛けたくなくてもう一度眠りに着いたんだが……今度は心臓の病気で死ぬ夢を見た……これはどういう事なんだろう……私は考えた」
健太郎は冷汗を垂らしながら
(まさか……移植後に趣味趣向が変化する等、記憶転移という現象が起きたというレシピエントの報告があると聞いた事はあるが……科学的根拠もない為特に気にしてはいなかったが……まさか彼女にそんな事が起きたというのか……)
ルシファーナはそんな健太郎に理由を説明し続ける。
「そして、私はある1つの答えに辿り着いた……死はその場限りの事ではなかった……死は1つじゃなかったことに私は気付いた」
「死は……1つじゃない……限りがないだと……どういう事だ……」
「私はもう死に対して恐怖したくなかった……その為にもう死ぬことのない様にするにはどうすれば良いか沢山情報を集めたんだよ……そしたらいっぱい出て来たよ……生きていれば車が突っ込んで人が死ぬ事があれば災害で死ぬ事もある、死ななくとも障害が残って生きづらい状態になることも、しかも肉体的に死ななくとも……社会的地位を潰されてばこれから一生後ろ指刺されて精神的に追い詰められればもう何も出来なくなって死んでしまうかもしれない自殺してしまうかもしれない……それは死を恐怖する私にとって一番合ってはならない事なんだよ」
震えているルシファーナにとって、今中京香にとって死は絶望そのものであった。
死は彼女から何もかも奪い取る恐ろしい存在であった。
健太郎は彼女の恐怖を失念していた。
手術日以来彼女とは会っておらず、きっと元気に過ごしていると勝手な夢を見ていたことに気付いた。
しかし、実際は死の恐怖に未だに苦しめられていた、そして心臓移植のせいか、自分の恋人が交通事故で死んでしまった時の記憶を夢で見てしまっているのではないか。
そして理解した、死を身近に感じていたからこそ彼女は過敏に死を恐怖したのだろうと。
そんな当たり前に恐怖し、絶望していたという事実を知らずに自分がのうのうと生きていたという事を恥じた。
その後の事に対して気にも留めなかった自分を呪った。
だが、それでも健太郎にとって分からないことはまだあった。
健太郎は涙を流しながら
「だからって……それがどうしてこんなことをする必要があった……そんなに苦しめられているなら誰かに相談するとか……」
だがルシファーナは健太郎の言葉を遮る様に
「そんなんじゃダメなんだよ! いざっ手時は誰も助けて何てくれない! 自分で考えて答えを出さないといけない! その時間を貴方が作ってくれた! これから私の欲望を叶える為の時間を! だからこそ私自身がその答えを見つけて動かないといけないと感じたんだから!」
健太郎はその言葉を聞いて、自分の恋人の面影を感じた。
彼女もまた、行動をして答えを見つけていきたい人であったのだ。
「分かったんだよ……肉体的死を回避する方法……そして社会的死との精神的死回避の仕方を!」
「……何を言って……る……一体何をしようとしたんだ!」
「新人類化計画」
「新……人類化計画だと……」
ニタリと嗤ったルシファーナは
「そうだ! 人間の体を改造する事で新人類として進化させることにより不老不死を作り出す! そして、私が生きる為に問題のないような新世界を作り出す事だ」
その言葉に健太郎はハッとした。
「新世界だと! まさか……今まで出て来た怪人や量産型戦闘員は元人間だというのか!」
「それがどうした? あんただって人間をヒーローに改造しただろうが……それとどう違う?」
「私は瀕死になった人間や事故で変異を起こした人達に同意を取って行ったことだ! 一緒にするな!」
「それって結局選択の余地のない人達でしょ? なら私の世界征服の為の改造と何ら変わりはない、自分達の世界を守る為に改造したのと同じじゃないか……私だって死を回避するには仕方のなかった処置だといけないか?」
その言葉を聞いて健太郎は今中京香に対しての怒りと悔しさが込み上げる。
「それがこの世界征服だというのか! その為に罪のない人を殺して回ったのか! そんなの狂っている! それに人間というのは寿命があるから尊いのだ! 終わりからあるから美しいという事が分からないのか!」
