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epilogue
Epilogue
生まれたばかりの娘を抱いた彼女は、とてもしあわせそうだ。日当たりのよい窓際に椅子を寄せ、夫の帰りを待ちわびている。
彼女の足元で、幼い息子が遊んでいる。能力保持者の男児を得た時点で、彼女は『家』から解放された。そして、もうひとり、彼女は子供を得た。
ドアが開く音がする。
「ただいま」
帰宅の声に、腕の中の娘が嬉しそうな声をあげ、息子はとっくに父に向って走り出していた。彼女は立ち上がり、夫を迎える。
「ただいま、奈津紀」
彼の両腕の中、抱え上げられた息子は嬉しそうに笑っていた。彼は将来、血と能力を背負うだろう子供たちを大切に育てようと思う。大切なことをすべて教えられることを祈る。そして、少しだけの不安、彼女の腕の中の娘を見つめた。
けれど、そぅ――、大丈夫。
彼女がそばにいる。末の姫、能力の保持さえその手中にする彼女がいるから。
「ただいま」
もう一度、彼は言う。彼女の微笑みを見るために、彼は彼女に伝える。
「おかえりなさい」
両腕に娘を抱いた彼女、まるで聖母のように微笑み返した。
Fin
ありがとうございました。