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帰らせたがりのヒロインから異世界生活を守り切る  作者: すかいふぁーむ
間話

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温泉②

R15に変更しました

 シャノンさんの案内に従って少し進むと、確かに地面から湯気が出るような場所が見えてきた。昔行った温泉街を思い出す。もっとも、今いるのは街ではなく、キャンプ地のようなワイルド感溢れる場所だったが。


「温度も成分も何もわからんけど……」

「大丈夫だよ。私、治癒魔法の応用で身体に害があるかどうかは判断できるから」

「そんな便利な能力あったのか……」


 ここにきて都合よく色々な知識が得られる……。いや、新世界は平和だしある程度街の形も整いつつあったので、こういった能力をわざわざ生かす機会もなかったのだろう。

 新世界ではミュリが治癒魔法を使うシーンもほとんどなかったくらいだし、ある意味この生活は彼女たちのことを知れるいい機会になりそうだった。


「ソラ、わかっていると思うけど、浴槽は2つよ?」

「なんで?」

「あなた、私たちと一緒に入るの?」

「正直に言うと入りたい!」


 正直に言っても無理なものは無理だった。

 当然却下され、少し距離を置いて2つの浴槽を用意することになった。真ん中にはシャノンさん直々に高い高い壁まで用意されてしまう。


「ソラ様でしたらこの程度の壁、意味はないかもしれませんが」

「そりゃ壊そうと思えば壊せるけど、しないよ!」

「私は別に一緒に入ってもいいんだけどね?」


 ミュリはそんなことを言っていたが2人に連れ去られ、俺の混浴の夢は絶たれてしまった。

 まあ、最初からそんなに期待してたわけじゃないけど。

 


‐‐‐



「で、ミュリのあのアピールは、どこまで本気なの?」

「え?突然だなあ」

「こんな機会めったにないでしょう?この旅の行程中も、ソラはずっと一緒にいるわけだし」

「確かに……それを言うならロベリア様はどうなの?何となく最近ソラに対する態度も変わってきてるし」


 女子だけの裸の付き合い。盛り上がるネタと言えばやはり恋バナだった。


「んー、実際のところ、私も良くわからないんだよねえ」

「よくわからない?」

「もちろん、ソラが乗ってくれれば嬉しいんだけどね?二人に比べると微妙だけど、私も一応生まれも悪くはないし、異能持ちとして注目されていたから、相手には困らない人生なのよね」

「まあ、ミュリ様でしたらそうでしょうね」

「困らないからソラが相手にしてくれなくてもいいってこと?」

「そうじゃないんだけどさ、なんと言うか、ソラに結婚しようって言ったのは半分はぱっと見て惹かれたっていうのもあるんだけど」

「一目惚れじゃない」

「そうはっきりいわれると恥ずかしいなあ……」


 ミュリは赤くなった顔を「のぼせてきたかな?」と言ってごまかす。

 

「で、ソラのなにが不満なの?」

「いやいや、ソラに不満とかじゃないくてさ。この相手なら楽しいかも? というか、もっと傲慢な言い方をするなら、この相手なら釣り合うかな? とか思って、ノリだけで言ったところがあるからさあ」


 ソラにとって最初の見せ場となったあの遠征時を考えれば、確かにミュリにとってはポッと出の変わった魔法使い、という印象になるのも仕方ない。今となっては釣り合いを考えれば、外部からの声はどうしてもソラに重きが置かれるような状態になっているであろうが。


「なるほどねえ。でも、のんびりしてるとシャノンが取っちゃうわよ?」

「ええ?!」


 突然話を振られたシャノンが飛びあがる。


「ほら、このおっぱいで誘惑されたら、ソラもその気になっちゃうと思わない?」

「それは……確かに」

「まじまじと見ないでください!」


 顔を真っ赤にして大きな胸を押さえつけて隠そうとするが、その全体像は包み切れず、かえって卑猥にその形を歪ませることになっている。


「そもそもお二人だって小さいというわけではないでしょう?!」

「まあ、普通くらいはあるのかしら?」


 恥ずかしがる様子もなくロベリアが自分の胸を手で持ち上げて見せる。


「なんで美人はそういうとこまできれいなのかなあ……」


 納得のいかない表情でミュリが自分の胸とロベリアを見比べる。

 ミュリのスタイルも、多くの女性が羨むスレンダーさと、ほどよいふくらみを持つ非常に女性的な魅力に富んだものではある。抱きつかれたソラがどれだけ様々な感情を押さえつけることになっているのかという自覚は一切ないようだった。もっとも、比較対象がこれしかいなければ自信を失うのも仕方ないかもしれない。


「さて、シャノンはなんだかんだソラといる時間は一番長いし、色々あってもおかしくないと思うんだけど?」

「ああ……。それも、ずっと隣で戦ってたんでしょう?私だったら惚れ直すようなシーンがたくさんあったんだろうなあ」


 言われてシャノンはソラとともに戦った記憶を掘り起こす。前回の遠征はそんな余裕はなかったものの、あらためて思い起こせばソラの活躍は確かに男としての魅力を存分に発揮していたように思えてくる。

 魔法ばかりが目立つが、いつの間にか振るえるようになっていた剣を生かす機会もなかったわけではない。魔法使いにとって近接戦闘は弱点になりがちであり、不意を突かれて魔物が接近してきた時には何度かかばうように守られた。もちろん、シャノンほどの魔法使いであれば多少接近を許したところで魔物に後れを取るようなことはないが、守られることが嬉しくないかと言われれば、決してそうではない。


「顔が赤くなってきたわよ?」

「なっ!こ、これは……のぼせただけです!」

「二人して同じような言い訳をして……恋する乙女は可愛いわね」

「そういうロベリア様はどうなの!」

「私としては、彼を帰すことが義務だと思っているし、そういう感情をはさんで彼を見ることはないから」

「それを言われると私もなあ……」

「私が帰すより先にしっかりした形でくっついたのなら、無理に帰したりはしないわよ」


 露骨に安心した表情を見せる二人を、ロベリアは満足そうに眺めていた。



‐‐‐



「一人で風呂っていうのも、暇すぎるよな……」


 早々に風呂を上がったものの、下手にあっちに近づくのは危険だと本能が告げている。

 シャノンさんがただ物理的に高い壁を用意しただけのはずがない。多分俺が近づいたり余計なことをすれば何かしら向こうに伝わったり、そもそも何かこちらを攻撃してくるような仕掛けがあっても不思議ではない。


「あの三人が裸って考えると……いややめよう。抑えきれなくなる」


 それでなくても元の世界なら街を歩けば必ず声をかけられるであろうレベルの高い三人に囲まれて旅を続けているというこの状況だけで、かなり危ない状況なのだ。

 いまだってミュリをあの二人が止めてくれなければ危なかっただろう……。


「気を紛らわせたいし、なんか新しい魔法でも考えるか」


 基本的な魔法やマジックは少しずつ覚えてきたが、大技はエクスプロージョンとテンペストの二つだけだ。

 せっかくだから火山のイメージで何か考えるか。


「それにしても、向こうは楽しそうだな」


 三人の笑い声をBGMに、孤独な魔法の修行が始まった。


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