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4話

「お嬢様、おそらく彼は思い違いをされております。私にご説明の許可を」


「許可するわ。話しなさいフェイリス」



 思い、違い……?



「シュルト。お前はお嬢様がこの手紙の主である執事が辞めたことで気を病み、自身のお側に置く事を拒否していると考えた……違うか?」


「……はい」



 え? 待って違うの? 違うのっ!? そうじゃなかったの!? アルバ先生の予想は間違ってたってこと!? それじゃあさっきまでの俺の決め台詞は一体何のために……?



「お嬢様がお前を取らない理由。それはお前が男だからだ」



 えぇぇぇぇぇぇぇっっっ!?!?!? 待て待て待て待て!!! 理由は性別!?


 それを聞き、俺は親指を立てて歯をキラリと光らせる食堂のおばちゃんが目に浮かんだ。



「お嬢様は少し前から男が嫌いになったんだ。この手紙の主の事情など関係ない」


「一言で言えばそうですわね。名前もしばらく忘れていましたし」



 え、前の執事さん可哀想……。その情報はお嬢様を守った執事に追い討ちをかけるので絶対に伝えないでおこう……。



「じゃ、じゃあお別れの際、泣いていたと噂を聞いたのですが……」



 あの感動エピソードはどうするつもりだ!?



「あれは執事を見送る際に渡す花束に付いてた花粉のせいだ」



 ミゼお嬢様はまさかの花粉症だったぁぁぁぁ!?!?!?



「……そんな、馬鹿な……」



 俺はショックのあまり、ガクリと膝から崩れ落ちる。……これじゃあ、給料が貰えない……!?



「…………シュルト、顔を上げなさい」


「っ! は、はい!」



 俺が思わず項垂れていると、お嬢様から声がかかる。その言葉が耳に入り、俺はすぐに立ち上がる。


 なんて事をしてしまったんだ! お嬢様の前でなんたる醜態を! この執事としてあるまじき行為の噂が広まれば、執事どころか他の仕事にまで影響してしまう! そうなれば他の割の良い仕事にすらつかなくなるじゃないかっ!!!



「……今日から一週間よ」



 お嬢様が苦々しい顔を浮かべ、苦肉の策とでも言いたげな表情をしながら簡潔に言葉を述べる。



「……はい? あの、何がでしょうか?」



 だが、俺は意味が分からず尋ね返す。これが仕事を失った今ではなく、平常時なら理解できたかもしれないな……。



「あなたが専属執事になる事を、よ。まずは一週間、この期間以内に私の役に立ちなさい。……それができたら、これからも雇ってあげるわ」



 お嬢様はフンッ、と鼻息を荒くしながら俺に告げてくる。……え? つまり、俺はまず一週間限定で雇われたと言うことか……?


 そっか、俺、雇われたんだ……。よかったぁ〜〜!!!!! 一週間分の高い給料が貰えること確定した! やった、やったぁ!



「シュルト、ミゼお嬢様のご好意に感謝するのだな。だが、この程度で浮かれて己の役目を忘れるような事はするなよ? あくまでお前は仮契約なんだ……」



 メイドのフェイリスさんが俺を見て釘を刺してくる。まじか、出来る限り顔や体に出さないようにしていたつもりだったが、彼女にはお見通しだったようだな。


 ……いや、違うな。おそらくフェイリスさんは想像でものを言ったのだろう。この程度の喜びようで心を読まれるなら、俺の金銭欲はその比ではない。今日部屋に入る事すら許されなかっただろう……。



「理解しております、フェイリスさん……あ、そうお呼びしてもよろしいんでしょうか?」


「……構わん」



 フェイリスさんは不本意ながらも許可を出す。



「シュルト、あなたに専属執事として最初の命令を出すわ」


「なんなりとお申し付けを」



 ふっふっふっ。やっとスタートラインに立つことができたんだ。どんな命令だって叶えてやるさ! 給料のために……!



「とりあえず、部屋から出てって」


「かしこまーー……はい!?」



 こうして、俺は2日目も同様に部屋から追い出されることになった。何故だァァァァァァッッッ!?!?!?

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