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ランカーズエイジ  作者: 朝倉牧師
波乱の新学期編
75/98

W・T・Fの脅威

新しいW・T・F戦になります。

楽しんで頂ければ幸いです。


 八月四日、午前九時。



 連絡通り防衛軍の特殊車両数台が凰樹(おうき)(あきら)を初めとするランカーズのメンバーを迎えにきた。


 ランカーズ隊員の護衛も兼ねているらしく、保有数の少ない対人用の装輪戦車まで持ち出している事から、防衛軍の本気度が窺える。


 彼らの狙いはヴァンデルング()トーア()ファイント()に対する凰樹やランカーズのメンバーの有効性を確認する為で、特に凰樹の能力には注視していた。



「久しぶりといってもひと月ぶりくらいだがな。あの時は助かった」


「あなたは第三特殊機動小隊の……お久しぶりです。ご活躍は聞いてます」



 第三特殊機動小隊の隊長の小柳(こやなぎ)長滋(ながまさ)


 ランカーズの凰樹とも縁があり、以前首都で発生したW・T・F関係で小柳は幾つか凰樹に借りもあったりする。


 あまり表立っていない為に周りにも気が付かれてはいないが、小柳はAGEでありながら防衛軍の正規兵以上に活躍する凰樹に対して、少し心の奥に()()()のような物を抱いていたりもしていた。



 隊員は三台の特殊車両に分かれて乗車したが凰樹だけは特別扱いらしく、第三特殊機動小隊の隊長である小柳を初めとする精鋭に守られての移動という事になった。


 留学生であり、AGE登録されているクリスティーナに対しての処遇は「見学は可能だが、車両内での活動しか認められない。モニターで様子をうかがう事は出来るが、車両では音声も一部制限させて貰う」という厳しい物だ。



◇◇◇



 凰樹と第三特殊機動小隊が車に乗り込んだが、凰樹の隣には隊長の小柳が陣取り、ちょっと苦笑して先程の挨拶の返事をしてきた。



「さっきの話だが、よしてくれよ。例の新装備の関係で効率が上がってるだけだ。そっちこそ凄いじゃないか」


「防衛軍にはかないませんよ。適材適所じゃありませんが、防衛軍という組織の力とAGE部隊じゃできる事に差があり過ぎです」



 今回は先導役として第三特殊機動小隊が駆り出され、事前に周りにある拠点晶(ベース)の破壊と石像に変えられた人々の回収を行っていた。


 また一緒にこの地を訪れている他の部隊が道路などの整備まで行っており、W・T・F討伐後に即座に救助活動を行える様に手を打ってもいる。



「一日に十五も環状石(ゲート)を破壊しておいて、まだ不満か?」


「壊すだけでいいなら特殊機動小隊ならどこでも可能でしょう。問題はその下準備や破壊した後ですし」



 救出する居住区域の規模にもよるが、事前に計画を知らせておいたにも拘らず救出後には即座に住居や食糧を用意できない自治体が過去には幾つも存在している。


 居住区域の経済状況や住宅事情の問題でもあるが、防衛軍はその度にテントなどで作り上げた仮設住宅等を用意し身体を休める様に尽力しているのだが、その活動自体が一般人にあまり知られる事は無かった。


 仮設の住居だけでは無く、防衛軍ではあまり多いとは言えない部隊の予算の中から購入した食糧等を運び込んで彼らに温かい食事を提供し、そして風呂などのサービスまで提供している。



「暑い夏、寒い冬、雨の降る梅雨時期も、猛暑の南国でも、雪の多い北国でも力の限りを尽くして人を助ける。冬には行動がとれなくて活動を少なくし、猛暑の日には活動を控えるAGEだとそうはいきませんから」


「それが俺達の仕事だからな。その為に予算を貰い活動計画を練っているんだ」


「でも、その後のケアまで面倒を見る所なんて他にありませんよ。暖かい食事だけじゃなく住む場所も提供し、風呂なんかのサービスまで行う。本当の意味ではAGEは人を助ける活動とはいえませんから」



 AGEの登録して活動している者でさえ、防衛軍が行っているこの手のサービスや真価ともいえる救助計画の内容を知らない者が多い。


 住居や食事を用意できないという事自体が居住区域の恥になるという事もあり、県やその居住区域のお偉方が扇動しての事ではあるが、住人からの苦情が多く寄せられるためにテレビなどの報道ではあまり語られる事は無いし、防衛軍もことさらその活動を喧伝したりもしない。


