1話
俺は、この世は金が全てだと思う。だってお金がなきゃ何も買えないんだぜ?
俺ことシュルトは伯爵家に使える料理長と侍女の間の生まれだ。そして3歳のある日、俺は気づいた。執事が使用人の中で一番給料が良いことに。
こうして俺は給料の良い執事になるべく、猛烈に勉強をした。体調管理もしっかりしたし、なんでも出来るように様々な所にお手伝いもしに行った。
時には仕事の邪魔と嫌がる人間もいたが、大抵の人は優しくしてくれた。多分自分の後継人候補みたいな考えもあったのだろう。
貴族の使用人の仕事は、本当に大変なのだ。だから短期的なデメリットよりも、長期的なメリットを取る人たちだったんだろう。
その人たちに支えられ、俺はたくさん努力した。全てはお金のために……!
こうした努力もあり、俺は若干10歳にて伯爵家三女の専属執事に任命された。
***
今日はお嬢様との初めての面会の日だ。今までも俺は通りすがりにその姿を見ることはあっても、向こうから覚えられていることは無いだろうな。
コンコンコン、と部屋の扉を叩く。中から「どうぞ」と声が掛かるのを確認して、俺は「失礼します」と言いながら部屋に入る。
部屋に入ってすぐ、俺は自分が仕えるべき人物を見つけた。……いや、勝手に目が吸い込まれたと言った表現の方が正しいな。
彼女は同年代にしては比較的小さな身長。雪のような白銀色の髪を持っていた。それに才色兼備でもう、完璧と言っても間違いない。
俺がそんな評価を下した彼女こそ、ミゼ・フォン・クロイツ伯爵令嬢その人だ。
「あなたが私の専属執事になる人なの?」
首を少しだけ横に傾け、サラリと柔らかそうな銀髪を揺らしながらお嬢様が尋ねてくる。俺はすぐに片膝をつき、頭を下げる。
「はい。本日よりあなたの専属執事に任命されました、シュルトと申します。なんなりとご命令をくださいませ」
ふっふっふっ、2歳の頃から様々な英才教育を自ら志願して受けてきた俺だぞ? 同い年のお嬢様のお願い事ぐらい、なんだってできるさ!
「……じゃあ、ここから出てって。フェイリス」
「はい」
その言葉を聞き、お嬢様の隣に立っていたフェイリスという名のメイドが動く。俺を猫のように摘み出し、部屋から退出させられた。
……? …………え??? 俺がお嬢様の専属執事になって1日目。部屋から追い出されることから全ては始まった。