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ランカーズエイジ  作者: 朝倉牧師
怒涛の文化祭編
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文化祭三日目 一話

かなり時間が開きましたがランカーズエイジの更新をさせていただきました

文化祭の三日目の話になりますが

楽しんで頂ければ幸いです



 十月九日、午前八時。



 まだ開場していないにも拘らず一般入場口には長蛇の列が出来上がり、その列は数百メートル程先で最後尾の看板を掲げている生徒の所まで続き、近くの自販機やコンビニでは飛ぶようにジュースが売れる反面、トイレの順番待ちの列も結構な長さになっている。


 入場券を持つ生徒の家族や事前に情報を入手してプラチナチケットと化したそれを手にしていた一部マスコミを除き、この日になって何の準備も無く訪れた一般人の参加はほぼ絶望的で、受付を担当している文化祭実行委員や生徒会の生徒に詰め寄ったりはしていたが、防衛軍や守備隊から派遣された対策部隊に厳重な注意を受けた上で渋々その場を後にしていた。


 入場券にはシリアルだけでなく埋め込まれたICチップに氏名などが購入時に登録されている為、誰かにそれを売って貰って入場する事は不可能なのだが、それを知らない一部のマスコミや様々な大手企業から派遣されてきた者は最後の最後まで食い下がり何とか入場できないかと画策している。



 環状石(ゲート)崇拝教の一件が防衛軍の兵士や守備隊の隊員に伝えられていた為、なんとかチケットを入手しようと校門の周辺であがいているそういった不審者に一部殺気を放つ者もいたが、どうにかして内部の写真等を入手しないと帰る事の出来ない立場の者がいる事も一応は理解していた。




 ◇◇◇




 午前九時。



 文化祭三日目の開催とほぼ同時に竹中(たけなか)凰樹(おうき)を誘い、空き教室にのある区画の奥に存在する異様な教室の前で立ち止まった。


 周りに生徒の姿は殆ど無い。



「えっと、予約してた竹中です。これが予約チケット」


「……正規のチケットで間違いないな。一応中で()()()()()こっちは干渉しないし、後片付けも任せて欲しい」


「ありがとう。あきら、はいろ♪」


「ん……。ああ」



 窓という窓は外から板でふさがれておりどう考えても怪しさ満載ではあったが、約束した手前凰樹はその教室の中へ足を踏み入れた。


 教室の中はカラオケ、小型のテレビとDVDや様々な漫画が並べられた本棚、電動のあんま椅子、ベットなどが並べられており奥の一角には移動式のシャワーセットなどまで持ち込まれている。



「……何を目的とする部屋だ?」


「えっとね、ここは時間単位で借りて休んだりする部屋だよ。ちょっと部屋代が高いからあまり利用する生徒はいないと思うけど」



 部屋代は一時間脅威の五千チケット。


 竹中はその部屋を二時間キッチリ借りていた為、入り口で一万チケット分を支払っている。 



「生徒会には、有料の休憩スペースって事で申請したみたい。文化祭だからって騒いだりするのが好きな生徒ばかりじゃないでしょ? そういった人の為の避難場所って事」


「漫画もあるし、暇ならそこで寝てても良いって事か。寝るだけなら保健室を利用すればいいだろうに」


「ん~、あそこだと出来ない事も多いから……。しちゃう人はするんだろうけど」



 そう言って竹中はベットに腰を掛けて、上着のボタンを少し震える手でゆっくりと外し始めた。


 凰樹も朴念仁では無いので会話の流れである程度は予想していたが、竹中のその行動で完全に何をするつもりなのか察した。


 そりゃ保健室でも出来なくはないが、流石に大問題だろう。



「……そういう事か。確かに二時間付き合うとは言ったが、()()は文化祭の出し物じゃないだろう」


「少し卑怯だって事は分かってるよ。でもわたしはあきらは約束を守るから、こうすれば断らないって事も分かってる」



 竹中はそう言いながら上着を脱ぎ捨てて、スカートのホックに手を伸ばした。



「一応理解しているが、その前に少し話しておきたい事があるがいいか」


「……良いけど。わたしの気持ちはかわらないよ?」


「そこも理解しているつもりだが、それでもこの話をせずにそういった行為をする事はフェアじゃないからな」



 そう言って凰樹は近くにあった椅子に腰かけ、少し考えた後で口を開いた。



「俺たち男性AGEの多く。特に十歳くらいからAGE登録してある程度戦果を挙げている者は殆どそうなんだが……、大体部隊にいる年上の女性に手を出されている」


「……え?」


「竹中は俺より数年前に親父さんをGEに石に変えられているし、AGE活動を始めた頃にはそんな余裕はなかっただろうが、少し幼いが将来有望な男が手付かずで目の前にいるんだ。ちょっとキープしておこうかなと考える女性が多いのも当然でな」



 事実、十代からAGE活動をしている男性の殆ど……、九割以上は年上の女性隊員に食われているという現実がある。


 男性が少なくなっている分、青田買いでは無いが優秀で勇敢な男を飼いならそうと考える女性AGEは多く、そこで変な貞操観念や常識を持ち出すと守備隊にいる桐井(きりい)眞子(まこ)の様にいつまでも相手が見つからないという事態にもなりかねない。


