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7話

 そして俺とお嬢様とフェイリスさんの3人はパフェが美味しいと噂の店へと馬車で移動していた。フェイリスさんが御者をしているので、必然的に俺とお嬢様が同じ空間に存在することになる。


 フェイリスさんが俺を今にも射殺さんとばかりに睨んでいた。それとは対照的にお嬢様は心なしか喜びの表情を浮かべているように見える。


 そんなにパフェが楽しみなのだろうか? それよりも、男嫌いのお嬢様が俺と同じ空間にいて大丈夫なのかも心配だが……ヤバければ最悪フェイリスさんと変われば良いか! お嬢様も必死になって慣れようとしてるってことだろうし……な!



「……シュルト、少し暇だから、私の話し相手になりなさい」



 お嬢様は窓の外を眺めてそっぽを向いていたが、意を決したようにそう言ってきた。おぉっ! お嬢様が距離を詰めてきたぞ! 多分向こうも緊張しているだろうに……。



「かしこまりました。何なりとお話しくださいませ。ミゼお嬢様の専属執事の私が、幾らでも話し相手となりましょう」


「ふ、ふん、そんなの当然だわ……」



 お嬢様は俺の言葉にも動揺せず、当たり前のようにそう言い放つ。くっそ、なんか腹立ってきた! でもこれも給料のため、我慢だ我慢!



「……シュルト、私ね……こんーー」



 お嬢様が少しだけ声のトーンを落として、何かを伝えようと口を開く。そのふとした瞬間に、馬車の窓からキラリと光る物が見えた。一瞬しか見えなかったが、あれは間違いなく……金貨だった!



「止めてください!」



 全くあんな所に金貨が落ちているとは……! 急いで拾わねば! そう思いとっさに馬車を止めるように告げてしまった。理由を知られればお嬢様に殺されるだろうことに、俺は後で気づく。



「うおっ!?」


「きゃあっ!?」



 突然の急ブレーキが発生する。俺の掛け声のせい!? そう考えていると、お嬢様が俺を押し倒すように吹っ飛んでくる。


 危ない! 俺はお嬢様が怪我をしないように抱きしめる。全く、万が一怪我をされれば俺の落ち度になるからな。そうすれば伯爵家からは良くて減俸。普通に首が飛ぶ……!



「シュルト、助かったぞ。今ちょうど子供が飛び出てきた所だ。良く察知できた!」



 え……嘘〜っ!? 外で馬車を運転していたフェイリスさんの声を聞き、俺は内心でそう思った。



「と、当然です。お嬢様、お怪我はありませんでしたか?」



 俺は『何という偶然だ』と安堵しながら尋ねる。俺が受け止めたから多分大丈夫そうに見えるけど、これで万が一のことがあれば……。



「え、えぇ……シュルトが優しく受け止めたんだもの。傷一つないわ」


「それは大変良かったです。ミゼお嬢様に何かあれば、私も大変心を痛めますので」



 給料が減れば俺の心はズタボロだからな!



「……って、ち、近いわよっ!?」



 冷静になったお嬢様に俺は平手打ちを喰らわされた。痛い! ……まぁ、お嬢様が怪我をするよりはマシだ。


 それよりもやっぱりまだ男嫌いは健在か。同じ馬車に乗ったのだから解消されている可能性も考えていたが……。



「あ、それよりも子供よ。大丈夫かしら……?」



 何故か少し顔を赤らめたお嬢様が、フェイリスさんの言っていた外の子供を心配する様子を見せる。



「私が見て参ります。お嬢様は馬車の中に。誰か知らない人が入ってきたらすぐにお声を」


「わ、分かってるわ」



 俺はお嬢様にそう告げて馬車から降りる。当然腰には剣を下げている。俺は執事兼護衛だからな。ちゃんと伯爵家の騎士団長からある程度の手解きは教えてもらっている。


 外には人が溢れていた。軽い騒ぎになっているな。外に飛び出した子供を発見する。推定5歳の幼女。ボロい布切れ一枚を着ているだけ。


 ……スラム育ちの子だ。このような城下町にいるにはあまりに不自然。偶然ではないだろう。となれば今回の出来事の目的も自ずと見えてくる。



「フェイリスさん、馬車の入り口を守ってください」


「シュルト、一体何を……いや、ミゼお嬢様のことは任せろ」



 フェイリスさんは一瞬だけ戸惑いを見せたが、すぐにある程度の予想をつけたのか冷静に俺の言うことを聞いてくれた。


 さてさて、伯爵令嬢の乗る馬車に、スラムの子供が飛び出してきて足止め。人数はお嬢様と俺とフェイリスさんの3人だけ。……確実に狙われているな。


 ……よし、お小遣いの稼ぎ時だぁぁぁぁぁ!!!!

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