 彼らに言わせれば、知る者だけが知り得ればいい事で、感謝する人がいようといまいと防衛軍の行動にかわりはないという事だった。



「そこまで知っていてくれたか……。確か親父さんは防衛軍の大佐だったかな?」


「ええ、例の作戦で犠牲になった事にされていますが……」



 ()()父親がGEに敗れたという情報自体にも半信半疑だったが、この情報に確かな違和感を感じたのはこのひと月ほどだった。


 特殊機動小隊などの精鋭が集まり、首都圏奪還計画が実行された首都周辺。


 凰樹の活躍もあり、今では広大な奪還地区を持つ広島。


 理由は不明だが、何故か十年程前から度々駐留している防衛軍の少ない部隊だけで広大な農地などを奪還し続ける北海道。


 これといって要因無い北海道の状況だけがあきらかに異常であり、威力の少ない当時の武器から考えてもそんなに簡単に農地の奪還に成功する筈も無かった。


 AGEではない為にポイントやランクでその存在が明らかには出来ないが、かなりの力を持った人間が数名潜伏している可能性がたかい。




「父には()()にいろいろ聞いています。人を助けるという事がどういったモノなのか、何度も教えてくれましたので」



 いまでは北海道の何処かに身を隠しているんだろうなと思いつつも、一応死んでいるという前提で話す事にした。



「だからそこまで知っていたのか。そこまで俺達の事を理解してくれているのは嬉しいよ」


「GEからこの国を取り戻す為に必要なのはAGEだけでも防衛軍だけでもありませんよ。全ての人が力を合わせてGEを追い払い、荒廃した街を甦らせる。それが終った時が本当に戦いが終わった瞬間です」