 もちろん十歳になったばかりの少年を無理やり襲う女性AGEはごくまれだが、幼い頃から囲い込もうとする傾向は否定できないし、それはこの時代の状況にも問題がある。


 一時期の愚策で男性が大量にGEに敗れて石化した事も大きいが、ただでさえライバルが多く出会いの機会も少ないのだ。


 目の前に手付かずで将来有望な男が無防備に転がっていれば当然といえば当然の結果だろう。



 なお、現在はGEの侵攻で極端に現存数が落ちた男性と超がつく程に加速する少子化抑制対策として、出産が可能な年齢に達した女性から男性へのアプローチに制限は無くなっている。


 女性が十五歳に達していれば相手の男性が何歳であろうとも、法律上では性的行為に制限などが存在しない。


 これは出生率が極限まで落ちた現状では致し方ない事で、人口の安定と国土の奪還がある程度進むまでの一時的な措置といわれているが、おそらくこの先数十年は撤回される事は無いだろう。




「当時の俺は今の様に強力なシールドも持っていなければ身よりも無く、精神的にも少し余裕の無かった状況で、食事を奢ってくれて寝床まで用意してくれる女性に無警戒なままでついていく事も多かった」



 故郷から逃げた直後の凰樹には当然身寄りなど無く、当初は一時的な避難所に装備などを持ち込んでAGE活動を続けていたが、避難所生活で困ったのはあまりにも少ない配給される食糧と、訳の分からなかった各種手続きなどが十歳の凰樹には手に余る事だった。


 それでも中型(ミドルタイプ)GEや拠点晶(ベース)を破壊して入手したポイントが大量にある為に何とか生活する事は出来たが、この時期は一部の装備以外は自腹で揃えていた凰樹は高価な生命力(ゲージ)回復剤や弾代などを優先し、食糧に回すポイントはギリギリまで削っている。



 当時は凰樹だけでなく食べ盛りのAGE隊員の多くがその食欲を満足させる為にポイントで可能な限りでの食糧の購入をしたが、当然当時は割と高額だった食料品にばかりポイントを使う訳にもいかず空腹を紛らわせるために廃棄地区に生えている野生化した果物にまで手を出す始末だった。


 今は割と食糧事情が良くなっているが、それは対GE民間防衛組織事務所所長である影於幾(かげおき)之滋(ゆきしげ)が方々に手を回して十分過ぎる量の食糧を確保しているからに過ぎない。


 今後は食糧増産計画の為にある程度は楽になると考えられているが、当時にそんな余裕などある筈も無かった。



「そのうち、家について行って寝ている時に急に柔らかい何かが覆い被さってきた後、ほぼ相手側からの一方的だったがそういった行為に及んだ事がある。その後、俺がGE退治に明け暮れていると『私じゃだめね』みたいな事を言われてそれっきりになったが、あの時も俺の行動は幾分常識から外れていたしな」



 中型(ミドルタイプ)GEと接近戦を繰り返し、ボロボロになるまで戦い高価な生命力(ゲージ)回復剤で無理矢理生命力(ゲージ)を回復させる。


 そんな生活を続ける凰樹の姿は多くの女性AGEにとっても異質だっただろう。


 狂気に憑りつかれたような凰樹の行動についていけなくなり、あまりにも凄まじい凰樹の戦闘能力を持て余して部隊を離れる隊員や距離を置く隊員も多かった。




 しかし、その話を聞いた竹中の反応は凰樹が思っていた反応とは違っていた。



「あきらは男性だから別に言わなきと分かんないのに、どうしてそんな事言うの?」


「その辺りは色々あるだろ? 初めての相手はやっぱり初めてがいいって人もいるだろうし、行為に及んだ後で裏切られたとか言われても困る。それに……」



 その先の言葉を続けるか一瞬だけ悩んだが、意を決して続ける事にした。




「もう幾つか話しておかなきゃならない事がある。おそらく今の俺は人とかなり違う。普通の人間はマッハで動けないし、どれだけ努力を積んでも俺が使っている技の殆どを実際に行う事は不可能だろう」


「……それは今更って気もするけど」


「今更でもだ。俺はその秘密……というか俺に何をしてきたのか母さんに聞かない限り、安心して誰かと身体を重ねようとは思わないんだ。この身がもしも人外な何かだとして、それが一体何なのか知るまではな」



