近づく悪夢
………はぁ、なぜここまで物語が進まないんだ?
漆黒に塗りつぶされた部屋で全てを知る少女は一人の少年を眺めながらつぶやく。
ピースはそろえてあげたのにまだ何か足りないのか?
ヒーロー、味方、敵、怪獣……
これ以外に必要なものとは?
あっ!……なるほど、これを忘れていたから話が先に進まなかったのか。
これは失敬。
さぁ、物語を次へ進める大事なピースを渡しに向かうとするか。
足りないピースの名前は『力』
そう言って、少女は少年の元へ向かった。
次の日からメイの行方がわからなくなった。
メイの家にも訪ねたところちょうどメイの友達がいた。話を聴くとメイは今家にいないことがわかった。
叔父さんに助けを求めたのだが仕事で遠出していて忙しいのか電話が通じない。
警察に行ったがそれでも安心できず、意味も無く探し回っている。
何度も携帯には連絡をいれているが繋がることはなかった。
クソッ!どこに行ったんだよ。
焦る気持ちは加速していく。
今の時刻は午後18時過ぎ。
日も傾き始めていた。
走り回ったせいで喉の渇きが尋常では無かった、足の疲労も溜まりついに動きを止めてしまった。
呼吸は乱れ、喉は妬けるように熱い。
汗は絶えず流れている。
いつの間にか周囲は暗くなり、世界を夜が覆ってしまった。
呆然と空を見上げていると奥のビルの屋上で何かが光った。
次の瞬間俺の体を銀色の弾丸が貫いた。
「う、がぁぁぁあ!」
激痛。経験したことのない痛みが体中に広がる。視界は狭まり、その場に膝をつく、傷口を押さえた手は鮮血に染まっていた。
そして、朦朧とした意識の中もう一度ビルの屋上を見上げ……
放たれた2発目の弾丸は少年の脳天を射貫いた、夜の暗闇で最後の希望は真っ赤な鮮血を流して殺された。
それから待っていたが結局私を呼び出した友達は現れなかった。
ずっとずっと待ってたのに結局来なかった。
「はぁ~、ついてないな。」
多分、急用で来られなくなったのだろう。こんな遅くまで待つことになるなんて思わなかったよ。
とぼとぼとした足取りで我が家に向かった。
家に着いたのは夜9時半だった。
夏と言っても夜は冷えていたので疲れきった体を湯船つからせた。
「はぁ~、いい湯だなぁ~。」
湯船から上がるとお気に入りのパジャマ(この前、創馬と買い物したときに買った)に着替えて布団に潜る。
……でも、用事って何だったんだろう?
………もしかして、私集合場所間違った!?
そう思い焦ってメールを見直したがやはり今日行った場所であっていた。
だよね~、ビックリした。
私はほっと胸をなで下ろしました。
なんか、焦っていたのがバカらしくなり布団に潜りなおします。
楽しいことを考えよう、楽しいこと…楽しいこと…………
そうして、眠りにつきました。
……
次の日……
うぅ、体が怠い、頭が痛い、喉が痛い。
はい、風邪を引きました!
あんなに待つんじゃなかったな……
後悔すでに遅し。
私は自宅で一日中寝てました、人が訪ねてくる予定もないのでゆっくり休もうと思います……
その日は誰も訪ねてくることはありませんでした。
……だから、その日大切な人が死んでしまっていたことに気付くこともありませんでした。
嘆き悲しんだ、涙が止まることはなく流れ続けた。体中から力は抜けてその場に崩れていた。
後ろから這い寄る絶望に何もできないまま覆い尽くされてしまう。
失ったものが大きすぎた、泣き叫んでも泣き叫んで、彼が帰ってくることは無いとわかっていても祈るしかできなかった、ここで私自身が彼の死を受け入れればたぶん私はこの先の未来を進めなくなる。
元々方向などわかったものではない、でも、先立つ希望はあった。
だから、その道をその背中を追ってきた。
今、その道すら途絶えてしまった。
だから、私はここで崩れ落ちることしかできない、泣き叫ぶことしかできない。
弱い自分が嫌だった、強くなりたかった。でも、これでは………
「………なんで創馬がいなくなるの?」
ここはどこだ?
見える世界は暗くて目を開けているのか閉じているのかわからないくらいだ。
まぁ、それもどうでもいい。
何も考えたくない、ここにいれば前を向かずに済む……
……それで本当いいのか?
暗闇に少女の声が響き渡る。
だれだ?
……私の正体など知ったところで意味がないぞ、それよりもだ。
……本当に諦めるつもりか?ここまできて。
諦める?何を?
……忘れたのか?お前は一人の少女を救おうとヒーローのように奮闘していたじゃないか。
……
メイ………
口にしたその名前はどこか悲しく懐かしかった。
だけど、俺はヒーローにはなれなかった、手を伸ばすだけで手を取ることをできなかった。
……だから、諦めると?
………
……ふざけるなよ、ヒーローになれなかったから諦めるだと?馬鹿なことを言うんじゃない、お前は元からヒーローなんかじゃないんだよ。
元々、ヒーローじゃないそんなこと知って……
……いいや、お前は知らないな。知るはずが無い。
じゃあ、俺は何なんだよ
……教えてやる、お前は……
その言葉は抗うことすらさせずに俺の形を変えてしまった。
……お前は『怪獣』だよ……
……諦めるぐらいなら全てを壊しちまえ。
読んでくださった皆様に最大級の感謝を!