「そこまでの道のりは遠く険しいが、お前の様な奴がいてくれれば俺達も心強い。共に、この国を取り戻そう」



 もう小柳の心に凰樹に対する()()()のような物は欠片も残っていない。


 目の前にいる少年は共に国を想い、そして本気でこの国をGEの手から取り戻そうとしている同志であり戦友であり仲間である。


 周りにいる第三特殊機動小隊の隊員を含めて、そう信じて疑う事はなかった。


◇◇◇


 出現予定場所は元新広島空港跡地近くを通る自動車道路沿いの小さな町工場跡地。


 レベル三の環状石(ゲート)が邪魔な為にその工場を引き払っていた為に工場の従業員などに被害は出ていないが、その周りでは割と多くの人が石像に変えられている。


 現在、環状石(ゲート)はほぼ灰色に変化しており、そろそろ環状石(ゲート)にひびが入ってそこからW・T・Fが姿を現す事は間違いなかった。



「情報通りですが、まだ出現するには至っておりません」


環状石(ゲート)のレベルが高いと出現まで時間がかかるのか? まあ、W・T・Fに関しては情報が少なすぎる為に後手後手に回る事が多いんだが」


「こうして新しい情報が入る事は良い事ですよ」


「輝さ~ん。あの環状石(ゲート)からおかしな波動が出ています。多分もうすぐ姿を現すんじゃないですか~」



 今回は後方で伊藤(いとう)が索敵任務に就いている為に凰樹は安心してW・T・Fに集中する事が出来ていた。


 護衛は防衛軍が引き受けてくれたために、残りの全隊員は廃工場を取り囲むように展開している。



 それぞれがM4A1改弐やPSG-1改弐などの最新装備を手にしており、弾倉(マガジン)に詰められているBB弾も一発五万円の最高純度の物を用意していた。


 万が一に備え、第三特殊機動小隊では新型特殊ランチャーまで用意されており、ここでW・T・Fを仕留める為の万全の用意がされている。



「問題は飛翔型W・T・Fが出てきた場合だな。流石に飛び去る前に倒すのは至難の業だ」


「特殊トイガンの弱点ですね。光弾化させれば射程距離は伸びますが、十分な威力が出るかどうか……」



 風にも雨にも弱い特殊BB弾の最大の問題点。


 それは実銃に比べて異常に短い射程距離だ。


 凰樹辺りが光弾化させても数百メートルが精々で、通常では数十メートル程しか有効射程が無い。


 肉薄してくる大型GEであればなんとかできるが、天高く飛翔するW・T・Fを撃ち落せるかといえば不安しかなかった。



「その時はまた何か策を考えるしかないだろう」


「とりあえず、出た直後に飛翔タイプなら全員で翼なんかを攻撃して破壊し、飛翔能力を奪います。それ以外の場合は状況次第で」



 防衛軍も万が一に備えて最新型の特殊ランチャーを百近く用意していたが、W・T・Fの再生能力を考えるとそれでは致命傷を与える事が難しい事を知っていた。



「来た!! レーダーに反応!! 蜘蛛型のリビングアーマーか?」


「そう見えまんな。ただでさえ硬いリビングアーマー型のW・T・Fって厄介でっせ」



 半分くらい崩壊した灰色に変色した環状石(ゲート)から銀色の鎧に包まれた太い蜘蛛の足が姿を現した。


 そして予想通り蜘蛛の足が四本見えた後、その胴体が姿を現したが、それはただの蜘蛛では無かった。



「半人半蜘蛛の化け物か」


「ギリシャ神話あたりに出てきたアラクネとか言うモンスターですね。F型とみて間違いないでしょう」



 蜘蛛の前頭部には美しい女性の上半身が生えており、その身体も堅硬な銀色の鎧で守られていた。


 全長は二十メートル近くあり、体長は足を広げれば五十メートル以上は優にあるだろう。


 以前リビングアーマー型の蜘蛛と戦った事のある凰樹達は、その高い防御力についても熟知している。



「レーダーだとあの一点だけ真っ赤だな」


「いえ、微妙に色合いが違います。おそらくそこが要石(コア・クリスタル)の場所で……、他にも二ヶ所ほど赤味が強い所が……」



 普通の人間が見れば一面真っ赤に見えるその画面で、伊藤は見事にその色合いの違いを見抜いていた。



「どちらにしろ要石(コア・クリスタル)を破壊するしかない。射程に入ったら足に一斉射撃、奴の機動力を奪うぞ」


「了解!!」



 射程ギリギリ……、アラクネ型W・T・Fが環状石(ゲート)から完全に姿を現す寸前、全員一斉に足に向かって掃射を開始した。


 最初の十秒程で二本の足が吹き飛び、このまま足を全て破壊できるかと考えたまさにその瞬間、環状石(ゲート)から完全に身体を出したアラクネ型W・T・Fは身体を大きく沈み込ませ、恐るべき跳躍力を見せて凰樹達のはるか後方まで一瞬のうちに移動した。



「なんて跳躍力だ!!」


「あっちにはクリスや第三特殊機動小隊がいるっス」



 至近距離に着地したアラクネ型W・T・Fに狙いをつけ、第三特殊機動小隊が一斉に新型の特殊ランチャーを放った。


 着弾と同時に三メートル程の光球を生みだし、今までとは比べ物にならない破壊力を見せたが、銀色の鎧に包まれた女性の上半身には傷ひとつ付いていなかった。


 僅かに胸や肩の鎧が破壊されたが僅か数秒で綺麗に修復され、まるで何事も無かったかのようにアラクネ型W・T・Fは真紅の瞳で自らに攻撃を行った愚か者の姿を見据えている。



「コイツはまずいな……」


「隊長!! 後ろには例の留学生が……」



 そう思った瞬間、装甲車の中から完全装備のクリスティーナが飛出し、アラクネ型W・T・Fに向かって特殊トイガンを構えた。



「ホーリーバインド!!」



 クリスティーナの放ったホーリーバインドが僅かに数秒だけアラクネ型W・T・Fの後ろ足二本を捕らえてそこに足止めし、その一瞬の隙をついて美しい女性の姿をするその顔に向けて銃弾を撃ち込んだ。


 しかし、数世代前のM4A1改ではまともな攻撃になる筈も無く、クリスティーナの攻撃では何のダメージを与える事も出来なかった。



「力不足ですか!! こんな化け物に……、きゃぁぁぁぁぁっ!!」


「なんだこの糸……」



 アラクネ型W・T・Fは一瞬空気を吸い込むような動作を見せた後で口から白い糸を大量に吐き出し、その糸に包まれたクリスティーナや第三特殊機動小隊の隊員は全ての装備を破壊され、一瞬のうちに石の彫刻へと姿を変えていた。