嫌悪の表情を向ける健太郎にルシファーナは見下す様に
「狂ってはいない……今まで人間が行ってきた行為はこういう改革が必要なんだよ……私が社会的にも精神的にも死なない様にするには必要な事です……それに人間の寿命何て昔に比べればかなり伸びている……平均寿命何歳だ? 男で81歳、女で87歳……昔はもっと若くして死んでいたのに……それが良くて何で不老不死がダメなんだ? 命を伸ばす行為守る行為でどれだけ肉体を改造した? それと同じだ……」
「違う! そんなのは詭弁だ! 貴様等の行為を正当化する為の! そんな悪逆が許されるとでも思っているのか! いい加減目を覚ませ! こんな外道な事を止めて罪を償うんだ! 今なら間に合うかもしれないんだぞ!」
そんな今更な事を言う健太郎にルシファーナは呆れ返り、睨み付ける。
「悪逆? 外道? 私達が完全なる悪だと言いたいのか?」
「その通りだ! 君が行った事は完全に悪だ! 悪い事という自覚もなかったのか!」
「なるほど……でも外道じゃなければ改革とは言いませんよ……何故ならこの世界の真理に背く事で新たなる世界が生まれ、そこからまた新しい真理が生まれるんですから……それに私達の事を悪だと言いますが、結局それは人間だけが使っている言葉で本来この世界に善も悪も存在はしない」
怒りに任せて健太郎は怒りに任せ、ルシファーナを掴み掛った。
「違う! 確かに悪はある! 力の者は自分の為ではなく弱き者を守る為に振るうものだ! 決して欲望の為ではない!」
「それは今の世界の真理でしょう? 昔は力あるものが世界を制する事が真理だったし、自分の正義の為に正義と正義がぶつかった事があった……きっとその時代の人間にとってそれは正義だったんだろう……だが今は見方を変えただけで善だとか悪だと言って捉えている……つまり人間にとって善と悪の定義は人間にとって常識と都合の良し悪しによって決まるんだ」
「そ! そんな事は……!」
健太郎はルシファーナの説明に対して否定しようとするが、少し顔を歪ませて言葉が詰まる。
「今ある法律だってそうだ……作った者にとって都合の良い様に作り、上級国民達は法を犯しても揉み消して終わりという状況にも関わらず文句は言えても結局のところその法律に従い正義として生活し続ける、つまりはそういう事だ……見方次第で善か悪か変わってしまうのは見る側にとってそれが常識的であるか、都合が良いか悪いかで判別される……そう考えると私が今行っている新人類化計画は今から敗北する君達にとっては悪でも勝利する我々にとっては正義だ……正義が必ず勝つのは勝ち残った者にとってそれがただ都合が良いだけの話なんだからな」
「貴様の新人類化計画が他の者にとって都合が良いだと! 正義だと! そんなことはあり得ない! それに不老不死のデメリットは現代の人間にも分かるはずだ! 死ねないことによる恐怖を!」
その言葉にルシファーナは鼻で嗤い
「それはない、恐怖する事はない……何故なら勝ち残った新人類は全員不老不死になる、ならばその後はさらなる高みを目指すだろう、病気で死にそうな体を治す様に自分達が苦しまない方法を新人類は探し出す、そして不死身を受け入れることにより私は肉体的死を回避出来、さらには新人類を増やす事で社会的死を回避する事、最終的に私がその上に立てば精神的死を防ぐことが出来る! これこそが新人類計画だ!」
「そんな理想論でどうして人を募ることが出来たんだ! そんな事があってたまるか!」
必死に否定する健太郎を見て、ルシファーナは滑稽に思った。
「それがいるんだよ、今の世界に不満を持つ奴を使った……奴等は常に自分達の幸せと成功を信じているが自分では何かを挑戦しようという思いはない者、何かに一生懸命になった事もない者、自分達は社会に置いて行かれているというのに世間を知ったかぶりしている者、就活が上手くいかなかった者、非リア充でリア充を羨む者、借金を作った者、ブラックで扱使われている者、失業者、ただただ幸せな奴等を憎む者等、そいつらを唆して新人類計画を説明した! 今まで君達を見下してきた幸せな人間より上の立場になれると、君達から沢山搾り取ってきている上級国民や国を崩壊させて君達がそいつ等から搾り取れるようになれると伝えたさ! そうしたら奴等は簡単に乗って来た! 胡散臭いと言って止めようとする者も我々新人類の力を見せただけで納得していたね! そして我々の指示通りに街に現れて大暴れしてヒーロー達を倒してくれた!」
