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prologue
連載形式をとりましたが、短いです。
4章+αで終わる予定です。
どうぞよろしくお願いいたします。
Prologue
白いヴェールを纏ったままの娘が一人、窓際の椅子に座り、先程永遠の愛を誓った相手を待っている。静かにドアを開き、部屋に足を踏み入れた青年は『おや?』という顔をする。青年は微笑みをうかべて、娘にと近づいていった。
「――」
黙ったまま、娘の顔をおおったままのヴェールを持ち上げる。
娘の唇がやわらかく微笑みをつくりだそうとするのを額への口づけでとめた。
「ムリはもう必要ない」
他人の視線は、もうないから。
「ムリじゃないわ」娘は立ち上がり、その背でヴェールが揺れる。「これ、素敵。気に入ったわ」
「約束は……」
今度は娘が、その両腕をのばして青年の言葉をとめた。
「ありがとう。素敵なヴェール」
青年は娘をすなおで美しいと思うし、娘は青年からの贈り物をいたく気に入っていた。
「ありがとう」
娘の再度のお礼の言葉に、青年は娘をその両腕の中へと抱え込む。そうして、言葉を必要としない時間が訪れた。