第一話 近況報告
自殺願望はありますか?
屋上に続く階段を上る。そのまま、屋上に出て、ギリギリ落ちないところで足を止め、深呼吸。
俺の名前は「皐月 刃」今から、自殺をする。
一歩、踏み出す。足は宙を泳ぎ、体は空に浮いた。そして、そのままーーーー
ーーーー俺は、何かに、屋上まで引き戻される。
まただ…また、あいつが…
今ので実に12回目の自殺だ。今までの12回の自殺を、俺はいつも止められてきた。
「こらこら、また自殺しようとしたの?ダメだよーまったく君は」
俺の目の前には、天使がいた。
…何言ってるのかわからない?奇遇だな、俺もわからない。
「天川 春」という名前の彼女が、俺の自殺を止めた張本人であり、天使だ。
俺だって信じたくない。「天使」なんて、非現実的すぎる。…でも、信じるしかないのだ。
彼女は、羽を広げて空を飛んでいた。
それにたった今、飛び降りていた俺を止めたのだ。そんなことは、空を飛べる彼女にしか出来ない。
彼女曰く、「天使なんだから空くらい飛ぶよ!」だそうだ。
それに、もっと信じられないのが、彼女が俺の自殺を止める理由だ。そうだな、実際に聞かせてやろう。
「え?私が君の自殺を止める理由?」
「ああ。教えてくれ。」
「もう、前にも言ったでしょ?思い出してよ」
しょうがない。とりあえず、俺の回想を見てくれ。
ーーーー2週間前ーーーー
俺は、屋上に向かっていた。第1回目の自殺をするために。
「やっと、この世界から消えられる。」
自分勝手な母親。暴力ばかりの父親。いじめてくるクラスメイト達。見て見ぬふりの先生。
俺を受け入れないこの世界からお別れだ。
神が平等なんて嘘だ。
人間は平等なんて嘘だ。
もう、いいや。もう疲れた。
俺は足を踏み出したーーーその瞬間。
「死んじゃダメーー!!!!」
羽が生えた少女に止められた。
「何で止めるんだ。邪魔するな。」
「始めまして!私は天川 春!君を死なせないために天界から来た天使です!」
……は?
「あ、まだ違うから敬語じゃなくていいのか。」
「待って待って待って待って」
「?なに?」
彼女は首をかしげる。かわいい…じゃなくて!
…人間離れした可愛さ、背中から生えた羽、頭の上にある輪っか。
「いや、え?天使?まだ違う?俺を死なせないために来た?どういうこと?」
「あ、そうだ、説明忘れてた。」
おい。まあ、かわいいからいいか…っておい俺!
「まず、君は今まで、常人にはありえないレベルの不幸を背負ってきたのですが…」
不幸?心当たりがありすぎる。
「まず、それが間違いだったんです。」
…は?
「あなたは、今まで、悪魔の生まれ変わりだと神様に思われていたんです。だから、膨大な不幸を背負って、いや、『背負わされて』きました。しかし、つい先日、それが間違いで、君が本当は『神様の子供』…つまり、『次期神様』だということが判明したため、君を死なせないために、天使の中ではトップの実力を持つ私が派遣されてきたのです!」
…それは、つまり。
「害悪だと思われて、勝手にそっちが勘違いして俺を不幸にしておいて、やっぱり勘違いでした、本当は大切な人だったから死なせない?何の謝罪もなしで…ははは…」
ああ、ダメだ。抑えられない。
「っざけんじゃねーよ、バカ野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
どこまで俺をなめれば気がすむんだお前らは!!!!!!!!!!!!!!」
「さんざん俺を不幸にしてきたくせに、やっぱり勘違いでした死なないで?
なめんじゃねぇぞクソ野郎どもが!!!!!!!!!!!!!!
そんなんで俺がはい分かりましたって従うとでも思ったか!!!バカにしやがって、お前らのいうことなんて知ったことか!!!!!!」
感情が、溢れ出す
「絶ッッッッ対に死んでやる!!!未来なんて、世界なんてどうでもいい!!!!お前らを困らせて、最っ高の気持ちで死んでやる!!!!!!!!
これは復讐だ!!!絶望しながら俺の自殺を眺めてろ!!!!!!」
止まらない
「お前らなんかっーーーーーーーーーー⁉︎」
俺の言葉は、遮られた。
ーーーー俺を抱きしめた、彼女によって。
「ごめんね…苦しかったよね…辛かったよね…もう、いいよ。もう、苦しまなくていいよ」
彼女は、泣いていた。泣きながら、俺を抱きしめていた。
そのまま、優しく俺の頭を撫でる。
「でも、死んじゃダメだよ。苦しいまま死んじゃ、ダメだよ。」
何なんだ?こいつは
「もう、大丈夫だよ」
目が、熱い
俺は、涙を流していた。
なぜだ?ここ数年、泣いたことなど、なかったのに。
「でも、ごめん。君の不幸は、まだ消えないんだ。人の不幸や幸福は、その人が生まれた時に全部決めちゃうから、変えるのはかなり難しいんだ。だから、13歳の君が、18歳になって、神様になるまで、何も変わらない…」
そう、彼女は言った。
しかし、今回はなぜか、怒りはなかった
「ごめんね…ごめんね…」
彼女が、俺の不幸を悲しみ、涙を流して謝り続けているからだろうか。
「君が、そんなに不幸だなんて知らなかった…聞いてないよぉ、神様ぁ…」
…あれ?
「お前、俺がどんな環境で生きてきたか知っているのか?」
「ごめん…さっき君の過去を覗いたから…」
なるほど、だからさっきから泣いているのか。
「お前は、いいやつなんだな。俺は、お前だけは、信用してみるよ」
俺は、生きる気なんてない。でも、彼女はなぜか、信用できる。
「…だから、取り引きをしないか?18歳…今から5年後、俺は神とやらになるんだろ?俺は生きる気はない。だから、条件をだす。
一、5年の間、俺は自由に自殺できる。
二、お前は、俺の自殺を止めることができる。
三、5年間、俺が死ねなかったら、俺はおとなしく神になる。
四、俺が5年の間に自殺することができたら、その時はお前らが引き下がる。
この条件なら、俺は神になってやる。…俺が生きてたらな。どうだ?のるか?」
俺はようやく泣き止み、俺を離した彼女に聞く
「…いいの?」
「いいもなにも、俺が聞いているんだが。」
彼女が上目使いで聞いてくる。かわいい。
「わかった!その条件でいいよ!」
良かった、のってくれた。あとは、いつか絶対に目を盗んで自殺できるだろう。
「じゃあ、それで」
ーーーー現在ーーーー
というのが俺とあいつの出会いだ。
…正直、俺はなめていた。
目を盗んで自殺など、できるものならやっている。彼女曰く、「天使トップの実力をなめすぎだよ!」だそうだ。
今日もまた、自殺は出来なかった。…もうそろそろ、死にたいものだ。
「なあ、もうそろそろ、死んでいいか?」
「ダメだよ。」
彼女はそう、言い放った。
僕は、自殺願望がありますよ。皆さんはどうでしょう?
どうも、白神 零鬼です!この作品は二作目で、「俺のボッチ生活のその先は…」という作品を連載中です!
この作品は、自殺願望がある作者が、「こんなだったらいいのに…」という妄想を書いたものです。楽しんでいただけていたら、幸いすぎます!では、別作品か次話で、またお会いしましょう!ではまた!