楽しそうに説明するルシファーナに、健太郎は唖然としながら
「そんな事で……そんな事で新人類計画に乗ったっていうのか!」
「その通り! 人間とは都合が良いならそれに乗って善だと言って奉る! カルト宗教団体に人が集まる理由はそれだよ! 嫌な現実から逃れる為に、自分にとって依存しやすい環境に身を置き他の者を間違っていると指摘する事で自分は今正しい行いをしていると信じることで自分は正義だと熱烈に思う事に生き甲斐を感じる人がいるように新人類という新たな存在が支配する事を夢に見て依存する事により、その者の生きる目的として正義として怪人や量産型戦闘員……それだけじゃない改造人間やバイオハザード化した人間を誕生させることが出来たんだ! ハハハハハハハ!」
高嗤うルシファーナに健太郎はもはや何も言えなくなった。
何を言っても何を聞いても全ては彼女自身の中で解決してしまっている。
健太郎の説得を聞いても変わることがないということが分かったからだ。
そして、彼女のその計画に乗った人間達もまた彼女達の悪に染まったという事実にショックを受けたのであった。
健太郎は冷たい表情で
「もういい、騎士マン! こいつもさっさと倒して……」
と騎士マンに指示を出した。
しかし、アスデウスを倒したはずの騎士マンから返事はなかった。
健太郎の背筋に何かが這うような嫌な予感がした。
そして、そっと騎士マンガいた方向に顔を向けると
「ううううう……」
「騎士マン!?」
アスデウスを切り刻み倒したはずの騎士マンは口を押えられて下半身を露出させられていた。
「ギャアヒヒヒハハハアアアアア!! お前の方から引ん剝いてくれるとはああ! 犯る気だねええ!!」
健太郎は唖然とした。
確かにアスデウスは騎士マンに切り刻まれて殺された。
しかし、今完全に押さえ込まれている。
理由は直ぐに分かった。
「まさか……もうすでに自分達を……」
「そうですよ、すでに改造済みですよ」
健太郎は悔しそうにしながら見る事しか出来なかった。
「さてと! 感想はどうかなあ? 私と生殖行為をする直前の感想はああああ!」
と涎を騎士マンの顔面に垂らしている。
アスデウスは口を覆っていた手を退けると、騎士マンは嫌悪の表情で
「ふざけるなア! 貴様なんかとそんなことを……」
「そんなことを言ってエエ~こおこおおはああ素直おおおお」
そのまま騎士マンの股間部分を軟握りする。
「うう!」
と顔を赤くしながら騎士マンはビクビクと動く。
そして、アスデウスはそのまま
「では生殖行為を始めよおおぜえ!」
「止め! 止めろおおおおおおああああああああああああああああああああ!」
と下のズボンを破り捨ててそのまま生殖行為を始めた。
「そんなバカな……糞! 糞!」
健太郎は自分の不甲斐なさを嫌悪した。
自分では助ける事はもう出来ない。
アスデウスを止める力は健太郎にはないからだ。
唖然とする健太郎に憎たらしい笑顔を向けながらルシファーナは
「馬鹿だなあ……騎士マンともあろうものが私達の会話に口を挟まないと思っていたのかな? そんな訳ないだろう、私との論争に夢中になっている間に助けられたかもしれない戦力を失うとは哀れだねエ~」
と厭味ったらしく煽る。
苦痛の表情をしながら健太郎は悔しそうにルシファーナを見る。
ルシファーナはそんな健太郎に銃を突きつけながら
「豊中博士、最後のチャンスですよ……新人類計画に乗りませんか? 貴方も新人類にしてあげますよ? 良い提案だと思いませんか?」
「……ヴィラン共め」
「? ヴィラン?」
健太郎の言葉に一瞬戸惑うもルシファーナは気付いたような表情で
「ああ……私達に対しての蔑称か……そういえばありましたね? 蔑称なんか作るから差別が生まれるって知らないんですか? で? 貴方の答えは?」
「そんなの断るに決まっている」
「そうですか……残念です」
パアアン!