 身に纏う膨大な(ヴリル)の総量もそうだが、(ヴリル)を使った様々な技や力はとっくに人の領域を超えている。


 その気になれば亜光速で動ける人間など居る筈も無く、その速度から繰り出される斬撃で斬れぬモノなど今は存在しなかった。




「それに、これは俺も最近知ったんだが、どうやら俺に親同士が決めた婚約者(フィアンセ)がいるらしい」


婚約者(フィアンセ)?」


「ああ、隣の永遠見台付属中学とわみだいふぞくちゅうがくに通う椎奈(しいな)(つむぎ)って子だ。以前助けた事もあるし、少し前のBBQの時もここに来てただろう?」



 そう言いうと竹中は首をかしげていた。


 意外にランカーズに助けられた人は多いし、あのBBQの時も多くのゲストが参加した為に覚えていろという方が無理だ。



「あきら、ロリコン?」


「別に年齢にこだわりはないが、ロリコン扱いは酷くはないか?」


「こんな状況でも手を出してこないから……、婚約者(フィアンセ)とかいても普通据え膳は食べるでしょ?」



 少し身体が小柄とはいえ美人で十分に魅力的なスタイルの竹中を前に理性を押さえ続ける凰樹の精神力は相当な物で、普通の男であればとっくの昔に竹中に襲いかかっている事だろう。


 凰樹も戦闘特化が進んでいても中身は普通の高校生。


 理性のタガがハズレそうになった事は一度や二度ではない。




婚約者(フィアンセ)関連の事も含めて母さんに色々言わんとどんな面倒事に巻き込まれるか分からないからな。いい加減親父が諦めてこっちに戻ってきてくれれば話が早いんだけど」


「お父さんって例の作戦で行方不明って……」



 世間一般ではそうなっている。


 しかし、凰樹はすでに完全な形での正解を掴んでいた。



「親父があの作戦で行方不明になった兵士の何割かを率いて北海道に身を隠しているのは確実だ。初めは親父だけかと思ったけど、流石に親父ひとりであれだけのエリアの解放は無理だしな」



 如何に凰樹の父親が強いとはいえ、たった一人で北海道の広大な農地奪還を成功させるとは思えない。


 凰樹と違いまだ完全に人の域を出ていない戦闘能力だが、かなり強力な未来予知能力を有し凰樹に比べれば若干劣るシールドを展開できるためにそう簡単にGE相手に後れを取る事など無かった。


 おそらく、来たる未来の為に脱出可能な部下などを率いて戦力を温存したのだろう。



「でも、家にはあきらやお母さんがいるのにそんな事するかな?」


「多分、全ての差し金は母さんだと思ってる。流石に軍人の親父が自分から任務放棄するとかありえない」


「あきらのお母さんって、そこまでする人なの?」


「三歳の俺に特殊トイガンと特殊ナイフ持たせてGEと戦わせるような親だぞ? 多分それ以前にも色々してると思うし」



 当時最高レベルの戦闘能力を持つ父親が英才教育を施したとはいえ、流石に三歳児にGEとの戦闘を行わせるのは児童虐待どころの話ではない。


 輝がそれに応えて僅か四歳で中型(ミドルタイプ)GEを倒せるまでに成長しているがその事自体が奇跡だ。


 普通の子供であれば一戦目か二戦目で石像に変わり果てていただろう。



「それを確かめたいの?」


「ああ、母さんや親父が物心つく前の俺に何をしたのか。そして婚約者(フィアンセ)の件と、親父関係の話。それが済んだ後で初めて俺は誰かと共にあゆんでいけるんだと思う。返事を保留してる事自体が勇気を振り絞って告白して来たみんなに失礼な事だとは重々承知している。それでも、そのケジメはキッチリつけておきたいんだ」



 その答えが実はもう人では無く別の存在でしたという事であっても、その事を話して受け入れて貰えればその人と歩んでいこうと考えている。



「……わかった。そこまで言われたら、私もその時まで我慢する。でも……」



 竹中はそう言って凰樹に抱き着き、ゆっくりと唇を重ねる。


 数秒経ってもシールドで弾き飛ばされる事も無く、至福の時間を過ごした竹中は自ら唇を放した。




キス(これ)位は良いよね?」


「……すまないな」



 凰樹としても竹中の想いを知りながら返事を保留し続ける事に負い目を感じている。


 だから今回は自らが制御して一切シールドを張らず、抱き着いてくるくらいは考えてキスされるとは思ってもいなかったのだが、竹中の好きなようにさせてやろうと考えていた。



 と、その時校内を見回っていた瀬野(せの)から連絡が入った。


 メールでは無く、会話なのは珍しい事態だ。



「同志凰樹よ。環状石(ゲート)崇拝教と思われる人物を確認した。体育館の死角に誘い込むので処理の手伝いを頼む」


「了解した。すまないな竹中。この埋め合わせは後日必ずする」



 そう言いながら凰樹はその教室から飛び出し、近くの窓を開けてそこから校庭へと飛びだした。


 緊急事態なのでそうしたが、他の生徒が同じ事をした場合無事では済まないので、いかに凰樹でも後で生徒会から警告が来る事は間違いない。





「行っちゃったか……。でも、これなら私が勝てるかな?」



 この時、竹中は凰樹が既に何人かに恋人候補を絞っている事にうすうす気が付いていた。


 そして最大のライバルが誰であるかも気が付いている。




「あきらは私が貰っちゃうんだから♪」




 最大のライバルを頭に思い浮かべ、思わずそんな言葉を口から発していた。







読んでいただいてありがとうございます

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