 クリスが乗っていた車も完全に破壊され、車があった場所には椅子に座っていた隊員がそのままの姿で石像に変わっている。



「クリスはんが!!」


「あの跳躍は厄介だな。また跳んだぞ!!」



 今度は銃弾を躱す様に斜め横に飛び、光弾と化した特殊BB弾を躱した後に高速で移動し、宮桜姫(みやざき)竹中(たけなか)の目の前に迫った。



「させるかよ!!」


「やらせないっス」



 何をしようとしているのを察した神坂(かみざか)霧養(むかい)(ヴリル)をチャージして一段上の攻撃力で銃弾を浴びせた為にアラクネ型W・T・Fは身体を神坂達の方へと向けた。



「ありがとう。たすか……っ、きゃぁぁぁぁぁっ!!」


「あそこからも糸を……、ああぁぁっ……」



 腹部後方にある出糸突起(しゅっしとっき)から放たれた糸に絡め取られ、その糸に全ての装備を破壊された宮桜姫と竹中はその場で灰色の石へと姿を変えた。


 糸は僅かな時間で自然消滅するタイプだったが、その射程範囲は驚異だ。



「動きは速いし、あの跳躍まである。厄介な相手だな」


「あのデカい図体でああまで動かれちゃあ、マトモに攻撃もできやしない」



 対象が大きい為に凰樹はあの技で倒すほうがいいかと思っていたが、こうまで動かれると技を放った瞬間にあの跳躍で躱される事だろう。


 いつものように接近戦で斬り倒そうにも、このままでは精々足しか斬り落す事は出来ず、胴体に致命的な攻撃を加える事など出来はしなかった。



「あんなのが街に放たれたら、本気で街が滅びるぞ」


「W・T・F一匹で国が滅ぶ訳でんな。どないしますか?」



 話してる間にも銃弾で攻撃は続けていたが、霧養の先読みの力でも完全にはアラクネ型W・T・Fの動きを予想しきれず、()()霧養が珍しい事に何発か無駄弾を放つ程だった。


 今まで戦ってきたW・T・Fと比べて防御力も攻撃力も数倍は上で、その上異様な移動力やスペシャルスキルまで有している。


 更に回復力も異様で、一度は凰樹の攻撃で上半身を完全に吹き飛ばされたにもかかわらず、僅か十秒程で何事も無かったかのように元の姿まで再生していた。



「正に化け物だな」


「輝さん。このままでは埒があきませんの。あの技は使えませんか?」


「今のままだと躱されるな。最大出力で撃てば何とかなるだろうが……」



 最大出力の神穿波(ラグナ・シュピラーレ)


 今の凰樹の力ならば、あのアラクネ型W・T・Fを吹き飛ばして余りある威力で放つことが可能だ。


 しかしそれは()()()()()()()()の話で、あれだけ素早い動きを見せて危険を感じれば躊躇なく跳躍するアラクネ型W・T・Fを捉えるのは至難の業だった。


 その上、最大出力で撃てば被害がどの位まで拡大するかわかったモノでは無い。



「クリスが無事なら一瞬でも……、そうか」


「なにか思いつきましたの?」


「ああ、角度的にはもう少し上に……、霧養、アイツを狙って跳ばす事が出来るか?」


「……、上に跳ばす事なら可能っス。ただ、龍耶(たっち)荒城(あらき)さん辺りの援護がいるっス」



 この状況を打破するには流石に凰樹の力だけでは無理だった。


 この場所が何も無いだだっ広い砂漠か何かのど真ん中であれば、凰樹はあのアラクネ型W・T・Fを一人で退治できたかもしれない。


 しかし、この状況で被害を最小限に留めようと思えば、それは不可能だった。



「一分後に仕掛けるっス。援護頼んだっスよ」


「まかせとき」


「準備完了ですわ」



 霧養はアラクネ型W・T・Fに向かって走り、アラクネ型W・T・Fの攻撃が来るより早く三体の分身を生み出してそれを足元へと向かわせ、その分身に反応したアラクネ型W・T・Fの下半身を狙って窪内(くぼうち)と荒城が一斉に足元に向かって銃弾を放ち、前足の一本を吹き飛ばした。


 霧養の先読み通りにアラクネ型W・T・Fは身体を沈めて跳躍体制に入り、そのまま霧養の後ろに向かって跳躍しようと試みた。


 しかし、アラクネ型W・T・Fの身体は僅か十メートル程跳躍した所で見えない壁のような物にぶつかり、そして次の瞬間、空中に浮かびあがった直径二十メートル程の何かに身体を抑え込まれ、そこから発生した無数の槍で身体を貫かれてその場に縫い付けられた。