冷たい声で引き金を引き、銃声が鳴った。
そしてそのまま健太郎は脳天に直撃した穴から血をドバドバと吹き出しながら動かなくなった。
その後、ルシファーナはアスデウスの方にめを向けた。
「アスデウス? もう終わった?」
カチャカチャ
「ふうう」
とベルトを締めてアスデウスは熱っぽい表情で
「ああ! とっても良かったぜえ! 子供も生まれる! ギャアヒヒヒハハハアアアアア! それに! 前に着けたものよりも良いものを見つけた! ベルフェレ! 後でお願い出来るかあ!」
「ウヒヒヒ、良いよ」
ベルフェレはケタケタと嗤いながら承諾する。
ベルフェレはルシファーナにほくそ笑みながら質問する。
「ウヒヒヒ……別にルシファーナは死を回避する為に世界を支配したいだけで正義とかどうでも良いでしょ? それなのに何でそんな討論をお?」
「ええ? だって久しぶりの先生だよ? 殺す前にお喋りしたいじゃない、それに先生なんだからこうやって論議を交わす方が楽しいかなって?」
「ウヒヒヒヒ……そうなんだああ……まあ君の気持は分からなくもないけどねえ……ウヒヒヒヒ」
「ギャアヒヒヒハハハアアアアア! まあこれでこの世界は私達が支配出来るってことだねエ! 最高の気分だぜえ!」
そして、三人は再び進んで行った。
「さとと、最後の砦は完全に陥落した、後は勝利宣言をここの放送を使えば今希望を持ってる奴等を絶望へと染め上げれる」
「ウヒヒヒ……そおーだねえ!! ウヒヒヒ! これで……怠惰があ……」
バタン!
とベルフェレの乗っている車椅子がひっくり返った。
そして、
「があああ……」
と涎を垂らしながら寝落ちした。
ルシファーナはだらしなく眠るベルフェレを見て呆れながら
「お前なア……もう怠惰になるのも良いがこんなところで寝るなよおお」
「うう!」
と今度はアスデウスが腹を押さえだした。
「お前は何だあ!」
「生まれるうう~」
「何なんだああ! 何なんだよおおお! お前等はああ! 勝ったと思ったら好き勝手とおおお!」
「破水したあああ!」
「勝手に産んどけ!」
「うう……了解……ひっひっふーー!」
とアスデウスはそのままラマーズ法で分娩を始めた。
すると
グシャアアアアアアアアアアア!!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
とアスデウスの腹が突然裂けて
「オッキャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!! オッキャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
と赤子の様な顔をしたゴリゴリマッチョの生き物がアスデウスの腹から這い出て来た。
「う……産まれた~」
とホッとした様な表情で腹から這い出た我が子を嬉しそうに見ていた。
「うふふふ、残忍で狡猾で暴力的に育ってね」
「あぶあばあああああああああああああああ!!」
すると生まれた子供は大きな手で果てて倒れている騎士マンと死んでいる豊中博士を掴んで
「がぶばああぶしゃあ!」
と美味しそうに食べ始めた。
そして、体が急成長して筋肉が盛り上がり、1人で立てるようになった。
そんな我が子を見てアスデウスは嬉しそうに
「まあ! まあまあまあまあまあ!! 嬉しいわ! こんなにも残忍で冷酷な表情で食べてその上立っちが出来るなんて! 自慢の我が子だわ! ねえ! ルシファーナ!」
「……ああ……そうだね……はあ」
そんな様子を見てルシファーナは溜息を吐きながら
「私は無線室に行っている……そこで待っとけ」
「了解……」
「ふがお! ひょうかい」
そう言い残すと、そのまま無線室へと向かった。
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ルシファーナは無線室の機材を弄り、マイクの線を繋げて音程を調整した。
そして、外のスピーカーから放送出来るように設定して
「あー! あー! アーーー!」
マイクに声を当てて、音量やノイズの確認を終えると
「秘密結社シックの怪人! 構成員! 量産型戦闘員達! 戦いは終わった! 我々の勝利だああああ!」
数秒間の間沈黙が続いた。
その後、放送のスピーカーから大音量で
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
外から歓喜の声が聞こえた。
その他も
『うわあああああああああああああああああ!』
『そんなああああああああああああああああああああああ!!』
と絶望で絶叫する声も同時に聞こえてきた。
その歓喜と絶望が混じった声を聞いてルシファーナは
「うふううう! 私は……最高だああ! 夢が! 私の欲が! 喜びが! 体中か湧くようだああああ」
涎を垂らしながらルシファーナは身悶えしていた。