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長耳娘と相棒と~現場監督の異世界害獣討伐記~  作者: スギタジュン
第二章 守人

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第26話 アカリの矢


 手回しドリルが完成した。


 これでやりたかったことの一つが実現する。細い丸棒を簡単に作ることができるのだ。矢を大量生産するのにちょうどいいと考えた。


 そのほかに用意したのが自作の丸棒削り器。まあ、名前などどうでもいい。


 ダボを作るときなどに使うもので、鉛筆削り器を大きくしたみたいなものだ。削り穴の一端を欠落させ、刃を斜めに取り付けている。ただ、削り穴は鉛筆削り器のような円錐形ではなく、入り口だけが少し広口になっている円柱形だ。


 この削り穴に角棒を押し込みながら回すと角が削れて丸棒になる。直径が異なるいくつかの丸棒削り器を用意しておけば、いろいろな太さの丸棒がつくれる。


 ちなみに、のみを使って即席の丸棒削り器を作ることもできる。適当な部材に所望の大きさの穴をあけ、穴の一部を切り欠いて、のみの刃が当たるようにクランプで固定すれば簡単だ。


 おれは、まず、先日持ち帰った黒竹を半割にし、さらに、それをテーブルソーで細断した。十五ミリ角くらいの角棒がたくさん用意できた。


「カグヤちゃん、手回しドリルを使ってみるよ」


 おれはハンドドリルの先端ソケットに黒竹の角棒の端を押し込み、固定した。次いで、削り穴が十ミリの丸棒削り器に角棒を差し入れて、ドリル全体を押しながらハンドルを回す。角棒が回転しながら削れていき、一分足らずで十ミリ径の丸棒が仕上がった。


「どう? 簡単にできたでしょ?」

「はぁー、すごいです! きれいに削れています」


 この村の狩人たちは、いままで適当な枝をナイフで削り出して矢柄を作っていたそうだ。これではいくらなんでも時間がかかりすぎる。これで、矢柄を作るのがだいぶ簡単になったはずだ。


 バーナーで軽く炙り、わずかに曲がっている竹丸棒の矢柄をめる。矢柄の後端に切り込みを入れ、弓のつるを掛ける矢筈やはずを設ける。


 先端には小径ドリルで穴を掘り、あとでやじりを差し込むことにした。鏃はどうしたらいいか? あとで鍛冶屋の親父さんに相談してみようと思う。


 あとは矢羽やばねを矢柄の後端部に取り付ければいい。


「カグヤちゃんのお姉ちゃん、雑だからね。不器用なあのも少しはましなものを作れるようになるんじゃないかな? あはは」

「あわわ……お、お兄ちゃん」

「えっなに?」

「う、うしろ」


 カグヤちゃんが後ろを指さす。アカリが立っていた。農作業から戻ってきていたらしい。


「ア、アカリ、いつからそこに?」

「さっきよ」

「聞こえてた?」

「ええ、よく聞こえたわよ。雑な上に不器用で悪かったわね」

「あはは……ご、ごめん」


 おれはアカリの機嫌を直すため、まえに拾った鳥の尾羽で新しい矢をつくってあげることにした。作業の効率を上げるため、矢柄を回せるように載置できる治具も作製してあるのだ。


 矢羽には、拾った羽根の羽軸うじくを割いて分けたものを使う。まずは一枚目の矢羽を幅広のクリップで挟み、貼りしろに接着材をつけ、矢柄の後端部に慎重に張り付けた。


 軸を三分の一ずつ回転させて、残りの二枚の矢羽も取り付ける。このとき、矢が真直ぐ飛ぶように羽根の裏表が交互に表れるようにしなければならない。羽根の丸まっている向きを揃えることで、矢が飛んだ時、空気抵抗を受けて一定方向に旋回することになるのだ。あとは所要の箇所に補強のための糸を巻いてできあがりだ。


 われながら、なかなかいいものができたと思う。


「アカリ、はい、どうぞ。これ使って!」


 おれは新しく作った矢を一本アカリにプレゼントした。矢羽やばねは、柿の実のような鮮やかで濃い橙色をしている。たしか、アカリはこの羽根の持ち主のことをカキイロドリとかいっていたな。


「あ、ありがとう」


 カグヤちゃんは、その綺麗な矢羽を見ている。なにやら気になっているようだ。


「お姉ちゃん、それ……食べたの?」

「いえ、探したけど、見つからなかったのよ」


 カグヤちゃんがジーッと姉のことを見つめている。


 そこへ騒々しい人物が顔を出した。森から帰ってきたらしかった。最近、サギリはこの作業場をよく覗きに来る。


「シノ君、こんにちは。今日は何してるの?」


 カグヤちゃんに劣らず好奇心が旺盛らしい。


「いろいろな道具がそろったから、試しに矢を作ってみたんだよ」

「あっ! それ、カキイロドリの羽根ね。アカリ! 捕まえたの?」

「ちがうわ。落ちている羽根をシノがたまたま拾っただけよ」


 この村の娘たちはこの鳥のことをよく知っているらしかった。


「そういえば、アカリはその鳥を一生懸命探していたけど、そんな美味しいのか? なら、おれも食べてみたいな」

「シノ君は知らないんだ」

「何の話?」

「ははーん、アカリ、そういうこと――」


 アカリは狼狽うろたえて真っ赤になってしまった。


「シノ君、カキイロドリっていうのはね――」


「わーわー」


 アカリがサギリの言葉を遮り、サギリの腕を引っ張って表へ出ていってしまった。カグヤちゃんに聞いてみてもはぐらかされた。


 なんだか、よくわからなった。

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