やはり僧侶は欠かせません
薄暗い地下室。数本のろうそくだけがゆらゆらと、おれたちを照らしていた。
「さて、仲間をもう一人召喚するのじゃが」
ローブ姿の小柄な少女が、見た目に似合わぬ口調で言った。
「……リーダー……」
おれよりちょっと年上だろうか?おれの元の世界なら大学生といった感じの、華奢な若者が手を挙げる。
「なんじゃ、魔法使い君」
「……僧侶がいいと思います……」
落ち着いた口調で言う。
「そうか。勇者君はどうじゃ?」
水を向けられたおれは、困惑する。知らないよ、そもそも勇者じゃねーし。いきなり呼び出されて、厄介ごとに……
「おれも僧侶だと思う。パーティのバランス的に」
不満は表に出さず、そう答えた。文句を言ってもしょうがない。大事なのは、これから始まる冒険の旅、傷ついたおれたちを癒してくれる、僧侶……
「おっぱいが大きいとなお良し」
「な、なんじゃと、破廉恥な!」
リーダーが顔を赤らめる。
「……何を言い出すのです、勇者よ……」
魔法使いが、気の毒な人に対する口調で言う。
「……尻でしょう、重要なのは……」
「ええい、貴様もか、馬鹿ども!……真面目な話、性別も何も、こちらからは選べんのじゃ」
「ソシャゲのガチャみたいだ」
「???まあ良い。さっそく始めるのじゃ!」
少女は部屋の中央、手書きの魔法陣の前で、呪文を唱え出した。
「えろいむえっさいむ、えろいむえっさいむ……」
「聖職者を召喚するのに、この呪文って」
「……静かに、集中を乱してはいけない……」
「そうだな、おれたちの僧侶ちゃんを呼ぶためだもんな」
「われはもとめうったえたり……来たぞっ!」
室内に霧のようなものが立ち込め、おれたちの視界を遮る。魔法陣の上に、うっすらと、人影が見えた。
「召喚成功じゃ!立派な僧侶じゃ!」
ろうそくに照らされて光る、剃り上げた頭。そして袈裟。体格もがっしりしていて、確かに立派な僧侶だ。
「そう来たか」
「……僧だけに……」
黙れ魔法使い。
「……尻もなかなか……」
困り顔の坊さんーーよく見るとけっこう若いーーは周囲をぐるりと見渡して、言った。
「これが噂の異世界……」
「ようこそ、僧侶よ。わしらに力を貸してくれんかの?」
「いかにも私は僧侶ですが」
自分の袈裟や、周囲を見回す。
「なんかイメージ合わないなあ」
あんたがそれを言うか。