「借り物で悪いが、ホーリーバインドだ。そしてこっちはオリジナルだが……」



 凰樹は即座にコピーして見せたホーリーバインドでアラクネ型W・T・Fを空中に固定し、(ヴリル)対応型特殊小太刀壱式穿空天斬(せんくうあまぎり)を鞘から引き抜いてその巨体に狙いを定め、距離と威力を計算して、出力を二割程度に絞ってその技を放った。



神穿波(ラグナ・シュピラーレ)!!」



 放たれた直径二十メートルを超える光の螺旋は空中に捉えていたアラクネ型W・T・Fの身体を完全に飲み込み、そして僅か数秒で堅硬な銀の鎧と無敵の再生力を誇るアラクネ型W・T・Fをこの世から消滅させた。


 螺旋が消えた後には空中に光の柱が出現し、それがまるで光り(かがや)く雪の様に辺り一面に降り注いだ。



「アレがあの時言ってたあの技っスか」


「恐ろしい威力でんな」


「威力があり過ぎて使いどころが難しいな。今回みたいなケースなら使えるが……」



 強敵であるアラクネ型W・T・Fを倒した凰樹達は流石に一気に緊張の糸が切れ、そしてある事を完全に忘れていた。



◇◇◇



「きゃぁぁぁぁっ!!」


「ふくっ!! 何か着る物を持って来て下さい!!」



 二ヶ所から聞こえた悲鳴を聞いた凰樹達はその方向を向いてそして凰樹だけが即座に別方向に顔を背けた。


 一糸(まと)わぬ姿のクリスティーナの大きな胸に釘付けになった神坂と霧養は鼻血を流しながらその光景を目に焼き付け、そしてその後、クリスティーナからでっかいモミジを頬に貰う事になったのだが、二人にとってはその程度で済んで良かったと密かに胸を撫で下ろしていた。



「今回は苦戦しました。やはりW・T・Fが出現する環状石(ゲート)のレベルで強さが各段に変わります」


「それでも見事に倒してみせたのは流石だ。まあ、被害も車両が一台と装備が幾つかで済んだしな」



 予備として用意していた服に着替えた小柳は被害状況の報告を受け、ここから撤収する為の車両などの手配を行っていた。


 手配した車両が届くまでの間は、車外のモニターで録画した戦闘記録などをみながら凰樹達と共にもし万が一同じ自体が起こった時の為の対策などを検討していた。



 そこに完全に頭に血を上らせたクリスティーナが近付いてきた。



「こちらの被害は大問題で~す!! 即座に視線を逸らせた輝はベリーグッドです!! それに引き替え蒼雲(そううん)敦志(あつし)!! 二人には後で弁明をた~っぷりと聞かせて貰いマース!!」


「お手柔らかに……」


「了解っス……」




 クリスティーナは即座に視線を逸らした凰樹には何も言わず、その紳士な対応に感心していたが、乙女の柔肌、しかも剥き出しの生乳を凝視していた二人に激怒し、二人の頬には平手打ちを一回ずつお見舞いしていた。


 完全に鼻の下を伸ばしていた二人はシールドを張る事も出来ず、真っ赤なモミジをしばらくの間、頬に飾っていた。



「ホントさいってい!!」


「あきらになら見られても良いのに……、私の裸、そんなに魅力ない?」 



 竹中は着替えた服の第二ボタンまでを外し、かなり大きな胸の上半分ほどを凰樹の目の前に(さら)していた。


 やや桃色に色付いた二つの柔らかそうな胸がそれを閉じ込めていた窮屈な服の間からとびだし、凰樹の手に包まれる瞬間を待ち望んでいるようだった。



()()()きょ()()()()!!」


「竹中さんはいつまで経っても懲りませんわね。そういった事は、二人でベッドに入るまで取っておくべきですの」


「……あきらの反応を確認できたから、今はこの位にしておくね♪ でも、私はいつでも本気だよ」



 美少女三人とたわむれる凰樹を見た小柳は、「青春だな……」と、とっくの昔に自分が失った全てがきらめいていた時代を思い出し、めんどくさそうに頭を掻いていた。





読んで頂きましてありがとうございます。

ブクマ&評価もありがとうございます。

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