第二話 気持ちの変化
さて、今日も元気にーーーー
ーーーー自殺をしよう。
今日で実に第13回目の自殺だ。今日は首つりに挑戦する。首つりなら、さすがにあいつも止められないだろう。ふっふっふっ…
笑いながらロープを握り、イスにのる俺…「皐月 刃」。
部屋の中は、ぼろぼろなベッド…だけしかない。殺風景すぎる部屋。ここは紛れもなく、刃の部屋だ。
「そういえば、この部屋で自殺するの、初めてだな…」
今までの自殺は、すべて外だった。
そう考えているうちに、準備は整った。あとはイスをけるだけだ。
「よし。…せーのっ!!!」
ゲシッ
イスは鈍い音をたてたが、止まったまま。
…まさかっ!
「やあやあ刃くん。またまた自殺か。…飽きない?」
やっぱりこいつだった…
「天川 春」。背中から生えた大きな羽。頭の上にある輪っか。人間離れした可愛さ。正真正銘、俺の自殺を止める天使だ。
ホッ…
…?今、俺がほっとしたように感じたが…気のせいか。
と、ふと、春が自分をーーーー正確には、自分の体を見ていることに気づき、つられて刃も、自分の体を見ると…
ああ、そうか。
納得した。そういえば、いつもは外だったし、制服だったからな。
刃の体は、ただでさえ薄い服が、ぼろぼろでところどころ破れている。そして、その体がーーーーーーーーーー
ーーーー無数のあざと傷で埋まっていた。
それは顔も例外ではなく、顔にもあざと傷が行き渡っている。
まあ、毎日いじめと虐待があれば、こうなるよな。
刃にとって、これは「日常」で、物心ついたときから、これが「普通」なのだ。
だからこそ、自分の体を見て、悲しそうな表情を浮かべている春をみて、胸が苦しくなった。
「…そんな顔、するなよ。俺にとっては、これが『普通』で、『日常』なんだ。俺なら大丈夫だから」
自分でも、変なことを言っているのは分かっている。そもそも、本当に「大丈夫」などと思っていたら、自殺などしないのだ。
でも、それでも、悲しそうな顔をする彼女に、声をかけずにはいられなかった。
「…だって…君はこんなに傷ついているのに、何も出来ない自分が悔しくて…」
ああ、そうか。こいつはこういうやつだった。周りのことを、まるで自分のことのように考えているやつだ。だから俺は…
…俺は?なんだというのだ?俺はこいつに会ってから、少しおかしい。
「…何もできていないわけないだろ」
気づいたらそんなことを言っていた。続きを言うか少し、迷う
「……お前は、あの時、初対面の俺に対して、涙を流してくれたじゃないか。」
迷った結果、言った。
彼女はしばらくポカン…としているが、すぐに
「ありがとう」
そう言って、笑った
なんだ?さっきから心臓がうるさい。顔も熱い。なぜだ?ただ、あいつが笑っただけだろ?
こいつが邪魔なはずなのに…
…まあ、気のせいか。
「なあ、お前は次も、俺の自殺を止めるんだろ?」
そう聞くと、春は、誰もが見とれてしまうほど可憐な顔で。満面の笑みで。
「止めるよ」
そう、言った。
……その時、刃の胸が高鳴ったことに、刃が少し、ほんの少し、安心したことに、その場の誰も…刃でさえ、気づく者はいなかった。
どもどもどもども!白神零鬼です!主人公はこの後どうなるのか?春はどうするのか?そんなことを考えながら読んでいただければ!ではでは、また次話で!